共鳴する戦場
メアリーは素早く銃をリロードする。
その指先の動きは滑らかで、まるでずっと使い慣れていたみたい
その間にもトゥトゥは地面を蹴る。
瓦礫が弾け飛ぶ。
白い小さな身体が一直線に突っ込み、拳を振り上げた。
トゥトゥ「いくよぉ♡」
空気を裂く速度。
けれどメアリーも動く。
銃口が跳ね上がり、迷いなく引き金が引かれる。
乾いた銃声が更地へ響き渡った。
ララメは息を呑み、蒼柄は腹を押さえたまま顔を上げる。
もう誰も止められない。
これは最後の決戦だ。
少なくとも、もう一方的ではない。
メアリーの放つ腐敗弾とトゥトゥの拳が真正面からぶつかり合うたび、更地になった地面が砕けて瓦礫が吹き飛ぶ。
圧倒的な身体能力を持つトゥトゥが優勢なのは変わらない。
それでも、もう最初みたいに一方的ではなかった。
メアリーは避ける。撃つ。腐食を広げる。その動きには、どこか“ヤグ”の面影が残っている。
ララメはその姿を見ながら、ゆっくり立ち上がろうとした。
_けれど途中で動きが止まる。
不安だった。
メアリーみたいに、大切な人が力を貸してくれる保証なんてどこにもない。
もう違うと言えど
自分は狩として生きてきた
家族を捨てた
たくさん傷つけてきた
迷って
揺らいで
それでも最後まで答えを出し切れなかった。
そんな自分を、霣羅はどう見ているんだろう。
大切な人を奪われたことに気づき
目の前で兄を守り、失い…
それでも最後まで戦場で立ち続けたあの人は
こんな自分へ力を貸してくれるんだろうか。
…もう、見限られているんじゃないか。
ララメ「…ごめん、ごめんね、霣羅……」
ララメはその場へしゃがみ込む。外れた腕を押さえながら、震える声を零した。
ララメ「今だけ……メアリーちゃんを助けさせて……」
__返事はない。
聞こえるはずもない。
遠くで響く戦闘音だけが、更地へ虚しく響いている。
数秒間の沈黙が流れる。
やっぱり、駄目だった。
そう思った瞬間だった。
ララメの周囲へ、ふわりと黒炎みたいな影が漂い始める。
ララメ「……え……」
揺らめく黒い炎を見間違えるはずがない。それは霣羅の黒炎によく似た気配だった。
まるで、「行け」と背中を押すみたいに、静かにララメの周囲を巡っている。
ララメ「……霣羅……?」
名前を呼んでも返事はない。
ただ、周囲を漂う黒炎だけが静かに揺れていた。
けれどその炎が大きくなるたび、ララメは背中を押されるみたいな感覚を覚える。
立て。
進め。
迷うな。
言葉なんて聞こえないのに、そんな意思だけが胸へ流れ込んでくる。
ララメ「霣羅っ!!」
勢いよく立ち上がった瞬間、呼応するみたいに黒炎が一気に膨れ上がり、ララメの身体を包み込んだ。
吹き荒れる熱風と桃色の電光が混ざり合い、更地になった地面へ黒い焦げ跡を刻んでいく。
やがて炎が晴れる。
その時のララメの手には一振りの大きな刀が握られていた。
霣羅のものではない。それでも形状や雰囲気はどこかよく似ている。
刀身へ纏うのはララメ自身の桃色の電光。
そして、その隙間を縫うみたいに黒炎が揺らめいていた。
ララメの姿も変わっている。纏う空気も、視線も、立ち姿も、どこか霣羅を思わせる姿へ変化していた。
ララメは握った刀を見つめ、小さく笑う。
ララメ「……ありがと、霣羅」
持ち慣れないはずの刀を構える。それでも不思議と恐怖はなかった。黒炎が背中を支えてくれている。
ララメはそのまま顔を上げ、戦場の中心を睨みつける。
そこではメアリーが腐敗弾を撃ちながら、トゥトゥの猛攻を必死に捌き続けていた。
ララメ「メアリーちゃん、助けに行くから!!」
次の瞬間、黒炎と電光を纏ったララメが地面を蹴る。
踏み込んだ瓦礫が砕け、桃色と黒色の残光を引きながら一直線に戦場へ飛び込んでいった。




