↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/86

第47話「人ならざるもの」


──王都グランシア、闘技場。


「なんだ? なんだ? アイツ、空飛んでないか?」

「それにあの翼と目は……」

「まさか、魔族?」

「魔族? そんなの本当にいたのか?」


 クレイとリューズの試合を見ていた出場者たちがざわめいている。

 あれがリディアの言っていた魔族?


「なぁ、マジェルカ。本当にあれが魔族なのか?」


「はい……。見た目も、ビンビンに感じる魔力量も、まさに聞いてた通りっす」


 魔力? 俺にはさっぱり分からねぇ。リディアならなにか分かるのか?

 俺は特別席に座っているリディアへ視線を送る。


 リディアは、両手で口元を押さえ震えているようにも見えた。

 間違いない。あれが魔族だ……!


 クレイが周囲を見渡し不敵な笑みを浮かべる。


「さて、どうしましょうかね……うーん、面倒ですね。一瞬で灰になってもらいましょう」


 そう言うと両手を広げ、手のひらの上に赤黒い火球が作り出された。

 えっ、ちょっ! いきなり大技!?


「──舐めるなよ!」


 声に振り返ると、リューズが再び剣を構えていた。いけるのか!? さっき見事にやられてたけど!?


「……脆弱で悪かったな。たしかに先ほどの一撃はお前を甘く見ていた……!」


 リューズの全身に白色のオーラが浮かび上がる。


「身体強化、“剛”!」


 おぉっ! リューズの身体が少し大きくなったぞ!? 身体強化って、魔法でそんなこともできるのか!

 リューズの筋肉が一回り膨れ上がる。鎧の軋む音とともに、地面が沈み込んだ。


 ……俺も身体強化したら少しはマシになるのか?


 リューズが一瞬で間合いを詰める。今度はその動き出しすら目で追えなかった。

 気付いたら、すでにクレイに切りかかっていた。


「これは中々──ですね!」


 クレイは両手に出した火球を消し去り、攻撃に備えた。今度は指一本ではなく、“左腕を使って”剣を受け止める。

 どうなってんだよアイツの身体は。なんであの剣を普通に止めてるの!?


「くっ! 切れない……だと?」


 リューズは歯を食いしばり、力を込める。しかし、あと一歩が及ばない。


「身体強化が自分だけの専売特許だとお思いで?

 まったく、面白い冗談ですね」


 リューズの剣がじわり、じわりと押しやられる。


「まさか“あと一歩”などと勘違いしてませんか?」


 クレイが空いている右腕をリューズの方へ向ける。リューズの目の前で構えた拳はまさかのデコピンの形だ。


「その勇気に免じて手加減して差し上げます」


 ──バチーンッ!


 リューズの身体は弾丸のように吹き飛ぶ。

 石壁が轟音とともに砕け、土煙が闘技場を包んだ。

 煙の向こうで倒れているリューズは、すでに意識がどこかへ飛んでしまってる。


「次からは身体強化“柔”と言いなさい。まぁ、次があればですが……」


 これは……無理だ。次元が違いすぎる。

 コイツが魔族? もうこれ、魔王なんじゃないか?

 暴走魔法使いが暴走しないってだけで、コイツのヤバさは痛いほど伝わる。


 本当に、手を出しちゃいけない存在なんだ……

 闘技場にいる選手も、観客も、誰一人その場を動かなかった。

 いや、正確には動けなかった。それほどまでに絶望的な力の差が魔族と人間の間にはあった。


「少し、よろしいかな?」


 なんだ? 声のする方へ視線を送ると、特別席の奥から、白く長い顎髭をたくわえたおじいちゃんが出てきた。

 危ないよ、おじいちゃん。なにしてるの?


 クレイはおじいちゃんを見ることもせず応えた。


「……あなたは?」


「失礼。私はこの国、グランシアの王アルヴェリオ三世」


 お、お、王様だったの!? めちゃくちゃ優しそうなおじいちゃんかと思った……


「これはこれは。この国の王が一体何の話でしょうか?」


「ここは一つ、我々に猶予を与えてはくれまいか?」


「……は?」


「ぐっ……! 一つ、身を引いてはくれないでしょうか……」


 その声は、微かに震えていた。おじいちゃん。いや、王様よ。それは悪手だ。

 飛び込み営業でも基本中の基本。絶対に引いてはいけない。また後日、なんて言ったらこちらにもう手が無いって言ってるようなもんだ。


「クククッ……。一国の王ともあろうお方が、たかが魔族一人に屈すると?」


 ほら見ろ。底を見せてはいけないんだよ。


「王よ。おやめください」


 王の前に一人の男が立ち塞がる。あれは……ディーノ?


「貴方は頭を下げてはいけない。ここは私がいきます」


「ディーノ! よせ!」


 王様の制止も聞かずに、ディーノは闘技場へと降り立った。あの高さから飛び降りても平気って、まさかディーノって強いんじゃ……


「リューズよ、お主は自分に過信しすぎだ。

 ──だから私に勝てない」


 ディーノは倒れて動かないリューズへ一瞥する。

 だから勝てないって、まさか前回優勝したのディーノなの!? さすが王様の側近だ……


「……ユージ様」


 ディーノがこっちへ近付いてきた。そして、俺を真っすぐ見据えた。


「な、なんでしょう?」


「おそらく私でもあの魔族には勝てないでしょう。

 しかし、ユージ様ならもしかすると……」


「……はい?」


「あとは頼みましたぞ……」


 そう言うとディーノは魔族に向かって構えを取り走り出す。

 残された俺は一人、佇んでいた。


「……俺にどうしろってんだよ」




 次話へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。