第19話「魔力枯渇症」
──レグシア、冒険者ギルド。
エイルとリディアは、謎の病の治療薬を作りに出ていった。
リディア、やっぱり凄いやつだったんだな。
「それにしても、ユージさん。よくあんなに大量の上薬草と魔力草を持ってましたね」
……きた。エリスちゃんからの一言。
「ほら、俺、薬草採取に行ってたじゃん。
そこでたまたま見つけてさ」
「いやいや、あんな量がたまたま手に入るわけないですよ!」
そんなの知らねぇよ! 俺は君からもらった地図を頼りに探しただけなんだから!
「この地図のここ、エリスちゃんが丸印書いてる森の中で普通に見つけたぞ? むしろ、普通の薬草は一枚も見つかってないし」
「えっ、そんなはずは……」
「どれ、見せてみろ──たしかに、この森に上薬草があるなんて、俺も知らないな」
ダイノス。んっ? なにこれ? 俺、何か疑われてる!?
「ユージ、お前まさか……」
えっ? えっ?
「レア素材探知のスキル持ちか?」
……なにそれ。そんな凄いスキルあるの?
てか驚かすなよ。なんか変な疑いかけられたかと思ったわ。やっぱり、ダイノスはダイノスか。
「そんなんじゃないって。本当、たまたま群生地を引き当てただけなんだって」
「あのな、ユージ。普通上薬草ってのは、薬師が丹精込めて育てるものなんだ。魔力草だってそうだ。
魔素が高い山奥でしか発見報告がないんだぞ?」
「えっ、マジ?」
「俺も野生で群生地が見つかるなんて、聞いたことないな。凄いな、まるで薬草ハンターじゃないか」
「えっ? ギルドマスター、今なんて?」
「まるで薬草ハンターだって言ったんだ。
気に触ったなら謝るよ」
「いえいえ、そんなんじゃないです」
はい、言質とったあぁぁぁぁっ!
今、ギルドマスター言ったな? 言ったよな?
ここに今、薬草ハンターが爆誕しました! もう俺は、薬草採取しか依頼を受けないぞ!
「私も、長年ギルドの受付嬢をやってきたけど、薬草採取の依頼で上薬草を採ってきた人なんて、初めてです。しかも、魔力草まで」
おぉ、みんなが俺の薬草ハンターを後押ししてくれているようだ……。
「ちなみに、上薬草と魔力草って高く買い取ってもらえるの?」
「はい。さっき見た量と質なら、どちらも銀貨五枚はくだらないと思います」
「えっ? そんなにもらえるのか?」
「それほど貴重な素材なんですよ。ユージさんは、もっと自分の規格外に自覚を持つべきです」
自覚か。まぁたしかに、これも運の数値を爆上げしたおかげなんだろうな。
規格外の薬草ハンター。いい二つ名じゃないか。
そう呼ばれる日まで、薬草採取に勤しむとしよう。
「まぁ、なんにせよユージのお陰で街は救われそうだ。ありがとうな」
「マスター、お礼なんていいですよ」
あとは、エイルとリディアが頑張ってくれることを祈るばかりだ。
◆
──二時間後。
「治療薬が完成しました!」
冒険者ギルドに、エイルとリディアが戻ってきた。どうやら、薬が完成したようだ。
「よっしゃあ! マスター!」
「あぁ! 急いで届けてくれ! ありがとうエイル! そしてリディアも。協力感謝する!」
治療薬を受け取るやいなや、ダイノスは勢いよく飛び出していった。
「ふーっ、なんとかなったわね」
「お疲れ、リディア。すげー大活躍だな」
俺は、リディアを労うように、声をかけた。
「……大活躍なら、ユージ、アナタの方よ」
「いやいや、俺のはたまたまだけど、リディアはちゃんと実力で……」
「ふふっ」
「……なんだよ」
「なんでもない」
何の笑いだよ、微笑みやがって。
俺とリディアが話していると、エイルがゆっくりとこちらに近付いてきた。
「ユージさん、アナタのお陰で助かりました。
改めてお礼をさせてください。本当にありがとうございました!」
エイルが深々とお辞儀をし、握手を求めてきた。
うわぁ、長くて細い、綺麗な手だなぁ。あぁ、絶妙な柔らかさも備えているとは。
ヤバい、好きになっちゃいそうだ。
「そういえば、その病気って結局何なんだ?」
俺がそう尋ねると、エイルの顔から笑みが消えた。
「病名は『魔力枯渇症』。最近になって各地で報告され始めた病気です」
「魔力が減る病気?」
「えぇ。最初は倦怠感や発熱程度だけど、進行すると身体が動かなくなります。重症者は意識を失うこともあります」
えっ? 魔力が減るだけで? 俺、魔力5しかないんだが?
「回復薬が効かないのは?」
「回復薬は傷を治す薬だから。これは体内の魔力そのものが失われる病気なんです」
なるほど。だから魔力草が必要だったのか。
「原因は分かってるの?」
ギルドマスターが腕を組む。
「それが分からんのだ。王都でも調査中らしい」
エイルも小さく頷く。
「まるで、誰かに魔力を吸い取られているみたいだ、と言う学者もいるけれど……今のところは仮説に過ぎないってところです」
「ふーん」
難しい話はよく分からんな。
でもまぁ、治療薬ができたから良しとするか。
俺は、疲れた身体を癒すべく、宿屋に向かおうとした。いや、待て。今回報酬は?
「なぁ、エリスちゃん。俺、今回依頼失敗になるのか?」
「えっ?」
「だって薬草。結局採れたのは上薬草と魔力草だし、もう物もないから」
「今回は俺から特別報酬だ。受け取れ」
ギルドマスターが指を弾いて金貨を一枚飛ばしてきた。えっ、こんなにいいの?
俺は、軽くスキップをしながら宿屋に向かった。
「ねぇ、ユージ。ちょっと」
冒険者ギルドを出たところで、リディアに声をかけられる。
「アナタ、私とパーティを組まない?」
「えっ? ……えぇっ!? 良いのか俺で」
「アナタはみんなを欺いてるわけじゃないって分かったし。何より、アナタといたら面白そうだから」
「……なんだそれ」
「アナタの豪運が何を成し遂げるのか。近くで見届けたいの! 拒否権はないんだからね!」
「分かった分かった。じゃあ改めて、よろしくな」
俺が差し出した手に、リディアが応える。
「えぇ、よろしく。早速、明日から何する?
森? 山? 洞窟なんかもいいわね」
「んっ? 何言ってんだ? 明日からは毎日薬草採取だぞ?」
「えっ?」
「えっ?」
次話へ続く




