新たなる来訪者
読んでくれてありがとうございます
感謝感激雨あられ
翌朝。
何事もなかったみたいに朝日は差し込む。
薄いカーテンがふわりと揺れて、キッチンからはバターの匂い。
ハウル「よーし!今日のスープは自信作だぞー!」
レイズ「うおー腹減ったー!」
ルガ「兄さん朝から声でかい」
シロクラ「パン焦げる焦げる!ハウルさん火強いっすって!」
ソラ「ニアちゃん、アマネちゃん、こっちおいで〜」
ニア「パンー!」
アマネ「はやくはやくー!」
いつも通り。
本当にいつも通りの朝。笑い声があって、足音があって、誰かが誰かの名前を呼んでる。
角灯とシュアは窓際でのんびり日向ぼっこ。來菟は鏡の前で前髪を整え。綯緒はテーブルを拭きながら小さくため息。
綯緒「騒がしい……」
でももう昨日ほど嫌そうじゃない。
そのとき。ピンポーンと館中にチャイムが響いた。
全員ぴたっと止まる。
レイズ「ん?」
シロクラ「客?」
ハウル「お、朝から珍しいな!」
エプロンのままのんきに玄関へ向かうハウル。
エイル「あなた、ちゃんと様子見てから開けてね?」
ハウル「だいじょーぶだいじょーぶ!」(尚だいたいそれで何とかなってきた男)
がちゃっと扉を開ける。外朝の光の中に知らない四人。
空気がほんの少しだけ違う。旅人…にしては。なんというか温度が低い。先頭の男が、無表情で一歩前に出る。
ヤグ「……俺はヤグ」
ぶっきらぼう。視線だけ鋭い。
ヤグ「旅の者だ」
ハウル「おん」
ヤグ「ここに置け」
ハウル「置け?」
言い方。言い方よ。
すると横から、ふわっと割り込む影。
メアリー「言い方が冷たいのです〜!」
ぺこーっと大げさに頭を下げる。
メアリー「泊まらせてくださいなのです〜!おねがいなのです〜!」
声やたら可愛い。
ヤグ「……だからそれが言えねぇんだよ」
メアリー「社交性ゼロ先輩なのです」
その後ろで、元気な声。
ララメ「こぉんにーちはー!!」
ぶんぶん手を振る。朝日より明るい。
ララメ「ちょっと旅しててさ!泊まるとこ探してるの!大人数だとダメかな?」
最後尾。霣羅。
霣羅「………」
微動だにしない。置物みたいに立ってる。なんなら空見てる。
ハウル「……」
1人にだけハウルの視線が行く。
そして後ろの3人を見る。謎の装備に武器の気配……まぁ普通の旅人ではない。
……ないけど。
ハウル「おぉ?」
にこっ。いつもの顔。
ハウル「いいぞ!」
即答。
ヤグ「……は?」
ハウル「部屋あるし!朝飯もまだある!腹減ってるだろ?」
ララメ「え、いいの!?」
ハウル「もちろん!」
親指ぐっ!
ハウル「うちは来る者拒まずだからな!」
ヤグ「……」
メアリー「……」
ララメ「……」
霣羅「……」
四人ほんの一瞬だけ固まる。あまりにあっさりしててあまりに無防備。
まるで最初から「敵」なんて概念がないみたいに。
メアリー「変な人なのです」
ヤグ「…警戒心ゼロかよ」
ララメ「なんか、いい人そうだね?」
霣羅「…………あたたかい」
小さく、呟く。
ハウル「ほらほら入った入った!」
背中をぽんぽん押される。半ば強制的に館の中へ。扉が閉まる。
カチャンと扉の音がやけに重い。
殲滅対象の建物に、標的の中心に。狩人たちが自分の足で入っていった。
館の奥から。
ニア「あ!あたらしいひとー!」
アマネ「おきゃくさんー!」
ソラ「いらっしゃいませ!」
シロクラ「また増えたのかよこの家族!」
レイズ「父さんそいつら誰ー!?」
騒がしい声、笑い声、あったかい匂い。ヤグはわずかに眉をひそめる。
ヤグ「なんだここ」
メアリー「生活音、いっぱいなのです」
ララメ「明るー!」
霣羅は、静かに床を見る。
霣羅「……光が、眩しい」
昨日まで自分たちがいた場所にはなかったもの。
自分たちが壊すはずの場所がこんなにも家みたいだなんて。
昼頃。
館の食堂の大きなテーブル。
湯気の立つスープ、焼きたてのパン、ジャム、卵料理。いつもより椅子が多い。いつもよりちょっとだけ賑やか。
ハウル「ほらほら遠慮すんな!座れ座れ!」
ララメ「わー!おいしそー!」
メアリー「いい匂いなのです〜」
ヤグ「……(落ち着かねぇ……)」
霣羅「……」
四人が座った瞬間、近くにどかっと座るシロクラ。
シロクラ「で、お前がヤグ?」
ヤグ「……は?」
シロクラ「名前聞いた。なんか強そうだなお前!」
じーーー。めちゃくちゃ近い距離。
ヤグ「近ぇ」
シロクラ「ん、腰に何持ってんの?見せて見せて」
ヤグ「触んな」
シロクラ「えーいいじゃん減るもんじゃねぇし」
ひょいっとヤグの肩に腕回す。距離ゼロ。ヤグのこめかみがぴく。
ヤグ「…馴れ馴れしい」
シロクラ「ノリ悪っ。友達いねぇだろ」
ヤグ「初対面で言うことか?」
シロクラ「俺シロクラ!よろしくな!」
ヤグ「聞いてねぇ」
シロクラ「ヤグってさ、喧嘩強い?」
ヤグ「…まぁな」
シロクラ「マジ?じゃあ今度勝負しよーぜ!」
ヤグ「は?」
シロクラ「爆発ありで」
ヤグ「は???」
シロクラ「俺、爆発できるんだよな」
ヤグ「……」
シロクラ「ドーンって」
ヤグ「……」
シロクラ「楽しいぞ?」
ヤグ「頭おかしいだろお前」
シロクラ「よく言われる!」
ヤグ「……(なんだこいつ……クソだる……)」
ピキピキと額の血管が浮く。本気の嫌悪。
その少し離れた席。窓際。角灯と、霣羅。
……沈黙。めちゃくちゃ沈黙。
角灯「……」
霣羅「……」
二人ともデカい。二人とも静か。空気が止まってる。
シュア「…角灯、しゃべらないの?」
角灯「どう話せばいいか……」
霣羅「……」
シュア、霣羅の顔をじっと見る。
シュア「ぼーっとしてる、?」
霣羅「よく言われる」
角灯「…俺もだ」
霣羅「……そうか」
また沈黙。
シュア「似てるね」
角灯「…あぁ」
霣羅「…………楽だ」
それだけなのになんかもう成立してる。
同類の空気。喋らなくてもいい組
テーブルの端。
ララメの前にちっちゃい二人。
ニア「ピンク!かわいい!」
ララメ「でしょー!?これ能力の色なんだー!」
指先でぱちっと小さなピンクの電気。
アマネ「わぁぁぁ!!」
ニア「すごーい!」
ララメ「触る?」
ニア「いいの!?」
ララメ「ビリビリしちゃうぞー!」
ニア「やだー!」
ララメ「えっへへー!」
アマネ「もぉー!」
三人できゃっきゃしてる。完全に同じ年齢層で可愛い
ララメ「ねぇねぇ鬼ごっこしよ!」
ニア「するー!」
アマネ「まけないよー!」
ララメ「よーし私手加減しないよー!」
ヤグ「(……任務前に何してんだあいつ……)」
イライラ。上昇中
キッチン近くにはソラとメアリーのふわふわ組。
ソラ「ここ、どうですか?」
メアリー「わぁ!いい匂いなのです」
ソラ「良かったです!居心地いいですよね、!」
メアリー「ソラさん、やさしいのです」
ソラ「え、そ、そんな……」
メアリーはじーっと見つめる。
にこにこと、でもほんの少しだけ暗い。
メアリー「ソラさんは」
ソラ「?」
メアリー「大事な人、います?」
ソラ「えっ」
どきっと一瞬視線が泳ぎ、向こうで騒いでるニアとアマネを見る。
ソラ「……います、ね」
小さく。はにかむ。
メアリー「……ふふ」
くるくる回りながら。
メアリー「失くしたら、こわれちゃいそうなのです」
ソラ「……?」
メアリー「なんでもないのです!」
にこーっといつもの笑顔。でもその言葉だけほんの少し冷たかった。
食堂は今日も騒がしい。笑い声やパンをちぎる音。誰かが誰かを呼ぶ声。狩も館の住人もまだ同じテーブルで笑ってる。
……いずれ
この距離が。銃口と爆炎の距離になるなんて。
到着してしまいました。
館の空気は賑やかになりましたが、少しずつ不穏がまじり、平和がポロポロと崩れていきそうです




