第34話「迷子のご案内です」
──土のダンジョン、??階。
謎の光に包まれた瞬間、二人とはぐれてしまった俺は、もはや人生を諦めていた。
あぁ、どこで間違えたんだろう。うん、初期設定だね。
「アルミシア、聞いてるなら出てこいよ。最後に一言文句言ってやる」
俺の独り言は、ダンジョン内に虚しく反響するだけだった。ちょっと女神さん、アフターサービスとか無いの?
ゴゴゴゴッ……。
うわっ! また揺れた! この間隔がなくなったら溢れるんだよな……。
早いとこ出口を探さないと。今、何階にいるんだよ……誰かー! 助けてー!
カチッ──
あっ、ヤバそうな音が足元から……
これ絶対に罠踏んだよな? ……何も起きない? もしかして、不発?
──ドゴォォォォン……
「なっ、何の音だよぉ」
遠くの方で物凄い音がしたと思ったら、またダンジョンが揺れだした。
そして、音のした方から天井が崩れていく。
「こ、今度はなんだよ!?」
俺は踵を返し、全力で崩落から逃げる。
「マジでヤバい! マジでヤバい!」
息を切らしながら走る俺の前方で、宝箱がキラリと光る。しかし俺は、何の感情も湧かずに素通りした。
今、宝箱とかいらないから。それどころじゃないから。
必死に逃げていたが、遂に足がもつれて転んでしまった。もう終わりか……
ガラガラガラガラ……
「ハァハァ……と、止まった? 助かったのか?」
天井の崩落は寸前のところで止まった。そして、目の前には先ほど見つけた宝箱。
とりあえず開けてみるか? いや、罠だったら……
ミシミシ……
「へっ?」
ボゴンッ──
俺の足元から床が崩れる。今度は床が抜け落ちていく。
「もう、なんなんだよぉぉぉぉ!」
俺は、床とともに真っ逆さまに落ちていった。
◆
ポチャン──
水滴の落ちる音で俺は目が覚めた。生きてるのか?
そもそも、どれだけ気を失ってた?
「魔物はいないみたいだな……」
目の前には、一緒に落ちてきた宝箱。あぁ、カサブタだ。ここは安全地帯か……
「助かった? ここでずっと待ってたら二人が迎えに来てくれるかも……イテッ!」
身体を起こそうとした瞬間、足に痛みが走る。
目を向けると、足があり得ない方向に曲がっていた。
「は? なにこれ……」
気付いた途端、ズキンと痛みだした。俺は痛みに耐えながら、カバンから回復薬を取り出す。
こんな目に見えて折れてる足にもちゃんと効くのかは分からないが、一気に飲み干した。
──パアァァァァッ。
「マジ? これでも治るの? 回復薬、チートすぎじゃね?」
ダンダンと足を踏み鳴らし、痛みが消えたことを確かめる。回復薬凄えな……
ゴゴゴゴッ……。
まだ揺れてるな。あの二人、魔核は壊せてないみたいだ。
俺には無理なんだから、二人に頑張ってもらわないとスタンピードが始まっちまう。
ズシィィィィィン──
今度は何の音だよ。もうこのダンジョン壊れるんじゃないか? まぁ、ここは安全地帯だから大丈夫だろう。
──コツンッ!
「イテッ!」
頭に石ころが落ちてきた。全然大丈夫じゃないじゃん! さっさと離れよう。んっ?
俺の目の前には、一緒に落ちてきた宝箱があった。
そういえば、宝箱開けようかな。いやしかし……
「ええい、ままよ!」
ガチャッ──
悩んだ末に、宝箱を開ける。罠は……無いようだ。
「──ッ! これは……鍵?」
使い道が分からねぇ……
中身は冒険者の持ち物だったんだよな? じゃあこれは、知らんやつの家の鍵か?
「い、いらねぇ……」
誰のとも分からない鍵を念のためポケットに突っ込み、俺は入り口を目指して歩き出す。
しかし、どこをどう進めば入り口に行けるのやら。
「頼むから魔物だけは出ないでくれよな……」
◆
どれほど歩いただろうか。運がいいのか悪いのか、魔物に出会うことも無く下へ降りる階段に辿り着いた。
「……下は、進むほうだよなぁ。ここはスルーするか」
一人で先に進むなんて自殺行為をするわけにはいかない。この階段は無視して、上へ続く階段を探そう。
そして、歩き出そうとした時再びダンジョンが唸り出す。
ドドドドッ……!
また地震か? いや、振動こそ似ているが少し音が……これは地震というより地鳴りか?
すると、前方から魔物の大群が押し寄せてきた。
「──ファッ!?」
俺は逃げるように階段を駆け下りる。
恐る恐る覗き込むと、目の前をやたら大きなネズミや狼、巨大な蟻。多種多様な魔物が群れを成して行進している。
「こっ、これがスタンピード? もう始まったのか?」
ズガァァァァァァンッ!
今度は、けたたましい爆音とともに砂埃が舞い上がる。もう何が何だか分からない。
俺は逃げるように奥へ進んだ。
進むにつれて、ランプの数が減っていることに気付いた。まさか、最深部が近いのか?
俺は壁に付けられたランプを一つ手に取り、さらに進んでいく。
「……流石に、引き返すべきか?」
ドゴォォォォンッ!
今度は後方から何かが崩れるような轟音がした。
何だよこのダンジョン。本当に崩壊してるんじゃないか?
引き返す選択肢が無くなってしまった俺は、仕方なくランプが設置されていない道を進んでいく。
そして──
「なんだこれ? ……ドア?」
俺の目の前には、大きな扉が現れた。
「えーっと、まさか……ボス部屋?」
次話へ続く




