第27話「ダンジョン報酬」
──レグシア、冒険者ギルド。
「それじゃあ、早速換金してきますね♪」
エリスちゃんはぴょんっと椅子を飛び降りて、素材を抱えて走っていった。
あのぴょんが可愛いんだよ、ぴょんが。
「じゃあ俺はマスターに英雄の帰還を知らせに行ってくるかな。あの人、『心配いらん』って言ってたけど、絶対心配してるだろうから」
「あ、あぁ……」
「お前も後で来いよ? 英雄譚を聞かせてくれ!
って言ってもどうせお前のことだ、あんまり語りたがらないんだろうがな! ハハハハッ!」
ダイノスは、リディアに一瞥もくれずにギルドを後にした。後でちゃんと説明してあげないとな。
これじゃあリディアが働き損だ。
大体コイツ、なんでさっきから黙りこくってんだ? ホント、女心はよく分からん。
トタタタタタッ!
「お待たせしましたー!」
あぁっ! かっ、可愛いっ! ヨイショって椅子に乗ってるぅぅっ!
「こちら、今回の素材の買取金額です!」
なんと! エリスちゃんが差し出したお盆の上には、金貨五十枚が置かれていた。
いっ、いっ、一千万円だと!? リディアと山分けしても、いや、山分けでいいのか分からんが五百万円!?
マジで家買えるじゃん……。
「あのー、納得いかなかったですか……?」
「あぁっ、いやいや、こんなにいいのかなって思ってただけだから」
「いいも何も、魔石だけでも相当な量なので、適正価格ですよ?」
そうか、そういうものなのか。たしかに、大規模な先遣隊って言ってたな。
普通はもっと大人数で攻略するものなんだろうな。
俺は再びリディアに視線を向ける。
「……なによ? 何か言いたそうね」
「あぁ、言いたい事は山程あるぞ。本当にいいのか? このままで」
「良いわよ。どうせ言っても、誰も信じないでしょ」
まぁ、たしかにそれはそうだ。俺が何言ったって勘違い三人衆は誰一人信じちゃくれないなきっと。
じゃあせめて、俺くらいは信じてあげなきゃな。
「じゃあこれ、リディアの取り分な」
俺はリディアに金貨を四十枚渡した。
「えっ? ちょっと、どういう事よ?」
「だって生きて帰れたのはリディアのおかげだろ? 当然の分け前だよ」
「ふざけないで。アタシたち、パーティでしょ?
報酬は当然山分けよ」
リディアは四十枚の内、十五枚を無理矢理手に押し込んできた。
「じゃあね、また明日」
「あっ、おう。おいっ、リディアはマスターのとこ行かないのか?」
「……いい。疲れたから帰るわ」
疲れた? らしくないな。いつもなら『あんな魔法、何発撃っても平気よ!』とか言うのに。
リディアが去っていくのを見送った俺は、エリスちゃんに尋ねる。
「あれ? そういえば、マスターってどこにいるの?」
「えっと、今は多分自宅ですかね」
「自宅? ここに住んでるんじゃないのか」
「そんなわけないじゃないですか……
マスターの家は、ギルドを出て真っすぐ行った先の突き当たりにありますよ」
そんなわけないのか。俺の知ってるギルドマスターっていえば、みんなギルドの二階に住んでるんだけどな。
◆
──レグシア、ギルドマスターの家。
ここが、ギルドマスターの家か。俺は、門を開き、中へ入っていく。
でっけぇなぁー。うわっ、庭に噴水もあるのかよ。
……番犬とか、いないよな? マスターん家の庭で犬に噛み殺されるなんて、笑い話にしかならんぞ。
『グルルルルッ……』
ははは……お早いフラグ回収だこって……
恐る恐る唸り声のする方へ視線を向ける。あぁ、デカくて、黒くて、立派なドーベルマンですこと。
こ、怖くて見れない。ゆっくり、自然に通り過ぎよう。
『グルルルルッ!』
うぅっ、こっちに来てる気がするぅー。
玄関まで、遠いよぅ。怖いよぅ。
『バウッ!』
「ひぇっ!?」
──ガシッ!
番犬は、俺に馬乗りになってきた。前脚で動きを封じ、ハァハァとヨダレを顔に垂らしながら口は今にも噛みつきそうにギリギリと歯を鳴らす。
あ、マジで死んだかも。
「おぉ! ユージ! 来てたのか!」
こ、この声は、ギルドマスター……。早く、助けてくれ。
「マックスに懐かれるとは、流石だな。
こいつ、ダイノス以外には襲い掛かって大変なんだぞ?」
いやいや、どこが懐いてるの!? マックス君、今にも噛み付きそうな勢いだよ!? 多分、今日の食事くらいにしか思われてないよ!?
ってか、襲い掛かっていくならちゃんと鎖で繋いどけよ!
「た、助けて……」
「ハハハハッ! マックス! こっちへ来なさい!
そんなに戯れたら、ユージも困ってるだろ」
戯れてる? 絶対違うだろ!
あっ! コイツ、今プイってしやがった!
……帰りは絶対ダイノスと帰ろう。
◆
──ギルドマスターの家、客間。
客間へ案内されると、すでにダイノスがくつろぐように椅子に座っていた。
客間というよりも、ここで作戦会議だって出来そうな広さだな。
「おう! ユージ! お前、こっちに来てから話題に事欠かないな!」
……あんたらのせいだよ。
「全部たまたまだから、本当に」
「いいって、いいって! それより、聞かせてくれ! ダンジョンの話!」
「ダンジョンもなにも、今回は本当、リディアがいなかったら死んでたからな。凄いのはアイツだよ」
「リディア、ね……」
んっ? なんか雰囲気が変わったぞ?
「なぁ、ユージ」
「なに?」
「あの女には、気を付けろよ?」
「へっ?」
次話へ続く




