第5話「転生先は森の中」
──転生管理局。
「行っちゃった……。流石に、マズイよねー」
アルミシアは、頭をポリポリと掻きながらモニターを眺める。
「アルミシア、何を見てるの?」
モニターを見つめるアルミシアに、もう一人の女神が近寄っていく。
「あっ、ソフィア……それがね、キャンペーンで転生したユージ君が旅立ったんだけど……」
「あぁ、二百億人記念の。何がそんなに不安なの? だって、勿体ないくらいの特典じゃない」
「それが……ね。このステータスを見てみて」
アルミシアはモニターを操作しステータス画面をソフィアに見せる。
「あらら、可哀想に。彼、死んだわね」
「だよねー……」
「それで? 転生先はどこなの?」
「魔物も少ない田舎の村にしたから、すぐにどうにかはなんないと思うんだけど……」
「──あら? ここ、村無いわよ?」
「えっ?」
ソフィアは転生先に指定されたカーソルを指差す。
「そこは、村からちょっと離れた森じゃない。
村の場所は、ここ」
「……あちゃー」
「その森の名前ってたしか……」
「えっとー、ジャイアントボアの巣、だね」
「……ご愁傷様」
◆
──ジャイアントボアの巣。
アルミシアの所に行った時と同じ光に包まれながら、俺は転生先の惑星フォーズに降り立つ。
ここが、惑星フォーズ……。
で、何で森の中なんだ? 普通ゲームでも最初の村とかお城スタートだろ。
しかも赤ちゃんじゃなくて、普通に成人男性かよ。
「……鏡が欲しいな。見た目は変わってるのか?」
こんな森に放り出されても、俺はどうしたらいいんだ? とりあえず、街を探すしかないな。
そうだ、結局ステータスはどうなったんだ?
「たしか、ステータスは見れるんだよな?」
俺の言葉に反応したのか、目の前にステータス画面が現れた。薄っすらと後ろの背景が透けている。
「ははっ、本当に運以外オール1だ。詰んだな」
ステータス画面を見ながら、感傷に浸っていると、画面の向こう、背景になにやら影が見える。
「んっ? なんだ? てかこれはどうやって閉じるんだ?」
閉じられない画面の横からひょいっと顔を出すと、見たこともない巨大な猪がいた。
──あ、終わったわこれ。
「グルルルル、ブシュー、ブシュー……」
ザッ、ザッ、ザッ。
猪は恐ろしい呼吸音とともに、前脚で地面を掻いている。
落ち着け、こういう時は目を逸らしたり逃げたら反射的に追いかけてくる。
目線を切らずに、ゆっくり、後ろへ下がるんだ。
「クソッ、ステータス画面が邪魔だな。消えろよ」
またしても、声に反応したのか、画面はフッと消えてくれた。これで良く見える。
むしろ、対峙することで恐怖感が強まっていく。一気に、現実に戻された気分だ。
「ゆっくり、ゆっくり……」
すると、突然猪は俺目掛けて突進を開始。
あれ? これは熊用の対応だったか?
そんな考えが頭を巡るよりも先に、俺は叫んでいた。
「うぎゃあぁぁぁー!」
◆
──三十分後。ジャイアントボアの巣。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
俺は、まだその場から腰を上げられずにいた。恐怖で身体が動かない。
倒したのか? いや、実際はコイツが勝手に転んで死んでっただけだ。
まだ、猪はピクピクしている。立ち上がることが出来ない俺は、四つん這いで近付いていく。
「き、急に起きたりしないよな?」
猪の額に刺さった太い木の枝を力一杯引く。筋力たったの1しかない腕がプルプルと震えている。
足で頭を押さえて、歯を食いしばり目一杯引くと、なんとか枝が抜け、勢いで後ろへ転がった。
ブシャアァァッ──。
猪の額から大量に血が吹き出し、息絶えた。
ようやく、恐怖から解放され肩を落とす。
「はぁ、助かったー」
ピロン──。
謎の音とともに、身体がほんの少し軽くなった気がした。まさか……。
「レベルアップか? ステータス画面ー、出てこーい」
呼びかけに反応して出てきた画面を見ると、レベルが3になっていた。一気に2も上がるのか、これはありがたいな。
「どれどれ……」
筋力 3
敏捷 3
耐久 3
魔力 3
器用 3
運 2250
運の数値がおかしなことになった。ただ、その他は壊滅的だな。
3って、下手したら小学生にも負けるんじゃないか?
「でも、最初に比べたら成長してるか」
拳を握り、ほんの少しの成長を確かめる。魔力もあるから、魔法なんて使えたり出来るといいな。
「おい! そこで何をしている!」
背後から大声で呼ばれて振り返ると、見るからに屈強そうな、鎧を身にまとった戦士が現れた。
腰には、剣を帯刀している。
あれ? もう詰んだ?
次話へ続く




