表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/18

第十二話 俺の番だ!


 神殿の空気が変わった。


 綾人がそう感じ始めたのは数日前からだった。


 廊下を歩く神官達の表情が暗く、食堂の会話も少ない。


 その代わりに会議室の使用回数は増え、そして孤児院にも影響が出始めていた。


「おやつ減るの?」


 小さな女の子が首を傾げ、孤児院の担当神官は困ったように笑った。


「まだ決まったわけじゃないよ」


「ほんと?」


「本当です」


 だがその笑顔は少し引きつっていた。


 綾人は遠くからそれを見ていた。


「……」


 嫌な感じだった。


 まだ何かが無くなったわけじゃないが確実に何かが変わり始めている。


「おーい」


 ルークがやってくる。


「何見てんだ?」


「別に」


 綾人は視線を逸らした。


「孤児院?」


「まぁな」


 ルークも同じ方向を見て、それから少しだけ黙る。


「神殿不要論だっけか」


「らしいな」


「神託掲示板だっけ?そんな影響あるんだな」


 綾人は返事をしなかった。


 むしろ思った以上にある。


 前世でもそうだった。


 世論は広がり噂も広がる。


 正しい情報も間違った情報も見境なく、そしてデタラメに広がる。


「面倒だよなぁ」


 ルークが頭を掻く。


「神殿が無くなったら困る奴いっぱいいるだろ」


「そうだな」


「孤児院とかさ」


「そうだな」


 綾人は短く答えた。


 そしてその日の午後だった。


 中庭ではいつものように子供達が遊んでいる。


 そしてその中心にはセレスティアがいた。


「捕まえました!」


「きゃー!」


 子供達が笑い、セレスティアも笑う。


「……」


 そして綾人は気付いた。


 少しだけ、本当に少しだけ無理をして笑っている。


 どこか疲れているとそう感じた。


「どうした?」


 ルークが聞く。


「いや」


 綾人は首を振った。


「別に」


 ただ何となく気になった。

 


 その日の夜、食堂。


「なぁ」


 ルークが言った。


「俺決めたわ」


「何を」


「神託掲示板やる」


 綾人のスプーンが止まる。


「は?」


「神殿不要論」


 ルークは真面目な顔だった。


「ムカつくんだよ」


「働いてる人達見てるし聖女様も困ってるし」


「だから俺が戦う」


「やめとけって」


 綾人はルークの肩に手をおき、哀れんだ顔で視線を送る。


「何でだよ」


「お前には向いてないってやつだ」


「やってみなきゃ分かんねぇだろ」


 ルークは立ち上がる。


「見てろよ、俺が論破してやる」


「絶対無理だ」


「失礼だな」


 ルークは笑った。


 そしてどこか楽しそうだった。



 翌日だった。


「終わった」


 ルークが死んでいた。


 食堂の机に突っ伏している。


「だから言っただろ」


「意味分かんねぇ」


 ルークが顔を上げる。


「三人くらい相手したら七人になってな」


「うん」


「そしたら十五人になった」


「うん」


「マジで何でだよ」


 綾人は少し笑った。


「掲示板だからな」


「理不尽すぎるだろ」


 ルークは再び机へ沈んだ。


「俺向いてないわ」


「知ってる」


「もっと早く言え」


「言った」


 綾人はパンを齧りながら、ふと周囲を見る。


 神官達も元気がなく、状況は良くなっていない。


 むしろ悪化しているようにも感じた。


「なぁ」


 ルークが小さく呟く。


「神殿大丈夫かな」


 綾人は答えなかった。



 その夜、自室。


 綾人はベッドへ腰掛けていた。


 窓の外では静かに風が吹いている。


 机の上には、最近読み始めた神学書や歴史書が二冊。


「……」


 ルークは負け神殿は苦しい。


 そして聖女も疲れているが自分には関係ない。


 そう決めたはずでもう辞めたはずだった。


 レスバなんてくだらないものは。


「……」


 綾人は目を閉じる。


 孤児院の子供達、ルークや神官達。


 そして少しだけ寂しそうだったセレスティアの笑顔。


「……はぁ」


 そう小さく呟きながら引き出しを開くと、そこには魔道端末があった。


 ずっと触っていないし触るつもりもなかった。


「……」


 画面はまだ暗いく、綾人はそれを見つめる。


 そしてその夜はただただ見つめていた。


感想お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ