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第62話「衝突」


──ニニホン城、天守閣。


「魔石が狙いとは、どういうことじゃ?」


 殿様が身を乗り出し尋ねる。


「いや、俺ならそうするかなと。城には中々攻め込めないし、島の場所が分からず仲間も呼べないなら、まず島を動かないようにするかも」


「……っ! ゲンリュウ!」


「はっ! すぐに!」


 ピューーーッ!


 ゲンリュウが指笛を鳴らすと、天井の板が一枚外れ、忍者みたいな格好の男が顔を覗かせる。


「はっ、ここに」


「急ぎ見廻り衆に伝えろ! 魔石を壊させるな!」


「御意!」


 男は天井から音もなく降り立つと、天守閣から飛び出し、屋根伝いに走っていった。

 ……忍者だ。あれは絶対に忍者だよ……。カッコ良すぎだろ。


「ぐぬぬっ……魔族めっ!」


 殿様、それ以上敵役みたいな喋り方しないでくれ。本当に嫌いになりそうだ。


「それで、俺は何をすればいいんだ?」


「お主は余を守ることに専念せよ」


 ……は? なぁコイツ、殴ってもいいか?

 いや、筋力5じゃあ大したダメージにならんか。


『グルルルルッ……!』


「ちょっ、シロ! 落ち着けって!」


 俺はシロの喉を擦りながらなだめる。いや、気持ちは痛いほど分かるよ? でもさすがに殿様に噛みつきでもしたら打首になっちまう。


「おい、モモからもシロになんか言ってくれよ」


 ──プイッ。


 あっ、コイツ今プイッてしやがった! この野郎……興味がないことには無関心だな。まったくもう……。


 その時、シロの耳がピクリと動いた。


『クンクン……ッ!』


 シロは一点を見つめて匂いを嗅いでいる。なんだ、なんだ? 何かあったのか?


「どうしたシロ? っておい!」


 シロは天守閣から勢いよく飛び出し、屋根をピョンピョンと跳ねていった。すげぇ、忍者より早ぇな。


『キキッ!』


「えっ!? モモまで!? おい待てって!」


 俺の制止も虚しく、二匹はどこかへ行ってしまった。ちょっと待て。お前らがいなくなったら誰が俺を守るんだ?


 あれ? これじゃ殿様と一緒じゃねぇか。いつの間にか守られて当然と思ってたな。いかんいかん。


「ねぇユージ、まさかシロ……魔族を見つけたんじゃないの?」


「えっ、マジで? いくらなんでも会ったことないやつの匂いは分かんないでしょ」


「そうだけど……魔族特有の匂いがあるなら……」


 それはマズイね。シロは一度魔族と闘ってるから、匂いは分かってるな。まさか──


 ──バンッ!


「ゲンリュウ殿! 報告します!」


 天井の板が外れ、忍者が顔を覗かせる。いや、報告くらい襖開けてしてこいよ。


「どうした!? 何事だっ!」


「見廻り衆が魔族と鉢合わせ、戦闘に入っております!」


「──ッ! なぜ急に!」


「それが、魔石付近を警戒中に……」


 えっ!? バカ正直に魔石の周りを見廻ってたの!?

 そりゃバレるって!


「クッ! こうしちゃおれん……!

 ゲンリュウ! 余の刀を持てい!」


「はっ! すぐに!」


 えっ、刀? 殿様どうした?


 殿様は刀を受け取るとゲンリュウとともに天守閣を出ていった。


「ユージ! 私たちも!」


「あぁ、シロとモモが心配だ。急ごう!」


 俺はゲンリュウの後ろに、リディアは殿様の後ろに飛び乗る。

 二頭の馬は城を飛び出し、魔族が現れた場所へと一気に駆けていった。



◆



──侍の国、ニニホン。埋蔵動力付近。


「ここに動力の魔石が隠されてるのか?」


 そこは、島の中心に近い場所だった。少し開けた土地には、朽ちた藁葺き屋根の小さな家がぽつぽつと並んでいる。


「そうです。ここは最初の村があった場所。修繕を繰り返しておりましたが、城下町が出来たことで皆移り住み、今は誰もおりませぬ」


「なるほど」


 俺は馬から振り落とされないようにゲンリュウにしがみつきながら辺りを見渡す。

 馬なんて初めて乗ったからちょっと怖いな。


 ていうか、人生で初めて乗った生き物がワイバーンて。我ながら意味不明だ。


『……ワンッ! ワンッ!』


「あれは……ゲンリュウ! あそこだっ!」


 シロとモモが横並びになり、その先にいる二人組を睨みつけている。おそらく、あの二人が魔族だろう。


 一人は太っていて、もう一人は細身。見事な凸凹コンビだな。

 その魔族たちの周りには、見廻り衆だろうか。四、五人の男たちが倒れ、ピクリとも動かない。


「お前たち……!」


「殿っ! お待ちを!」


 ゲンリュウの声に反応して、魔族が口を開く。


「おいっ! 聞いたか、リーガ?」


「あぁ、ターブ。アイツ、今『殿』って言ったな!

 クククッ! まさか向こうから来てくれるとは」


 おっと、早くも正体がバレちゃったよ?

 あからさまに魔石を警戒してた見廻り衆といい、コイツら本当に守り以外ダメダメじゃん……。


 殿様は馬から降りると、お構いなしに先頭に立つ。さっきまで「余を守れ」って言ってたヤツとはまるで別人だ。


「おい、ゲンリュウ。殿様っていつもああなのか?」


「……お恥ずかしい。民の危機となると周りが見えなくなってしまうのです」


「へぇー、ちょっと意外だな」


 俺たちは馬を降りると、殿様へ続くように構える。


「なんだ? やる気満々じゃないか……!

 おい、リーガ! 俺が殿様を殺る。あとのゴミはお前にやるよ」


「ちぇっ、いいとこはいっつもお前だよ……。

 まぁいいや。俺はあの可愛い娘を貰うとしよう」


 うぅ……強そうだ……

 こんな国に、来るんじゃなかった……




 次話へ続く

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