第31話「応援要請」
──ロゼント山脈。
「わぁっ! 凄い……!」
「どうだー? 気持ちいいだろー?」
「えぇ、とっても」
俺たちは今、ロゼント山脈を下山している。
リディアはワイバーンに乗り、俺はフェンリルに。そして、後ろから『わふわふ』言いながら、シロが追いかけている。
「シロ! ゆっくりでも良いんだぞ?」
『わふっ!』
僕は大丈夫ってか? 可愛いな。
しかしフェンリルの乗り心地は最高だな。急な岩肌を物凄い速さで駆け下りてるのに、振動がまるで伝わってこない。
「ユージ! おっ先〜!」
「あっ! こら、待てよ!」
リディアを乗せたワイバーンが、俺を追い抜いていった。楽しそうで何よりだ。
『グルルルル……』
「んっ? どうした? フェンリル」
『ガウッ!』
「ひぇっ!」
フェンリルがワイバーンに負けじと、スピードを上げた。俺は、落ちないように必死にしがみつく。
追いかけるように、シロも全速力で駆ける。
みんな、楽しそうで……俺だけ楽しくないんだが!? ワイバーンにすれば良かった!
たっ、助けてくれえぇぇぇっ!
◆
──レグシア近郊、平原。
俺たちは今、ワイバーンとフェンリルに乗ってレグシアに向かっている。
ロゼント山脈を降りてからは、平坦な地形だから二匹が張り合うようにスピードを上げても、なんとか捕まっていられる。
「あははははっ! 気持ちーっ!」
リディア……。凄く楽しそうだな。俺は小さい頃から絶叫系が苦手だから、もう酔いそうなんだよ。
このふわっふわの毛並みが衝撃を吸収して無かったら、とっくに吐いてると思う。
「……楽しそうで良かった。少しは気が晴れたかな?」
やっぱり、こうやって見ると普通の女の子なんだよな。ダイノスは何かあるって言ってたけど、俺には分からない。
分からない事を悩んでもしょうがないから、“なるようになるさ”の精神でいくしかないよな。
「あっ! リディア! そろそろ街が見えてきたぞ!」
「ホントだ! 早いね! 流石ワイバーンね」
『クァッ!』
『ワァフ!? グルルルル……』
フェンリルがあからさまに不機嫌になっている。
コイツ、神獣のくせに負けず嫌いが凄いな。普通に戦ったら、ワイバーンよりも強いだろうに。
「はははっ! お前も凄いって!」
『わふっ!』
ははは……まるで大きいシロじゃないか。なんかコイツも可愛く見えてきたぞ。
カンカンカンカンッ──!
「ん? ……なんだこの音? リディア! 何か街から聞こえてきたぞ!?」
「これは……敵襲の合図よっ! 街に何か危険が迫ってるのかも!」
「なんだって!? おいっ! 急いで戻るぞ!」
俺たちは、さらに速度を上げて街へと急ぐ。
俺には街を助ける力は無いが、こっちにはワイバーンとフェンリルがいる。それにリディアも。
火力だけなら、ちょっとした魔物の群れではどうにもならないだろう。
「門が見えたぞ! 敵は……いないな」
「もしかしたら、反対側から来てるのかも!」
「何ッ!? どうする? 回り込むか?」
「時間が無いわ! このまま中に入りましょう!」
俺たちは、街を突っ切って反対側に行くことに。
そうこうしている内に、門の前までやって来た。
「大丈夫ですか!? 一体何があったんです?」
「う、うわあぁぁぁっ! ってワイバーンとフェンリルに、人が乗ってる!?」
門番の兵士は、俺たちを見るなり腰を抜かしその場にへたり込んだ。
「あっ、あなたはユージさん!?」
おっ、俺を知ってるのか。すっかり有名になってしまったな……良い意味ではないだろうけど。
「……なんだよまたユージさんか。おいっ! ギルドマスターに連絡しろ!」
「はいっ! すぐに!」
……あれ?
「あのー、もしかして……」
「いやね、監視塔からワイバーンと大型の狼の魔物が街に急接近してるって連絡が入ってまして」
んっ?
「近隣諸国に応援要請を出したところだったんですよ」
あれれ?
「すぐに誤報だって連絡しないと、要請を受けて大軍が街に押し寄せちゃいます」
「なぁ、リディア……」
「えぇ。やっちゃったわね」
ですよねぇぇぇぇぇっ!
◆
──レグシア、冒険者ギルド。
「まったく、お前は規格外にも程があるぞ!」
「はい……すみません」
俺たちは、冒険者ギルドの二階にあるギルドマスターの執務室にて大説教を受けている。
慌てて門の前でワイバーンとフェンリルに別れを告げて帰ってもらったが、連絡を受けたギルドマスターが飛んできていた。
すぐさま冒険者ギルドまで“連行”され、事情聴取が始まった。
たまたまフェンリルの子どもを助けて仲良くなったなんて話を信じてくれる訳もなく、またしても魔物を従えてしまったレグシア最強の冒険者が、街を混乱させたらしい。
「ワイバーンに続き、まさかフェンリルまでも……お前は底がまったく見えんな」
「は、ははは……」
「だが、もう突然魔物に乗って帰ってくるのはやめてくれ。本当に何かあった時に判断が鈍るからな」
「ですよね……」
「ったく、本当に分かってるのか?」
分かってますとも。俺だって、こんな形で異世界でオオカミ少年になりかけるなんて思ってませんでしたよ。
「あっ、そういえば。俺たちアルナ草を採りに行ってたんですけど、これ換金できますかね?」
俺は、カバンにパンパンに詰め込まれたアルナ草をマスターに見せた。
「……なんでこんなに沢山採れるんだよ」
あっ、やっぱりこれは異常だったんだ。
「もう、好きにしてくれ……エリスが下にいるから対応させる」
ははは……なんかごめんなさい。
次話へ続く




