第16話「謎の魔法使い」
──最初の街、レグシア。
俺は、薬草採取をするべく、門へ向かって歩いている。目的地は、レグシア近郊の森。
そして、隣には謎の美女。ローブととんがり帽子のよく似合う、おそらく魔法使いだ。
「なんでまた、俺なんだ?」
「噂の竜騎士様の腕を見てみたくて」
……ギルドマスター、あんたの罪は重いぞ。
俺のせいじゃないからな。違うって言ってるのに、みんな勝手に勘違いしてるだけだ。
「それな、みんな勘違いしてるだけだから。
俺は、竜騎士でも何でもないよ?」
「そうなの? じゃあワイバーンに乗ってたのは、ただの噂だったってこと?」
「いや、たしかに乗ってはいたけど。
でもあれは、成り行きでっていうか、たまたまだよ」
「ふーん」
あれ? がっかりされてる? えっ、なに?
この、何もしてないのにフラれた感じ。
「じゃあ、ジャイアントボアは? 倒したんでしょ?」
「あれも、偶然なんだよ。俺はそんな大した実力ないんだって」
「そうなんだ……なんか、聞いてた話と違うね」
あれー? 完全にテンション下がってないか?
でもまぁ、これが事実だし、このまま彼女がみんなの誤解を解いてくれればいいか。
「そういえば、名前聞いてなかったな」
「あっ、ごめんなさい。私は、リディア=ハートクラン。リディアでいいわ」
「分かった、リディア。俺は──」
「ユージでしょ? もう、この街であなたのこと知らない人いないから」
ですよねー。
「ははは……」
「ところで、ユージは剣が得意なの?」
「ん? 剣どころか戦闘はからっきしだぞ?」
「えっ?」
「えっ?」
何をそんなに驚いてるんだ? 全部偶然ってさっき言ったじゃないか。
「そういうリディアはどうなんだ? 何が得意なんだ?」
「見ての通り、魔法使いよ。火属性と、風属性を扱えるわ」
「二種類も! 凄いなぁ」
二種類使えるのがどれほど凄いかは分からんが、やっぱり魔法使いか! ついに魔法を見れるんだ!
「じゃあ、魔物が出たらよろしくな」
「えっ?」
「えっ?」
◆
──レグシア近郊、森の中。
「……だぁ! どこにも薬草なんて生えてないじゃないか!」
森の中へ入って一時間は経ったか。探しても探しても、薬草なんて生えていない。
「なぁ、リディア。薬草ってこんなに見つからないものなのか?」
「知らないわよ。薬草探しなんて初めてだし」
そうか。彼女も強者なんだな。薬草探しなんてFランク依頼、受けたことないんだ。
これじゃあ、「この辺りに生えてるわよ」なんてアドバイスは期待しない方が良さそうだ。
「魔法使いなのに、薬草の知識がないのか?」
「失礼ね。薬学はちゃんと学んだわ。薬草から、回復薬だって作れる」
「ただ、生えてる場所は、勉強してなかっただけよ」
「なるほど。基礎は大事だって教訓を得たな」
「この……! ……まぁ、否定はしないわ。
薬草は採取するものじゃなくて買うものって思ってたのは事実よ」
さぁ、肝心のリディアがこれじゃあ、地道に頑張るしかないぞ。
正直、運の力でガンガン見つかるって思って、俺もちゃんと聞いてこなかったからな。
ガサッ──。
「うわあぁぁっ! む、虫!?」
草むらを掻き分けると、なんとそこには巨大なイモ虫がいた。両手でギリギリ抱えられるかどうかというデカさに、俺の腰は一瞬で抜けていた。
「あっ、た、立てない……」
腰を抜かして動けない俺に向けて、イモ虫は口から吐いた糸を絡ませてくる。
「あっ、この! どうせ動けないのに!」
ネバネバする糸が絡まり、もぞもぞと動くしかない俺。力で振り解こうにも、筋力が足りない。
えっ、リディア? 何してるの?
視線を向けた先。リディアは杖を構え、先端に光が集まっている。
杖の先に、小さな火球が生まれた。
「──ファイアボール」
リディアが杖を振った次の瞬間。
火球は一直線に飛び出し、空中に赤い軌跡を刻む。
轟音。
火球は巨大イモ虫に命中し、炎が弾けた。
イモ虫の断末魔が耳に残る。
「……おぉ。こ、これが魔法……」
流石は魔法使いだ。よし、そのままこの糸も取ってくれ。動けん。
「……あなた、本当にステータスオール5なのね」
んっ? いやいや、何言ってるんだ? 5じゃなくて3だぞ? オール3。
舐めてもらっちゃあ困るよ。
えっ? 5? マジかよ。ステータス画面!
開いた画面を確認すると、なんとレベルがまた上がっていた。いつだ?
あっ、もしかしてワイバーンの巣で偶然倒したあのデッカい鳥か?
もうオール5になったのか。一般的な成人男性の数値を今度教えてもらおう。こりゃ、もしかするともしかするぞ!
「ちょっと! 聞いてるの?」
「あぁ、ごめん。この間までオール3だったから確認してた」
「オール3って……なんで生きてられるの?」
失敬だな! 蟻に対しても同じことが言えるか?
まったく……んっ? いや、待て待て。
「……なんで俺のステータス知ってんの?」
次話へ続く




