第63話「取り扱い注意」
──侍の国、ニニホン。埋蔵動力付近。
不穏な雰囲気の中、睨み合う両陣営。相手が魔族ということもあり、中々一歩を出せない。
「リーガ! お前が先にいけ! 俺はその隙に殿を殺る」
「お前はいつもそうだターブ! 美味しいところばっかり自分で!」
おっ、なんだなんだ。もしかして揉めてる?
っていうか、太ってる方がリーガで痩せてる方がターブかよ……ややこしいなコイツら。
「どうせニニホンを落とした手柄もお前が全部貰うつもりなんだろ! いいよなー、俺もクレイ様に褒められたいよ」
「……ッ! コイツら……クレイの部下かよ」
やっばい奴がバックにいるじゃん! 早いとこ倒さないと。クレイまで来たら終わりだぞ……
「ユージ!」
「分かってる! 大将を呼ぶ前に片付けるぞ!」
って言っても俺にはどうすることも出来ん。殿様も戦力にはならんだろうから、リディアとゲンリュウにかかってるな。あっ、そういえば……
俺は思い出したようにカバンを漁る。そうだよ街でピストル買ってたんだった!
『グルルルルッ……!』
「あん? さっきから何なんだ? どっかいけよ、この犬と猿! 邪魔だ、シッシッ!」
太ってる方の魔族リーガが手で追い払うような仕草をすると、舐められたことに怒ったのか、シロはその手に勢いよく噛み付いた。
「あたっ! この……犬! ふざけやがって!」
ドゴォォッ!
激昂したリーガの拳をひらりと躱し、シロが頭突きをお見舞いする。
「ガハッ! な、なんだコイツ? クソッ!」
リーガが林の中へ消えて行くと、後を追うようにシロも駆けていった。
『キキッ!』
「あっ、おい! モモ!」
モモまで追っかけて行っちゃったよ……まぁ、アイツらなら大丈夫か。
残るは一人。俺は取り出したピストルを構える。
「頼むぞ、俺の筋力でも耐えられる衝撃であってくれよ……!」
俺は慎重に狙いを定めて、引き金を引いた。
カチッ──パスンッ!
「……は?」
カチッ、カチッ──パスンッ!
「……なんだよこれ、オモチャじゃねぇか!」
ガシャン!
俺は大金はたいて買ったピストルを地面に叩きつけた。あのオヤジ、あとで訴えてやる……!
クラッ──
「あれ? なんだこれ……力が……」
なにこれ、急に力が抜けて……あれ?
俺は地面にへたり込んで、起き上がれなくなった。なんだ? ターブになんかやられたのか?
「ちょっとそれ貸して!」
リディアがピストルを拾って確認する。
「アナタこれ、魔導銃じゃない。魔力が弾になるやつよ」
「えっ、なにそれ?」
「だーかーらー! 自分の魔力を使って撃つの!
魔力は高いけど攻撃魔法が使えないヒーラー向けの武器よ!」
……は? ふざけんなよ! じゃあ俺は三回空気みたいな弾を撃って魔力が尽きたのか? 全然ダメじゃん。
「ただのゴミじゃん。……あとで売ろう」
「じゃあアタシにちょうだいよ。一回使ってみたかったのよね♪」
コイツ……初めからそれが狙いだったんじゃ……?
どうりで。買った時に反応が薄かったのは……
「お前、知ってたな?」
「えっ? なんのこと〜?」
「ユージ殿! 来ますよ!」
ゲンリュウの声に視線を戻すと、ターブがこちらへ向け走ってきている。
「まずは殿様の首からいただくぜ!」
あっ! ヤバいかも。俺、動けないし。
「えーっと、魔力を溜めて……引き金を引いて……こうかな?」
カチッ──
ドッッッゴォォォォォン!!
「うわぁぁぁぁっ!?」
銃口から放たれたのは、もはや弾なんて呼べる代物じゃなかった。
眩い光の塊が地面を抉りながら一直線に突き進み、その衝撃だけで周囲の土や石がまとめて吹き飛んでいく。
魔導弾はターブのすぐ横を通り過ぎ、そのまま背後の林へ──
ズドォォォォォォン!!
轟音とともに木々が何本も薙ぎ倒され、土煙が空高く舞い上がった。
「…………」
「…………」
俺も、ターブも、殿様も、ゲンリュウも。そして、当の本人ですら。
全員が言葉を失っていた。
「……なぁリディア」
「……なによ」
「それ、護衛用って言ってたぞ」
「……アタシも聞いてたわよ」
どこをどう護衛したらこんな威力になるんだよ!
何なのコイツ!? どんだけ魔力あんだよ!
「な、何だアイツ……バケモノかよ」
ターブは噛み合わせた歯をガタガタと震わせながら、怯えた目をリディアに向けている。
「リーガめ! こんな時に何でいない!」
カチャリ!
「……ッ!」
ターブの焦りを嘲笑うかのように、リディアが再びピストルを構える。
ターブは恐怖に震えながら、リーガを追うように林へと逃げていった。
「あっ、コラッ! 待ちなさいよ!」
俺はリディアから魔力回復薬を受け取り一気に飲み干した。ようやく立てるようになり、追いかけようとしたその時──
「キャァァァァァァッ! だっ、誰かーっ!」
「な、なんだ? 女の人の……悲鳴!?」
林の中から聞こえた悲鳴に、殿様が反応し一目散に林へと入っていった。
「とっ、殿!? ユージ殿、急ぎましょう!」
「あぁ!」
なんなんだ? 一体どうしたんだ? 殿様……
次話へ続く




