第20話「薬草ハンター死す」
──レグシア、街道。
「いい加減にしてよね!」
「なんだよ! パーティ結成はお前から持ちかけた話だろ!?」
俺とリディアは口論をしながら、街道をギルドへ向け歩いていた。カバンには採取した上薬草と魔力草がパンパンに詰まっている。
あれから一週間。俺は宣言通り毎日薬草採取へ出かけている。
「冗談かと思ってたら、本当に毎日毎日飽きもせず薬草採取ばっかり……」
「しょうがないだろ? 薬草ハンターなんだから」
「何よそれ! 私は冒険者なの! 冒険がしたいのよ!」
「やってるじゃん! 今日だってちゃんと森に行ったじゃねぇか!」
「あんなの冒険じゃない! 昨日に至っては街外れの林の中で採取して終わったじゃない。街すら出てないのよ? 大体、なんであんな所に上薬草が生えてるの!? 意味分かんない!」
「知らねぇよ!」
薬草採取三日目くらいから、リディアはずっとこんな感じだ。でもな、この一週間で稼いだ金は金貨二枚だ。それも薬草採取で、だぞ?
二人で山分けしても十分な稼ぎだ。俺はこのまま稼ぎ続けて、この街に家を建てて、畑でもしながら薬草を採って生活するんだ。
嫌なら、パーティは解散だ……。
今日だってカバンに薬草がパンパンに詰まってる。これが俺の天職なんだよ!
◆
──レグシア、冒険者ギルド。
「えっ? たったこれだけ? 何かの間違いだよな!?」
受け取った薬草の代金を見て俺は驚愕した。その額はなんと、銅貨五十枚。
「またまたー。エリスちゃんも冗談がキツイって。これ、上薬草と魔力草だよ?」
「はい、間違いありません」
いやいやいやいや、昨日まで普通の金額だったじゃん! こんなの、薬草と変わんないよ。
「……なんで?」
「それが、本来市場に出回る量の何十倍も流通しちゃって、価格が暴落してるんです」
「えっ?」
「ユージさん、回復薬の材料ってご存知ですか?」
「それは……薬草だろ? でも、俺が採ってるのは上薬草だぞ?」
「そうです。そして、上薬草から作られた上級回復薬を百倍に薄めた物は、回復薬になります」
「へっ?」
「一般的な冒険者たちは、価格が安く、ある程度の傷なら回復する回復薬しか買いません」
「それって……でも! エイルさんなら、あの時だってあんなに喜んでたのに!」
「そのエイルさんに、昨日薬草を持っていったら、なんて言われたと思います?」
えっ……。
『……またですか?』
そんな……。
「上級回復薬どころか、回復薬も、向こう三年分は在庫があります。今、薬草採取の依頼は、ギルド創設以来初めて外されてるんです」
や、や、やりすぎたぁぁぁぁぁぁっ!!
ということは、これから三年間は、薬草で食っていけても、家を建てるなんて夢のまた夢。
終わった……俺の薬草ハンターとしての道は、ここで途絶えてしまった……。
「あら、どうするの? 薬草ハンターさん?」
リディア、その不敵な笑みをやめろ。女性を殴りたくなったのは、アルミシアに続いて二人目だぞ。
しかし、本当にどうしようか。
もう明日からは薬草採取に行っても意味がないぞ……。
「あの、エリスちゃん。採取系の依頼って他にはないの?」
「ちょっと、アナタまた懲りずに採取に行く気なの!? いいから、討伐に行くわよ!」
リディアはそう言うと、依頼ボードから紙を千切ってカウンターに叩きつけた。
「これっ! お願い!」
「はっ、はい! 依頼を受理しました」
一体なんの討伐に──ゴ、ゴブリン!?
「リディア、ちょっと!」
俺はリディアの服を引っ張り、カウンターを離れる。
「なぁ、討伐なんて無理だよ。俺のステータス、知ってるだろ?」
「大丈夫よ。ゴブリンなんて、私の魔法があれば大したことないって」
「そりゃあお前はそうかもしれないけど、俺は攻撃受けたら間違いなく死ぬぞ?」
「私が守るから! もう採取は飽きたの。ねっ?」
「……絶対、守れよ?」
ゴブリン討伐に出かけることになってしまった。
リディアは、最後まで嫌がる俺を引っ張るようにしてギルドをあとにする。
◆
──レグシア近郊、森の中。
「はぁ……」
「ちょっと、溜め息やめてって言ってるじゃない」
そりゃあ、溜め息だって出るだろ。あーあ、ちょっと可愛いからって、なんでこんな好戦的な魔法使いとパーティ組んじゃったんだろ。
このまま、これから先も討伐ばっかりに行く気かなぁ。どうしたもんかな。
「ユージ、ねぇ、ユージってば!」
「んっ? どうした?」
「何をさっきからぶつぶつ言ってるの? ほら、あそこ見て」
リディアが指差す方向に視線を送ると、ゴブリンが群れを成して密集している。
「えっ、あんなにいんの?」
「依頼内容は、ゴブリンの集落を壊滅させる。
Dランクの簡単な依頼よ」
「簡単って、そりゃリディアにとってはそうかもしれないけど……って、そういえば、リディアって冒険者ランクなに?」
「えっ? いまさら?」
あれ? 聞いちゃまずかった? いやいや、ステータスならまだしも。
「……Eランク」
「えっ?」
「だから、Eランクよ」
「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「……なによ?」
「だってこの依頼、Dランクって、受けれるの?」
「一つ上までは受けれる。それに、アナタがBランクだからどのみち大丈夫よ」
何が大丈夫なんだよ。少なくともダイノス並の、Bランク以上かと思ってたのに、Eランク!?
そもそも、この依頼達成すら怪しくなって来たぞ?
下手したら二人とも──死ぬ!?
「こんなの──詐欺だ!!」
「はぁ!? なんですって!?」
次話へ続く




