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第71話「ユージの実力」


──何もない洞窟、牢屋。


「それじゃあ、さっさと牢屋を出るか!」


 俺は立ち上がり、辺りを物色し始める。何か脱出に使えそうな物は落ちてないかな……


「えっ、いいの?」


「んっ? なにが?」


「アタシといたらユージも不幸になるかもしれないよ?」


「ハハハッ! なに言ってんの! 俺の運を舐めるんじゃないよ。今までそんな『アンラッキー』くらいどうってことなかっただろ?」


 んっ? いや待てよ……

 リディアといると不幸になるなら、俺のこの災難続きはまさか……


「あれ? どうってこと、なかった、よな?

 あのー、ちなみに『アンラッキー』のステータス補正は……?」


「……スキルの説明には、運にマイナス4500ポイントの逆補正って書いてるけど……」


「あっぶねー! ギリギリじゃねぇか!

 ワイバーン試験で鳥倒してなかったら死んでたぞ!?」


「だからごめんねって言ったじゃない!」


「ふざけんな! 死んでたら『ごめんね』じゃあ済まなかったぞ!」


 いやいや、アンラッキー怖すぎだろ! 俺の運、9割削られてたんかい!

 マジで死ぬとこだった……


「……まぁ、リディアがいなかったらシロにも、モモにだって会えてなかったから。それに実際今こうして生きてるわけだし」


「ユージ……」


「だから! ほらもう、しんみりすんなって!

 リディアも脱出するの手伝えよな!」


「うん……うんっ!」


 俺たちは脱出のヒントになるような物を探し始めた。しかし、狭い牢屋の中。そう簡単には見つけられなかった。


「何も、ないわね……」


「あぁ。取り引きが終われば助かるって言ってたし、待つか?」


「用済みになった後に大人しく帰すと思う?

 あれは、逃げようって気を起こさせないための口実に決まってる」


「ヤバいじゃん!」


 俺は鉄格子をガシャガシャと揺らした。


「早く逃げなきゃ! このぉ……開けよぉ!」


「ちょ、ちょっとどうしたの急に!? そんなことしたって開くわけないじゃない!」


『ギャッ! ……キュゥゥ……』


「えっ?」


 何かを踏んづけた感触とともに、鳴き声が聞こえてきた。俺は、そっと足を上げて確認する。


「あっ」


「どうしたの?」


「ね、ねずみ踏んじゃった……」


 ピロン──


 えっ? 何やら聞き覚えのある音が脳内に響いた。いやいや……まさか。

 ス、ステータスオープン……


「……レベルアップ、しちゃった」


「はい? なんでこんな時に……」


 リディアはステータスを覗き込んできた。


「あっ、本当だ。ねずみ踏んづけてレベルアップって……」



 レベル6


 筋力 7

 敏捷 7

 耐久 7

 魔力 7

 器用 7

 運 7594


 運の数値がえらいことになってきたな……

 リディア補正がかかっても3000超えてるじゃん。


「というか、レベルアップ前は補正込みで500ちょっとしかなかったのか? それでアレなの?」


 俺はそう言うと、今までを振り返る。いやいや、あんだけ幸運だったのに500!? これからどうなるの?


「あのねぇ、運500でも十分えげつない数値なのよ?」


「これ、放っておいても脱出できるんじゃね?」


「いや、流石にそれはないでしょ」


「なんの話をしてるんだ?」


 賊が一人戻ってきた。その手にはリンゴが握られている。


「あれ? 取り引きは……?」


「今やってるよ! 俺はお前らの見張りだ。つまんねぇ仕事だよ……」


 賊はリンゴをかじりながら、少しイライラしている。


「あのー、俺ら何も食べてないんだけど、リンゴもうないの?」


「あぁん!? ほらよ、これでも食ってろ!」


 賊は怒りに任せて食べ終えたリンゴの芯を投げてきた。


「うわっ!?」


 ギリギリで避けると、芯は壁に当たり、跳ね返って天井へと向かった。


 天井に張られた縄に当たると、腐ってボロボロになっていたのか、プツンと切れて賊へ向かって垂れてきた。


「おっと」


 賊が避けると、縄は壁に当たりパシンと音を鳴らす。壁をチョロチョロと移動していた蜘蛛が驚いて賊の首元へと飛んでいった。


「うわっ! なんだ? 虫か!?」


 ──チクッ!


「あがっ!? ぐっ……うぐぅ……」


 賊は苦しそうに喉を押さえながら、こちらに助けを求めるように手を伸ばす。

 ゆっくりと近付いてきて、鉄格子の前で力尽き倒れた。


 カランッ……!


 賊のポケットから滑り出た鍵は、ゆっくりと回転しながら俺の足元で止まった。


 静寂の中、俺は鍵を拾い上げる。


「かっ、鍵、ゲットしちゃった……」


「……夢でも見たのかしら」


 ガチャリ──ギィィィッ……


「開いたな」


「ええ、開いたわね」


 俺たちは、それだけ言葉を交わすと牢を出る。


「じゃあ、行きましょうか……」


「いや、ちょっと待って」


 俺は深呼吸をする。



 いや、運ヤバすぎるぅぅぅぅぅっ!!

 レベル上がった途端にこれかよ! もうヤバすぎて先が思いやられるやつだよ!


 もはや立ってただけだよ! むしろ今まではリディア補正のおかげで現実的な幸運だったんじゃないの!? これがこの先も続いていくわけ!?


「ふー……さ、行こうか」


「は? えっ? なんなのよ……」




 次話へ続く

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