第36話「アースゴーレム」
──土のダンジョン、ボス部屋。
ドスン……ドスン……
重たい足音とともに、大地が震える。
「来るぞ……!」
ダイノスが剣を抜き、リディアも杖を構えた。俺は見よう見まねで剣を抜き、構えた。
闇の奥で赤い瞳が二つ、不気味に揺れる。
ドスンッ──
巨大な腕が闇の中から姿を現した。
「う、腕だけで俺よりデカいんだけど!?」
その腕は岩でできていた。いや、岩じゃない。
岩そのものが生きているような腕だった。
やがてもう片方の腕。
肩。
胴体。
最後に、山のような巨体が闇の中から姿を現す。
高さは五メートル……いや、もっとある。
全身を覆う土と岩の鎧。
肩からは巨大な岩が突き出し、歩くたびにボロボロと土砂が崩れ落ちる。
胸の中央には、赤黒く脈打つ巨大な魔石。
そして──
『ゴォォォォォォォォッ!!』
咆哮と同時に、ボス部屋全体が揺れた。
「……アースゴーレムだ」
ダイノスが低く呟く。
「こいつが、このダンジョンの主だ」
「いやいやいやいや! デカすぎるだろ!?
どうやって倒すんだよあれ!」
俺は抜いていた剣を鞘に戻す。もちろん、逃げるのに邪魔だからだ。
「大丈夫! スピードは無いから躱せるわよ!
ただし、絶対に当たっちゃダメ! 死ぬわよ!」
たしかに、あの図体ならスピードは無いかもしれないけど、俺の敏捷は5だけど大丈夫そう!?
「リディア! アイツのスピードはどれくらいだ!?」
「ちょっと待ってね……見えた! 6よ!」
「ダメじゃん! 俺より早ぇーよ!」
「おい! 何をゴチャゴチャ言ってんだ!
──来るぞ!」
アースゴーレムは右手を大きく振りかぶる。その動きはとても遅く、力を溜めるようにゆっくりと軋んでいた。
そして次の瞬間──
ゴォォォォッ!
振り下ろされた右拳を受け、ダイノスの剣は大きく弾かれた。直撃を避けたリディアも、距離を取っていた俺も、拳の風圧で後ろへ吹き飛ばされた。
「ガハッ!」
最後方にいた俺は、飛ばされ壁に背中を打つ。
「ユージ! 大丈夫!?」
「あっ、あぁ……なんとか。当たってなくても死にそうだよ……」
「長期戦は難しいわね。アタシが心臓を打ち抜く!」
そう言うとリディアは杖を振り上げ弓を放つように構えた。あれはファイアアローだ……!
しかし、溜めの長い魔法使いの攻撃はアースゴーレムに読まれた。
「あっ! アイツ左手で心臓を!」
「──ファイアアロー!」
放たれた炎の矢は、正確に心臓を捉えるも左手に阻まれ霧散した。
「もうっ! 土と火じゃ相性悪いわね……」
マジかよ。いくら放ってもダメージが無いってこと? 何とかして左手をどかさないと……
でも、あの右手の攻撃だけでも近付けないんじゃどうしょうもないぞ!?
「──ッ! また来るぞ!」
今度は右手を大きく上へ構えた。そして、そのまま地面に向けて拳を叩き込む。
ドカァァァァン!
足場が崩れ、直線上に地面が隆起していった。
うわっ! ヤバい! 巻き込まれる!
「ユージ! ウインドインパクト!」
「へっ? ほべぇっ!」
俺はリディアの風魔法でぶっ飛ばされ、事なきを得た……のか? 死にそうだよ。
「ユージ! 大丈夫か!?」
「……だい、大丈夫じゃ、ない」
もう無理だよ……俺に戦いなんて。俺は回復薬を飲みながら隠れられそうなところを探す。
辺りを見渡すと、なんだかいい感じの岩場があった。
あそこだ! ダイノスが気を引いてるうちにそろりそろりと岩場へ逃げる。
「ユージ! 俺が右手の攻撃を防ぐ! その間に左手をどかせ!」
えっ!? 俺が!? 無理無理無理!
俺はダイノスの言葉を無視して岩場によじ登る。
「ふーっ、ここならひとまず安全だな……」
俺が戦況を眺めていると、リディアの杖が怪しく光りだした。まさか……
「ダイノス! ちょっと火力上げるわよ!」
「おわっ!? マジかよ!?」
リディアが杖を構えると、杖先に光が集まりだす。あれヤバくない? ヘルフレイムの時より光ってる気が……
「クッ! 制御しづらいわね! もう!
おとなしく言うこと聞きなさいよ!」
「ハァァァァッ! ファイアアロー!」
ズガァァァァァァンッ!
リディアが放った馬鹿デカいファイアアローがアースゴーレムの左手に直撃した。
左手からは、モクモクと煙を上げている。
しかし──
マジ? あれでちょっと抉れただけ?
「なんなのよ、もう! ダイノス! もう一回行くわよ! 時間稼いで!」
「おうよ!」
ダイノスは自分にヘイトを向けるように、大げさに斬りかかる。アースゴーレムは相変わらず左手で心臓を守りながら、右手だけで応戦している。
「なんか……行けそう、なのか?」
俺は岩場からこっそりと二人の戦いを覗きながら、少し安堵していた。
そして、そんな自分に初めてイライラしてきた。
「何だよ。このクソ雑魚ムーブは……情けない」
気付けば拳を握りしめていた。
怒りに任せて岩場から身を乗り出し、アースゴーレムに向かって叫ぶ。
「おいっ! こっちを見ろよデカブツがっ!」
次話へ続く
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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次話からは一日一話の更新を予定しています。
引き続き『運に全振りした俺、最強扱いされてますが全部事故です』を楽しんでいただければ嬉しいです。




