第15話「初めてのおつかい」
──レグシア、冒険者ギルド。
冒険者ギルドに入ると、どうやらギルドマスターが、訪れる人みんなに俺の話をしていたようだ。
朝から町中が俺の話題で持ちきりだったのは、アンタのせいだったわけだな。
「ちょっと、ギルドマスター? あんまりみんなに言うのはやめてくださいよ……」
「おぉっ! 噂をすれば、ユージじゃないか!」
その言葉はな、たまたま話してた時に俺が来たら言うものだぞ。一日中、来た人とっ捕まえて話して回ってんじゃねぇか。
「今日は何を倒しに行くんだ? オークか? それとも獅子か?」
「行くわけないじゃないですか! 買い被りすぎですよ……」
いや、本当に。てかオークは分かるけど、獅子ってなんだよ。ライオンか? ライオンの魔物なんて倒せるわけないだろ。
ニヤニヤしながらこっちを見てくるギルドマスターを軽く無視しながら、依頼ボードへと向かう。
お目当ての依頼があればいいが……。
「おっ、あったあった」
『Fランク依頼、薬草採取。薬草二十枚の納品。
質、採取量で上乗せ有。依頼料銅貨五十枚』
これだよ、これ。今日が俺の“薬草ハンター”としての第一歩だ。
依頼書を剥がして、受付へ持っていく。周りが俺の依頼書を覗き込み、「えっ?」という怪訝な顔をしているが、そんなのは無視。
「エリスちゃん、これをお願いします」
「はいっ! ユージさんの初仕事ですね!
えっと……薬草採取……えっ!? 薬草採取!?」
エリスちゃん、声が大きいよ。ほら、見間違いじゃなかったって、周りもザワザワしてるじゃん。
「あのぉ、何かの間違いですよね?」
「いやいや、薬草採取で! お願いします!」
「Bランクの冒険者が薬草採取なんて初めて聞きましたよ!?」
「いいんです! ほら、俺初めての仕事だから。
何事も最初が肝心って言うでしょ? ねっ?」
「はぁ。分かりました。それでは依頼を受理します」
なんで納得いってないみたいな顔してるんだよ。
本人がいいって言ってんだから。
んっ? でも、薬草採取っていっても俺薬草なんて見たことないぞ?
「ところで、薬草ってどんなやつなの?
っていうか、どこに生えてるの?」
エリスちゃんの口があんぐり開いてる。開いた口が塞がらないって本当にあるんだな。
多分、またなにか変なこと言ったんだな、俺。
「……奥に採取済みの薬草があるんで、取ってきますね。それと、周辺の地図も渡します」
「おぉっ、助かるよ。ありがとう」
エリスちゃんが椅子から飛び降りて、トトトトッと走っていく。うん、可愛いなぁ。
「おい、ユージ。本当に薬草採取に行くのか?」
ギルドマスターが話しかけてきた。なんだよ、なんか文句あんのか?
「はい。薬草採取だって立派な仕事でしょ?
俺は、仕事に上も下も無いと思ってます」
言った。言ってやったぜ。ほら、見てみろよ。周りも、ウンウンって頷いてるじゃないか。
これで、もう誰も俺の“薬草ハンター”への道を邪魔できないぞ。
「ぐっ! うんまぁ、なんというか、良い心がけだ」
「はい。頑張ります!」
ふっふっふ。ハーッハッハッハ! 作戦成功──だ。これで明日以降も延々と薬草採取ばっかりして「あれ? アイツもしかして大したことないんじゃないか?」ってなるに違いない。
密かに闘志を燃やしていると、エリスちゃんが薬草と地図を持って走ってきた。
「これです! どうぞ。薬草も、持っていって大丈夫です」
「えっ、いいの? ありがとう」
薬草は、どこにでも生えてそうな見た目だな。これは見本がないと危なかった。
そして地図は、うん。だいたい分かるぞ。
ただ、印が付いてるのは、森の中か……魔物、出るよなきっと。
まぁ、Fランクだし、なんとかなるか。
「じゃあ、行ってきます」
「はいっ! いってらっしゃい! お気をつけて!」
俺は地図を握り締め、颯爽と歩き出す。いいね、仕事はこうでなきゃ。
振り返ると、エリスちゃんはまだ手を振っている。そういうとこがポイント高いんだぞ。
「んっ?」
あそこのテーブルに座ってる女性、とんがり帽子にローブって、まさか。アレが魔法使いか?
こっちに来てまだ魔法見てないんだよな。一度見てみたいな。
わっ! こっち見た。やっぱり、この世界の女性はみんな綺麗だなぁ。
あんな可愛らしい顔で、えげつない炎とか出すのかな。カッコいい。
冒険者ギルドを出たところで、もう一度地図を確認する。
やっぱり、森に行くしかないか。めっちゃ丸印が濃ゆく書かれてるから、ここにいっぱい生えてるんだろうな。
「あのっ!」
声に驚き顔を上げると、先ほどの魔法使い(仮)が追いかけてきていた。
「えっ、なんですか?」
「私も、一緒に行っていいですか?」
……えっ? 異世界で逆ナンですか?
えっ? こんな可愛い子に?
次話へ続く




