第17話「薬草ハンター」
──レグシア近郊、森の中。
「どうして、ステータスのこと知ってんの?」
俺は、内心ドキドキしながら、リディアへ尋ねた。ステータスの事を誰かに話したりしていない。
あんな貧弱へろへろステータス恥ずかしいからな。
「実は、アタシは相手のステータスを覗けるスキルがあるの。スキル名は『ステータス看破』よ」
なんと、相手のステータスが見れないこの世界において、唯一といっていいスキルだ。
それじゃあ、リディアからみんなに説明してもらえば、夢のスローライフ生活に……!
「そうだったのか」
「えっ? 驚かないの?」
「えっ? そんなに珍しいスキルなの?」
驚かないの? って聞いてきたってことは、やっぱり珍しいスキルなのか。
「まだ、同じスキル持ちには会ったことないわね」
「なぁ、申し訳ないんだけど、リディアにお願いがあるんだ」
「……えっ、お願い?」
「あぁ、そのスキルで見た俺のステータス……」
「うん」
「みんなに教えてくれないか?」
「……えっ? 黙ってて、じゃなくて?」
なんで黙ってて、なんだよ。せっかくのチャンスなのに。
「このチャン──いや、これでみんなの誤解を解いて、静かに暮らしたいんだ」
「……やっぱり、アナタ変ね」
は? 変なのは俺のステータスだけで、俺自体はごくごく普通だろ?
何言ってんだよ、まったく。
「ダメ……かな?」
「ダメもなにも。アナタはそれでいいの?」
「もちろん。このまま誤解され続けたら、いつか命を落としちゃうからな」
「そう、考えとく」
「えっ? なんでだよ。ただ、みんなに言うだけだろ?」
「あのねぇ、伝えたとしてみんな信じると思う?
人のステータスは見れないのがこの世界の常識。それを見れるアタシは、そのことを知られたくないの」
「だったら、なんで俺に言ったんだ?」
リディアは、少しだけ視線を落とし、なにか考えてるみたいだ。
そして、再び視線を俺に戻す。
「本当は、アナタを疑ってた。もしかしたら、みんなを騙して成り上がろうとしてるんじゃないかって」
「……うん」
「でも、アナタは全て正直に答えた。いくらでも嘘で誤魔化せるのに……」
「俺は、初めからずっと嘘なんてついてない」
「アタシね、ステータスは見れるけど、スキルまでは分からないの」
んっ?
「もしかしてアナタ、隠蔽のスキル持ってる?」
なにそれ? 隠蔽ってステータスを? 何のために最弱にするの?
「いや、それがあったとして、何のために最弱ステータスにするんだよ」
「そうよね、意味分かんないものね。
だから、アタシはアナタ、ユージの言葉を信じてみようって思った」
そうか。いや、でもこれは大いなる一歩だぞ。
今まで誰一人信じてくれなかったけど、リディアだけは、本当の俺を知っている。
言えない理由も分かる。「アタシ、他人のステータス見れますよ」なんて言ったら、みんな気持ち悪くて近寄らなくなるよな。
「まぁ、みんなの誤解はゆっくり解いていくよ。
それより、本当の自分を知ってくれてる人が一人でもいてくれるっていいな!」
「それは、アタシも同じ。ユージだけがアタシの秘密を知ってる」
なんだか気恥ずかしくなってきたぞ。お互いの秘密だなんて、恋愛してるみたいだ。
その秘密の内容は、結構エグいけど。
「まぁ、なんだ。薬草、探そうか」
「それもそうね。じゃあ、改めてお願いします」
「あぁ、こちらこそよろしく」
俺は、リディアと固く握手を交わす。
これで、お互いを牽制しあうのは無しだ。
「そんなことよりユージ、アナタの運、5062って何の冗談なの?」
「えっ? やっぱりおかしい、よな……」
「おかしいどころじゃないわよ。運じゃなくても、1000超えてる人に会ったことない……」
「ははは……」
「その豪運を使って薬草さがしなさいよ」
「それが、この“運”は、使うとかそんなんじゃないんだよ。使えるなら、とっくに使ってる」
本当に、使いかたを誰か教えてください。
ガサッ──
話をしながら適当に草むらをかき分けると、薬草があった。
「あっ、あった」
なんか少し見本と違うような。でもまぁ薬草だろう。
たしか質が良ければ買い取り額に上乗せだったよな。質とはすなわち鮮度と見た!
こんなもの、根っこから抜けば鮮度保てるだろ。
「あっ! ユージそれ──」
ズボッ──
「えっ? なんか言った?」
「それ、薬草じゃなくて、“上薬草”よ。
下手に千切ったりしたら、すぐに枯れるの」
「えーっ! 早く言ってくれよ!」
「本で読んだ採取方法は、根元から引き抜く……」
「えっ?」
俺は手に持ってる上薬草を見つめる。枯れることもなく、引き抜く前と同じ状態だ。
「け、結果オーライ、だな」
「呆れた豪運ね……」
その後も、見つかる薬草は上薬草ばかり。ここはあれか? 上薬草の群生地なのか?
「なぁ。上薬草ってやつは、こんなに沢山見つかるものなのか?」
「アタシに聞かないでよ! 知識はあるけど、採取以外なの!」
根っこごと抜いてるから、かさばるんだよな。
んっ? これは、また新しいな。
「なぁリディア。また変な薬草? 見つけたぞ」
「は? どんだけ豪運なのよ。ってそれ! 魔力草じゃない!」
「魔力草? 上薬草より凄いのか?」
「……普通に買えば、上薬草の倍はかかるわね。
魔力も回復出来る、アタシたち魔法使いには必須級の回復薬の材料よ」
マジかよ。これも引き抜くのかな? でも、先端が綺麗な色してるな。
プチッ
「採取方法は、先端を千切ってから、葉っぱを──って、もうやってるのね」
「あっ、ごめん。綺麗な葉先だなって」
「……アナタ本当は分かってるんじゃないの?」
次話へ続く




