↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
70/86

第70話「はじめての冒険」


──何もない洞窟、牢屋。


 ポチャン──


 水滴の音と後頭部の痛みで目が覚める。

 イテテテ……あの野郎、思いっきり殴りやがって……うわ、少し血が出てるじゃん。


「なにここ? 牢屋?」


 起き上がるとそこは、洞窟内の窪みに鉄格子を取り付けただけのような牢屋だった。


「ごめんね、ユージ」


「うおっ!? なんだリディアいたのか……

 謝らなくていいよ。悪いのは攫ったやつらだろ?」


 リディアはただでさえ狭い牢屋の隅っこにちょこんと座っていた。


「クックック……! ようやくお目覚めかい?」


「……は!? なんでお前が!?」


 そこには、昼間捕まえた賊がいた。隣には、賊の仲間もいる。


「お前、捕まってたはずじゃ……?」


「俺をあれくらいで拘束できると思うなよ?」


「……依頼主は貴族ね?」


「さぁ? 何のことかな?」


 はい? 貴族が貴族を狙うの? 何のために?


「リディア、どういうこと?」


「ウチの……ハートクラン家の失墜を狙った貴族が向けた差し金よ」


 同業他社ってこと? こんなあからさまに狙うなんて異世界、怖ぇよ。

 いや、地球でも似たようなもんか。


「俺たちをどうするつもりだ?」


「どうするも何も、大人しくしとけば数日で解放してやるさ。そういう取り引きなんでね」


「やっぱり……許せない……!」


 リディアが立ち上がり、目を閉じ集中し始めると、足元に魔法陣が浮かび上がる。

 魔法陣から光が漏れ出し、髪がふわりと浮く。


「おいおい、杖もなしに魔法を撃つのか?

 クックック、暴発して全員死ぬぞ?」


 えっ? そうなの? ヤバいじゃん! ただでさえ暴走魔法使いなのに!


「リディア! やめとけって!」


「ユージは黙ってて……! これは……アタシの問題よ……!」


 カチャリ──


「いいのか? お前の魔法より早く撃てるぞ?」


 賊が向けた銃口は、俺に向けられていた。

 リディアに集まっていた魔素は、静かに霧散していく。


「……分かったわよ」


 リディアは不貞腐れたようにその場に座り込んだ。


「分かればいいんだ。お嬢さん。取り引きが終わったら解放してやるって言っただろ?」


 そう言うと、賊は出ていった。



◆



──何もない洞窟、牢屋。


 賊が牢屋を出ていってから、一時間は経っただろうか。

 鉄格子を激しく揺らしてみてもビクともせず、脱出の糸口も掴めないまま時間だけが過ぎていった。


「ごめんね、ユージ」


「だからリディアが謝る必要ないって」


「そうじゃなくて……」


 リディアは自分の服をギュっと握りしめる。


「アタシ、まだユージに話してないことがある」


「7年前の話か? 別に、言いたくないんなら無理しなくていいぞ?」


「うん。でも、聞いてほしい……」


 なんだよ、改まって……


「アタシね? 家を出て、そのまま冒険者になったの」


「うん」


「それで、今まで7年間、一度も自分で依頼を成功させたことないの……」


「うん……えっ? 一度も?」


 いや、リディアは暴走こそするけど、めちゃくちゃ優秀な魔法使いじゃん。


「なんで? あんなに強いのに……」


「討伐に行っても、魔物に出会ったことないの。

 ふふふっ、笑っちゃうでしょ?」


 そう言って笑ったリディアの顔は、ほんの少し引きつっていた。


「薬草採取もしたことないって言ったけど、アレは嘘。採取に行っても薬草なんて一つも生えてない」


「えっ?」


「パーティにもいくつも参加した。でもね、アタシがいるといつも上手くいかないの」


「なんで……」


「冒険者になって一年もしないうちに、アタシはみんなから厄病神扱い……

 そりゃそうよね。アタシがいるだけで何もしてないのに罠で全滅しちゃうんだもん」


「ずっと……一人だった。でもね、そんなアタシにかまってくれるモノ好きな人もいたの。大人の女って感じだったなー」


「そうなんだ」


「うん、その人のおかげでなんとか食いつなぐことができたの。お姉ちゃんができたみたいで嬉しかったな……」


 リディアは懐かしむように目を細めた。


「でもね、ある日アタシに一緒に冒険に行こうって。アタシは嫌がったんだけど、無理矢理引っ張られて。ユージとアタシみたいだね……」


「それで、どうなったの?」


「街を出てすぐにドラゴンに攫われちゃった。

 次の日、他の冒険者が彼女の遺体を見つけたって……」


「そんな……」


「その瞬間、世界が全部モノクロに見えたの。

 あぁ、アタシは生きてたらダメなんだって……」


「そんなことない!」


「ホントはね……ユージと会った日、アタシは街を出て死ぬつもりだったの」


「え……」


「でもね、ユージのステータスを見て、もしかしたらって……」


「ごめんね。でも、本当に楽しかった。

 あぁ、アタシ今冒険してるんだーって。だって、ユージの運が全部跳ね返しちゃうんだもん」


「……うん」


「ユージも初めてだったかもしれないけど、アタシも、全部初めての冒険だった……」


「そうか……でも、いくら運が悪いって言ってもそこまで不幸が重なるのか?」


 リディアは袖で目元を拭いながら続けた。


「本当はね、これを言ったらユージが離れていくって思って、言えなかった……」


「えっ……」


「アタシの周りが不幸になるスキル……

 アタシのスキルは『アンラッキー』なの……」




 次話へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。