第10話「認定試験」
──最初の街レグシア、冒険者ギルド。
俺は一人黙って様子を見守っている。何のかって? ダイノスとギルドマスターの口論をだ。
「何度言ったら分かるんだダイノス!
お前にそんな事を決める権限はない!」
「分かってねぇなぁ、マスターは!
ユージみたいな強者をFランクスタートなんて、ありえねぇだろ!」
ダイノス、何をそんなに熱くなってるんだ。マスターもそう言ってるんだし、もういいじゃないか。
何だったら、このまま冒険者登録を拒否してくれてもいいんだよ? 俺としては好都合だ。
「おい、ユージ! お前もなんとか言ったらどうだ!?」
俺に振るなよ。いや、待てよ? 俺がここで「だったらもういいぜ」って拒否して出ていけば、冒険者にならずに済むのか?
その足で、商業ギルドへ行けばいいじゃないか。せっかく出会えたダイノスには悪いが、このままじゃ地獄への扉が開いてしまうからな。
よし、言うぞ──。
「お待たせしました! こちら引き取り代金と、登録証になります!」
俺が口を開こうとした時、エリスちゃんがお盆に金色に輝く硬貨とカードを載せて持ってきた。
椅子に座るというより、椅子に乗る方が近いその動作が、また可愛いな……。
「ええと、こちらが素材の引き取り代金になります」
手渡された金貨は五枚。価値は分からないが、綺麗な色に目を奪われる。
「ごめんなさい。この金貨ってどのくらいの価値があるんですか?」
エリスちゃんは、口をあんぐりと開けて驚いていたが、何かを悟って説明してくれた。
きっと、人の少ない危険な地域に住んでいたからお金を知らないんだ。みたいに思ったんだろうな。
聞けば、金貨一枚あれば宿屋に半年は泊まれるそうだ。おおよそ二十万円程の価値か。
そして金貨の他に、銀貨、銅貨もあって、それぞれ一万円、百円って感じだな。
そして、俺の手元には金貨が五枚。一夜にして百万円を手に入れてしまったようなものだ。
まさに、冒険者ドリームってやつだな。俺にとっては悪夢でしかないが。
「あの……ところであの二人は何を言い争ってるんですか?」
「いいのいいの、気にしないで。ところで、これが登録証?」
「え、あぁ、はい。こちらが登録証になります。
ごめんなさい、これにはFランクって書かれてますが、ユージさんならきっとCランク、いや、Bランクに相応しいのに……」
いや、いいよ? Fランクで十分。エリスちゃんもダイノスと同じく、謎の病に冒されてしまったようだ。
「一応、一つ上のランクまで依頼は受けられるので、Eランクまでは行けます。Eランクには討伐依頼もありますので」
結ッッッ構です! Eランクだったら、スライムとか序盤の敵って感じだろうが、なんせこの俺は、そんな雑魚モンスターにも勝てる要素が無いからな。
俺は万年薬草採取をして暮らし、いつの日か「薬草ハンターのユージ」と呼ばれるんだ、きっと。
まぁ、それでもいいよ。地道に筋トレでもして、人並みになるようにはするさ。
「あそこにあるのは、依頼ボードかなんかか?」
俺は、ギルドの壁に据え付けられた紙の貼られた板を指差す。
「えぇ、そうですよ」
「ちょっと見てこようかな」
「えっ? いいんですか?」
エリスちゃんはそう言うと、いまだに言い争いを続ける二人をチラッと見る。
あの二人は放っておいたほうがいいに決まってる。下手に割って入ると、話がどう転ぶか分からないからな。
俺はこの、Fランクの登録証さえあれば大丈夫。
もう、恐ろしい魔物討伐には行かなくていい“安全パス”を手に入れたようなものだ。
何か言われても「だって俺はFランクだし」で乗り切れる。
「いいの、いいの。好きにさせとけばいいよ」
そう言うと俺は、依頼ボードへと向かった。エリスちゃんの「はわわ……」みたいな表情が気になったが。まさかまた、何か変な誤解を与えたのか?
気にしてもしょうがない。俺は、依頼ボードを確認する。
薬草採取は……あった、これだな。
銅貨五十枚か。まぁたしかに、そんなものか。
一日中採取して、日給五千円。生活出来るかギリギリだな。
ちなみにEランクの討伐依頼は……まぁ一応ね、一応。スライム討伐銀貨一枚、ゴブリン討伐銀貨一枚。討伐数で多少値は上がるみたいだな。
うーん、なんとも世知辛い。一撃で百万円を手に入れた後だから、どうしても少なく感じるなぁ。
「おい! ユージ! 話がまとまったぞ!」
ダイノスが声をかけてきた。やっとか、随分長いこと話してたな。
「それで? どうなったんだ? 俺はFランクでも別に──」
「今から俺と、ワイバーンを倒しに行くぞ!」
ちゃんと割って入ればよかった!!
次話へ続く




