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第7話「最初の街、レグシア」


──ジャイアントボアの巣。だった森。


 俺の名は、ユージ。

 過労死でこの世を去った日本のサラリーマン。そして女神アルミシアに出会い様々な転生特典を受けてこの惑星フォーズに転生した。


 そして今、この惑星フォーズで出会った最初の男、ダイノスと火を囲んで初めての夜を迎えようとしている。


 パチパチパチと音を立て、火の前に用意したジャイアントボアの肉が、肉汁を滴らせながら焼けている。

 表面にはこんがりと焼き色がつき、溢れた脂が火に落ちるたび、香ばしい匂いが辺りに広がった。


 ジュワッ──。


 肉の焼ける音に思わず喉が鳴る。


 さっきまで「死ぬ!」だの「詰んだ!」だの騒いでいたのに、人間というのは現金なものだ。

 今の俺の頭の中は、目の前の肉でいっぱいだった。


「もうすぐ焼けるぞ、ユージ」


 最早ダイノスの言葉など、ただの雑音にしか聞こえない俺は、肉が焼けるのを今か今かと待つ。

 何も食べていなかったからなのか、生まれて初めてヨダレが止まらないということが本当にあると知る。


「焼けたぞ。ほらよ」


 いただきます。ダイノスから肉を受け取ると、俺は黙ったまま一口頬張った。

 口に入れた瞬間、鼻に抜ける心地よい香り。

 そして、溢れんばかりの肉汁。

 俺は一口一口をゆっくりと噛みしめた。


 ──美味い。美味すぎる。


 俺はこの肉を食べるためにこの惑星フォーズに転生した。そう言っても過言ではない。


 コンビニ弁当やスーパーで買った食材で作った料理と、自分で狩った──いや、正確には狩ってはいないが、この肉を比べるのは酷だな。

 キャンプで食うカレーは美味いと聞くが、これはそれの最上位互換だ。


「……しかし、美味いな」


「やっと喋ったと思ったらそれかよ。

 魔物の肉は美味いんだ。それもジャイアントボア。味は格別だよ」


「魔物の肉って食えるんですね。毒とか大丈夫なんですか?」


「モグモグ食いながら聞くことかよ。

 まぁ、毒がある奴もいるから気を付けろよ?」


 マジかよ。いや、まぁいいか。

 別にこれから冒険者になるつもりもないし、食べれるのだけ街で聞いて、慎ましく生きよう。


「ユージのおかげで俺もジャイアントボアの肉にありつけた。ありがとな!」


「いえいえ、俺のおかげだなんて、とんでもないです」


「……いいかユージ。これから冒険者になるんだったら、その敬語はやめときな。舐められるぞ」


 ……ならないよ? え、なんでそんな話になるの? それに、舐められるもなにも、俺の最弱ステータスじゃしょうがなくね?


「まぁ、俺はお前の強さを知ってるから、舐めるようなことはしないがな! ハハハハッ!」


「は、ははは……」


 ダイノスの誤解は街に着くまでになんとかするとして、流石に疲れた俺は先に休むことにした。

 初めての野宿が異世界で、魔物の彷徨く森の中だというのに、ダイノスがいるから安心だ。


 あれ? でもダイノスの戦う姿は見てないのに、なんで安心してるんだ?

 レベルが上がってほんの少し強くなったからか?


 まぁいいや、そんなの……明日考えよう……。



◆



──翌朝。


 目が覚めて、背伸びをしながら起き上がると、すでに火は消され、ダイノスは出発の準備を終えていた。


「ふぁぁ〜、おはよう」


「おうっ! やっとお目覚めか!」


 不思議と筋肉痛や疲労感は無かった。この身体は若いのか。まぁ、死ぬ前も二十代だったし、そんなものか。


「ふぅー、よし、じゃあ行こうか。ダイノス」


「うしっ! 行くか! ふふふ、早速いい話し方になったじゃないか」


「まぁね、どう? ちゃんと出来てる?」


「あぁ、上出来だ!」


 少し歩くと、開けた所に出てきた。ダイノスの話では、普段人が行き交うのはこの舗装されてない道らしい。

 アルミシアにまた一つ文句が追加された。あのヤロウ、森の中に放り出しやがって……!


 道中出会う魔物は、ウサギに角が生えた奴だったり小さな猪。ジャイアントボアに比べれば可愛いものだが、今の俺には勝てるかどうか怪しいな。


 現れてはダイノスが瞬殺し、手際よく処理していく。これが昨晩感じた安心感か。背中で感じさせるとは、もしかしてダイノスって物凄い戦士なんじゃないか?


「魔物は全部倒しながら行くのか?」


「あぁ、コイツら人間を襲うからな。

 それに、弱くても数が増えれば厄介になる」


 なるほど。俺は荷物持ちを買って出て、ダイノスが処理した素材を預かったカバンに放り込んでいく。

「お前が倒してもいいんだぞ?」と言われたが、そんなのは無理無理。


 見てよこれ。カバンを背負ってるだけで息切れしてんの。こんな奴絶対無理でしょ?


「ダイノスは強いんだな」


「何を言う! ジャイアントボアを無傷で倒したユージに言われてもな」


「アレは、ただの偶然だから……」


「謙遜するなって! 強者の余裕だな!

 ガハハハハッ!」


 あ、ダメだこれ。何言っても強者ゆえに、ってなるやつだ。さて、どうしたものか……。


「ユージ! 見えてきたぞ!」


「おぉ……街だ」


「ようこそ! 冒険者の街レグシアへ!」


 いや、デッカい街だなおいっ!




 次話へ続く

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