第14話「条件未達成」
──最初の街、レグシア近郊。
「さぁ、説明してもらおうか」
ギルドマスターが馬から降り、こちらへ近付いてくる。
「いや、そんなの後でいくらでも説明しますから!
ダイノスを医者に連れていきましょう!」
「それには及ばん。まったく、ワイバーン討伐に回復薬も持っていかんとは……」
そう言うと、ギルドマスターはカバンから小瓶を取り出し、ダイノスへ差し出す。
「ははっ、すまねぇマスター。ちょっとドジっちまった」
ダイノスは小瓶を受け取ると、一気に飲み干した。すると、身体から淡い光が漏れ出す。
俺の身体にかかっていた体重が一気に軽くなった。
「……ふぅ」
「えっ? もう大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫だ。流れた血は戻らないが、傷はほら、元通りだ!」
回復薬、すげえぇぇ! 傷なんて無かったみたいに綺麗さっぱりじゃないか!
俺は、ダイノスの腕をまじまじと見つめていた。
「なんだ、回復薬も知らないってか?」
「あっ、ははは……」
「そんなもの、必要ないってことか。流石──」
「そ、それより! 説明を! ねっ?」
ギルドマスターに視線を移す。よく見たら、後ろにはぞろぞろと兵士の姿も続いていた。
「説明も何も、なぁ! マスターも見てたんだろ? ワイバーンに乗って、ここまで飛んできてたのを」
「あぁ、ワイバーン襲撃の報告を受けて兵士を連れて来てみたら、そのワイバーンからお前たちが降りているのをな」
ギルドマスターが俺に一歩、また一歩近付いてくる。
「……お前は、一体何者なんだ?」
……怖えぇぇよぉぉ。そんなに睨みつけるなって。
「ぼ、僕はただの田舎者ですよ?」
そう言うと、ギルドマスターは「ふっ」っと鼻で笑った。
なんだか、嫌な予感がする。
「討伐するどころか、まさか手懐けて帰ってくるとは……」
ギルドマスター……。最後の砦のあなたもそんな……。
お願い、それ以上は何も言わないで。
「マスター! 結果はどうなんだ?」
ダイノスも、それ以上何も聞くな。
「これで認めん訳にはいかんだろう。負けたよダイノス。ユージは今をもって、Bランク冒険者とする!」
「うおぉぉぉっ! やったなユージ!」
痛い、痛いよ。そんなに強く抱きしめるなって。
あぁ、これで晴れて俺のスローライフ生活は終わりを告げるんだな。
「ふふふっ、そんなの当然といったところか。
流石は、ダイノスが惚れ込むだけあるな」
ダメだった。ギルドマスターよ、アンタも所詮ダイノスと一緒か。
この世界の住人はこんなのしかいないのか?
はっ! マズイ、今回は目撃者が多いぞ。後ろの兵士たちは……あぁ、尊敬の眼差しー……。
マズイ、非常にマズイぞ。万が一ギルドマスターもこうなってしまった場合の「Bランクなのに街のお仕事して偉いわねぇ」作戦が使えない!
ジャイアントボア討伐に続き、ワイバーン懐柔なんて、噂になることこの上ない! 低ランク依頼なんて選べる状況じゃなくなってしまう!
あぁ! そもそも受付嬢がエリスちゃんだ。そんな依頼を受けさせてくれる訳がない。
「おい、ダイノス。ユージは一体どうしたんだ?
さっきから黙ってぶつぶつ呟いてるが」
「あぁ、コイツはたまにこうなるんだ。気にしないでくれ」
◆
──翌朝。最初の街レグシア、宿屋。
俺は、異世界に来て初めての宿屋、そしてベッドでグッスリと疲れを癒した。
地球に比べたら、ベッドはまぁ固かったが、初日の野宿に比べれば全然いい。
ただ一つ、不安があるとすれば、宿屋の店主が俺の事を知っていた事だ。
第一声が「聞いたよ! アンタ伝説の竜騎士様なんだって?」ときた。
何をどう勘違いしたら、竜騎士になんてなるんだよ。絶対あの場にいた兵士たちだ。
あれだけ誰にも言わないでってお願いしたのに。
人の口には戸を建てられない。なんて昔の人はよく言ったもんだ。
外に出るのが不安でしょうがないが、ギルドには毎日顔を出せってギルドマスターに言われたから、行くしかないよなぁ。
◆
──最初の街レグシア。冒険者ギルド。
案の定だよ……。街行く人に声をかけられ、俺の両手には「これサービスだ! 食べてくれ!」と渡された食べ物を抱えていた。
中に入った瞬間、みんなの視線が集まる。
えっ、もしかしてもう、知らない人いないんじゃないの?
「あっ、ギルドマスター。いたのか」
カウンターで気さくに女性たちに話しかけているギルドマスターを見つけた。
「それでな、そのユージがワイバーンを──」
「えー、スゴーイ」
「ねー、カッコいいよねー」
お前かぁぁぁぁぁっ!
次話へ続く




