第18話「英雄の帰還」
──レグシア近郊、森の中。
俺は、偶然見つけた上薬草の群生地? にて大量に薬草の上位種を手に入れ、その上薬草より価値の高い魔力草も見つけた。
しかも、これまた大量に。
「こんだけあれば、大丈夫だよ……な?」
「さぁ? 肝心の薬草は、まったく見つかってないけど」
なんだよ、冷たいな。まぁ、きっと大丈夫だ。
上薬草なんだし、薬草何枚分も価値があるだろ。大は小を兼ねるってやつだ。
「よし、暗くなる前に帰ろう」
「そうね。夜は魔物が活性化するし、早めに切り上げましょ」
俺たちは、レグシアへ向けて帰宅の途につく。
道中出会う魔物はリディアに全て丸投げ。あぁ、ダイノスとの旅を思い出すなぁ。
あの時は、避けるように戦闘しなかったけど、今回は事情を知ってるリディアだから、大手を振って任せられる。
「ユージも少しは手伝いなさいよ! そんなんじゃいつまでたってもレベル上がらないわよ?」
「えっ? レベルって魔物倒せば良いんじゃないの?」
リディアは完全に呆れ顔をしている。
「……アナタ本当に何も知らないのね。
いい? 経験値は、魔物を倒した人、ダメージを与えた人の順で貰えるの。
何もしなかったら、当然ゼロよ」
「えっ、でも死んだ魔物から出る魔素を吸収してレベルが上がるんじゃないのか?」
「なんでそれは知ってて、他を知らないの?」
だって、アルミシアが……女神様が言ってたからな。
「んっ? それと、貰える経験値の仕組みがよく分からんな。説明してくれよ」
「それは……ごめんなさい。アタシもさっき言った事以上は、分からない。小さい頃から、そういうものって教えられたから」
「そうか。まぁ、戦わずしてレベルは上がらないってことか」
「そんなところよ。あっ、ほら、レグシアが見えてきたよ。あー、お腹空いた! 早く報告してご飯食べましょ」
「そうだな。リディア、魔法連発してたから疲れただろ?」
「……あのねぇ、あんな下級魔法のファイアボール、何発撃っても平気よ! 失礼ね」
マジ? あのファイアボールとかいう魔法、ほぼ無限に撃てるの? もしかして、リディアって凄い魔法使いなのか?
「なぁ、そういえば、リディアのステータス聞いてなかったな」
「レディのステータスを聞くなんて、アナタ、マナーがなってないわよ」
なんでだよ!? スリーサイズとか年齢と一緒の括りなのか? ステータスってそうなのか?
「魔力値だけでも……」
「──変態っ!」
お前、全部覗いたくせに!
◆
──レグシア、冒険者ギルド。
俺たちは、街に戻ってくると早速ギルドに入っていく。鮮度が命の薬草だ。早いとこ納品しないとな。
中に入ると、ダイノス、エリス、ギルドマスターの三人がなにやら話をしている。勘違い三人衆そろい踏みだ。
「一体、何事だ?」
近付いていくと、会話が聞こえてきた。
「それで? 被害の状況は?」
「まだ、なんとも。今のところ医者に運ばれてるのは、十人。みんな、回復薬や魔法が効果ないみたいだ」
「現在、街の薬屋に在庫情報を問い合わせてます。近隣諸国には、応援依頼済みです」
おいおい、ただ事じゃなさそうだぞ……。
「ダイノス、どうかしたのか?」
「おぉ、ユージか。それがな、レグシアに変な流行り病が起きててな。街の人が次々と倒れてるんだ」
マジかよ。この世界の文明がどれほど進んでるか分からんが、医学はそこまで発展してないのか?
「回復薬は?」
「全然ダメだ。アレは外傷にこそよく効くが、体内で何か起きてる場合、効果が無いんだよ……」
回復薬は万能ではないんだな。んっ? ゲームには万能薬があるじゃないか。
「万能薬みたいなやつは無いのか?」
「万能薬? なんだそれ。そんな都合がいい薬なんてあるわけないだろ」
なんてこった。RPGはご都合設計だったのか。
バンッ──!!
その時、勢いよくギルドの扉が開かれた。
そこに立っていたのは、耳が横に長い綺麗な肌の男。いや、女? どっちとも取れる美しい人だ。
アレは、きっとエルフだ。間違いない。本で見たまんまじゃないか。
「ギルドマスター!!」
「おぉ、エイル! 来てくれたか。どうだ?
薬は都合つきそうか?」
「それが、ダメ元で上級回復薬と魔力回復薬を混ぜて作った薬を使ったら、症状が改善されました……!」
「良かった! 早速病人のとこに行くぞ!」
おぉ、流石エルフだ。何がかは分からんが、エルフってなんか頭良さそうだし。
「なぁ、リディア。あのエルフの人、エイルさんだっけ? あの人何者なの?」
俺は、ぼそりと耳元で囁くように尋ねる。
「あぁ、そっかユージは初めて会うんだ。
あの人は、薬師のエイルよ。この街で一番大きな薬屋の店主」
薬師! カッコいいな。
「マスター。それが……薬に必要な素材が足りません」
「何っ!? どういう事だ?」
「この薬には、上薬草と魔力草が大量に必要でして……。ウチの在庫では、一人分に満たない量しか作れません」
「そんな……それなら、街中の薬屋に確認しろ!
在庫を片っ端から集めるぞ!」
「マスター! もうすでに、確認済みです。どこもそんな高級素材は持ってませんでした……」
んー。これは……。
「ねぇ、ユージ。ねぇってば!」
リディアが俺の袖を引っ張ってくる。
何が言いたいかは分かるさ……。はぁ……。
「あのー、これで足りませんか?」
俺はカバンから、大量に採取した上薬草と魔力草を取り出しエイルに見せた。
「──なっ!? こんな大量に、一体どこで!?
いや、今はそんな事どうでもいい! すみません、この薬草を譲ってくれないか?」
「それはもちろん大丈夫です」
「これだけあれば、足りる! 早速作成に取りかかります! んっ? リディア! 良いところに。手伝ってくれ! 人手が足りん!」
「えぇ、もちろんよ」
リディア、薬学の知識があるって言ってたもんな。やっぱり凄ぇな。
そして、俺が抱えていた薬草をエイルへ渡す。近くで見ても惚れ惚れする美しさだ。
エイルはリディアに薬草を渡し、再び俺の元へ。
今度は思いっ切り抱きしめてきた。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
うわー、めっっっちゃ良い匂い!!
次話へ続く




