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第24話「この先、ボス部屋になります」


──レグシア近郊、謎のダンジョン地下2F。


 安全地帯の隅で、リディアはどこからともなく小さな鍋を取り出した。


「えっ、なにそれ」


「冒険者の必需品よ」


 そう言うと、彼女は手際よく火を起こし始める。

 杖の先から小さな火が生まれ、乾いた枝へと移る。

 パチパチと心地良い音が響き始めた。


「へぇ……」


 意外だ。てっきり料理なんて出来ないと思っていた。


「なによ、その顔」


「いや、もっとこう……魔法で全部燃やすタイプかと」


「アナタ、アタシをなんだと思ってるのよ」


 暴走魔法使い。そう答えたら殺されそうなので黙っておく。

 リディアは湧き水を鍋に入れると、革袋から干し肉を取り出した。


 さらに道中で拾っていたキノコや山菜を慣れた手付きで刻んでいく。


「お前、それいつの間に集めたんだ?」


「アナタがコウモリに悲鳴上げてた辺り」


「そんな前から!?」


 鍋の中で具材がコトコトと煮込まれていく。


 やがてダンジョンの冷たい空気の中に、肉と野菜の良い香りが広がった。


 ぐぅぅぅ……


 俺の腹が盛大に鳴る。


「ほら、出来たわよ」


 差し出された木の器には、湯気を立てるスープが入っていた。


 一口飲む。


「……うまっ」


 思わず声が漏れる。


 干し肉の旨味がしっかり出ていて、疲れた身体に染み渡る。


「でしょ?」


 リディアが少しだけ得意げに胸を張った。

 くそっ、なんか腹立つ。


「じゃあ、銅貨三枚ね」


「ホントに金取るのかよ!?」


「食材代、調理代、場所代込みよ。安い方でしょ」


「場所はダンジョンだろ!」


「細かい男は嫌われるわよ?」


 金取る女も大概だと思うぞ!? くそ、不味かったら文句言ってやりたいが、めちゃくちゃ美味かったからなんとも言えん。


 俺は、渋々銅貨三枚を渡す。


「ふふっ、毎度あり♪」


 まぁ実際、ギルドの飯屋に比べたら格安だしいいか。疲れ果てている俺は、先に休ませてもらうことにした。


「リディアは良いのか?」


「アタシはもうちょっと、火にあたってたいから。気にせず先に寝てちょうだい」


 じゃあお言葉に甘えて……ホントにここが安全地帯なのか不安はあるが、まぁリディアがいるから大丈夫だろう。

 目を閉じると、すぐに意識が遠くなっていった。



◆



 パチパチ、パチン……


 乾いた心地よい音が、静まり返った空間に響き渡る。俺は、薄っすらと目を開ける。

 リディアはまだ焚き火の前に座っていた。


 まだ寝ないのか? そんなに冒険が楽しかったのかな。不思議な子だ……


「ありがとね、ユージ」


 んっ? これは独り言なのか? もしかして、起きたの気付いた? どっちなんだ?


「アナタのお陰で、また冒険に行ける」


 ……独り言か。俺のお陰だなんて、俺はただビビってただけなのに。

 お礼を言うなら、こちらこそ、こんなへんてこなステータスの俺に付いてきてくれてありがとな。


 あと、その好戦的な性格をもう少し何とか──



◆



──翌朝。


 結局、朝までぐっすり寝てしまったようだ。今が朝かは、洞窟内だからいまいちよく分からんけども。


 リディアも……ちゃんと寝れたみたいだ。こうやって寝てる顔は可愛いんだがな。

 湧き水を一杯飲み、背伸びをする。やっぱり筋肉痛は無い。


「……若いって素晴らしい」


「う……ん、おはよ〜」


「おっ、起きたか。どう? ちゃんと寝れたか?」


「うーん、まぁまぁかな」


 眠たい目を擦りながら、リディアは準備を進める。


「さっ、行くわよ」


「あぁ、まだまだ先は長いのか?」


「いや、かなり魔素が濃くなってきてるから、そろそろ近いはずよ」


 おぉ、ようやくダンジョン攻略が終わりそうだ。

 しかし、魔素を感じられるって便利だな。もう少し魔力が上がれば分かるものなのか?


 魔核へ向けて出発した俺たちは、早速宝箱を見つける。今度は、道中にぽつんと置かれていた。


「あっ、宝箱ね……」


「よしっ、今度は俺が開けるよ」


「えっ、いいの?」


「大丈夫、大丈夫。どうせ空っぽだろ」


 俺が宝箱に近付くと、リディアはおもむろにカバンから回復薬を取り出し、手に握っている。

 んっ? なんかあった時のためか?

 えっ? なんかあるのか?


「怖いからやめろよ!」


「一応よっ! 一応!」


 ゴクリと喉を鳴らしながら、目を閉じて祈るような気持ちでゆっくりと宝箱を開ける。


 カチャッ──


 ……何もない? か? 俺は、ゆっくりと片目を開けた。


「……あっ、これは、ブレスレット?」


 宝箱には、金色に輝くブレスレットが入っていた。


「あら、高く売れそうね」


 これを売るなんてとんでもない! 某ゲームのワンシーンが脳裏に浮かぶ程、綺麗なブレスレットに目を奪われる。


「なぁ、これ、装備したらなんか効果あったりするのか?」


「さぁ? 鑑定のスキルがあれば分かると思うけど……街に戻ったら調べてもらいましょ」


 鑑定士なんているのか。いいなぁ、鑑定士。めっちゃ平和な職業じゃん。

 ブレスレットをカバンに押し込み、再び魔核を目指す。


 そして──


「なんだ? この扉……」


「着いたわね。この奥に魔核があるわ」


 物々しい扉だな。今まで分かれ道とか階段ばっかりだから、一目で“何かある”って分かるぞ。


「準備はいい? いよいよボス戦よ」


「あぁ、ってボス戦!? 魔核壊すだけじゃないのか!?」


「魔核をこのダンジョンで一番強い魔物、ボスが守ってるのよ」


「そんなの、聞いてないぞ!?」


「ちゃんと伝えたわよ! ……ボソッと」


「ボソッと、じゃねぇよ! しっかり伝えろよ!」




 次話へ続く

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