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第57話「報酬」


──王都グランシア、王城。謁見の間。


「はっはっはっ! いやはや! 大義であった!」


 謁見の間に通された俺たちは、王様に農村イースで起きたことを報告していた。


「まさか本当に討伐せずに解決するとは!

 ユージよ、お主は一体何者なのじゃ?」


「本当に僕は大したことないんですよ。全部仲間のおかげといいますか……」


 こうやって本当のことを言うたびに、みんな勘違いしていくのはもう分かってる。

 でもな、本当のことなんだよ。


「ふふふ、まずは仲間への感謝か。ユージよ、その気持ち忘れるでないぞ」


「は、はぁ。忘れるもなにも本当なんで……」


 ほらね。もういっそ全部嘘ついてみるか? いや、それは俺の良心が許さない。


「国を救った報酬と合わせて、褒美を与えたいのだが……本当に家が買える金だけでよいのか?」


「あっはい。それはもうそれだけで十分です」


 そうだった! 俺は家を手に入れられるんだった!

 だったらもうどんなに勘違いされてもいいや。家を建てて、畑でもやりながらのんびりスローライフ生活だ!


 ようやく、俺の異世界生活が始まるのか……


「アナタ、報酬ってそんなに貰えるの!?」


「そうなんだよ。ついに念願の家だぞ……!」


「マズイわね」


「なにがだ?」


「家なんて建てたら、アナタ絶対に引きこもるでしょ!? 冒険は? アタシたちの冒険はどうなるの!?」


「ふふふっ、薬草ハンター復活だ……。

 俺はもう最低限の依頼しかしないぞ」


「あぁ……サイアクだ……」


 リディアは頭を抱えているが、今の俺にはそんなことどうだっていい。ダイノスとだって誤解が解けてるんだし、冒険がしたいときは二人で行けばいいさ。


「しかし、あれだな。ここまで凄い冒険者なのにユージという名を最近まで聞かなかったな。なぁディーノよ」


「はっ、彼の噂は最近囁かれるようになったと記憶しております」


「ふむ。ユージよ、今までどこで何をしておったのじゃ?」


 これは、非常にマズイ質問が飛んできたぞ。

 えっ? 異世界から来ましたって言ってもいいものなのか?


 どうする!? どうする、俺!?


「おーい、ユージよ。なぜ黙っておる?

 そなた、故郷はどこなのじゃ?」


「あー、えーっと……その……」


 俺がモゴモゴとしていると、横からリディアが割って入る。


「たしか……ニニホンじゃなかったっけ?」


 げっ! なんでそれを!? エリスちゃんとダイノスにしか話してなかったはずなのに……


「……なんで知ってんの?」


「アタシもその時ギルドにいたのよ。ジャイアントボアを倒したって、みんなアナタのこと見てたわよ?」


「あっ、そうですか……」


「ニニホン? はて……? そんな名の街があったかの……いや、待て。聞いたことがある。ディーノよ!」


 えっ?


「はっ、ニニホンは極東の島国でございます。

 鎖国国家ですがここ最近になって魔族が襲来し、わが国にも応援要請を出してきております」


 おいおい。


「おぉ、そうじゃったそうじゃった! ということじゃユージよ。そなたの故郷が魔族に襲撃されておる。そなたはどうする?」


 どうするって、まったく知らない国なんですけど。


「そんな……。ユージ! アナタの故郷に行きましょ! 助けなきゃ!」


「えっ? えっ?」


「しかし、ニニホンは鎖国国家です。急に押しかけて入国できるのか分かりませぬ」


「なぜじゃ? 向こうから応援要請を出しておるのに。それに、ユージの故郷ではないか」


 ……故郷じゃないです。それ、どこにあるの?

 それに、また魔族? 今度こそ死ぬじゃん。


「あのー……」


「ユージよ、どうした?」


「俺、ニニホンへの行き方が分からないんですけど……」


「……は?」


 ですよね、分かります。俺も唯一ついた嘘がこんなことになるなんて思ってませんでした。


「ど、どうしましょう?」


「どうしましょうって、ディーノよ。お主は分かるか?」


「いえ、国の場所を正確には分かりかねます。

 なにぶん鎖国国家ですので、情報がありません」


「ふむ……どうしたものか」


 王様は髭をイジイジしながら考え込んでいる。良かった。とりあえず行かずに済みそうだ。


「ハッ……! 王よ、たしか闘技大会の出場者に極東の島国出身のゲンリュウ選手がおりました!」


「なんと! すぐに連れてまいれ! いいか!

 国の英雄の故郷が危機に瀕しておるのだ! 急いで連れてくるのじゃ!」


「ハッ!」


 ディーノは兵士たちを連れて謁見の間を出ていった。ゲンリュウってたしか、俺と対戦して棄権したアイツか。


「なんでいるんだよ……」


「んっ? どうしたユージよ」


「いえ、なんでもありません……」


 どうしよう……。多分ゲンリュウがきたら俺の嘘がバレちゃうよな……


「なぁ、リディア。ちょっと……」


「えっ? なによってちょっと、どうしたのよ!?」


 俺はリディアの手を引き、その場を離れる。


「王様、少し失礼しますね」


 謁見の間を出て扉を閉める。


「ちょっと、なんなのよ!?」


「あのな、俺はニニホンの出身じゃないんだ」


「ハァ!? ちょっと、どういうことなの!?」


「あの時、本当は日本って言ったんだよ」


「日本?」


「俺、実は異世界から転生してるんだ」


「……はい?」




 次話へ続く

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