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館護戦線  作者:
館護戦線
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5/76

不穏な夜に、忍び寄る者達

キャラの名前が難しいですね

霣羅→あめら

でございます

外の色が入ってこないかのような薄暗い建物内。分厚い雲か結界か、それともただの立地か。


理由は分からないがこの建物の中はいつも薄暗い。


コツコツと靴音だけが廊下に響く。生活音はなく、ただ任務と武器と最低限の会話だけ。


それが狩の本部。

古びたソファにだらしなく足を投げ出している男が一人。


ヤグ「……はぁ」


飴をくわえたまま、天井を睨んでいる。足元には分解された銃。


慣れた手つきでカチャカチャと組み直す。無機質な音。


ヤグ「朝っぱらから整備とか……だっる……」


ぼそっと悪態。そこへふわっと。重力を無視したみたいに、紫の影が横に浮かぶ。


紫の髪色とエプロンに目隠しをした透けた体。言うまでもなくメアリー。


メアリー「先輩またサボってるのです?」


ヤグ「サボってねぇよ整備中だボケ幽霊」


メアリー「でも目が死んでるのです!」


ヤグ「生きてたことねぇよ最初から」


メアリー「今日、誰か死ぬのです?」


ヤグ「……さぁな」


まるで「今日雨降るかな?」くらいの軽さ。

それがこの場所の会話。


感覚がどこかズレてる。廊下の奥からぱたぱた軽い足音。


ララメ「おっはよーーー!!!」


勢いよくドアが開く。薄暗い空間に似合わない太陽みたいな声。


ララメ「見て見て!パンまだあった!」


ヤグ「朝から元気すぎんだろお前……」


メアリー「ララメさんは電池式なのです?」


ララメ「ちがうよ!?自然エネルギー!能力だってば!」


ララメはソファにぽすっと座って、足ぶらぶら。


ララメ「今日って任務あるの?」


ヤグ「知らん。司令官次第」


ララメ「やだなー昨日も重かったし」


メアリー「いっぱい壊れましたのです!」


ララメ「言い方ぁ!?」


明るく笑う。この子だけ空気が違う。この本部に似つかわしくない。

だからいないとたぶんもっと暗くなる。


その時。スタスタと一定の足音。全員自然に黙る。重いドアが開き、入ってきたのは、


霣羅。無表情。無言。無音。置物みたいに静かな男性


両方の目元を隠す目隠しも、纏うかのような和服も、何故か霣羅が着ると凄い無機質に感じる。


ヤグ「なんだ置物が動いたぞ」


霣羅「失礼だ」


ララメ「おはよー霣羅!」


霣羅「…あぁ」


ワンテンポ遅れて返事。手には数枚の紙

任務書。


霣羅「……司令官から」


ヤグ「明日のやつだろ。めんどくせぇ」


慣れてる。慣れてるけど好きじゃない

銃をガチャッと組み上げて


ヤグ「で、蒼柄とトゥトゥは?」


霣羅「…ここには居なかった」


ヤグ「は、めんどくさ…あいつらいつも居ねぇよな」


ララメ「…大人数だよね〜6人って」


さっきの明るさが少しだけ曇る。でもそれでもララメは笑う。


ララメ「まぁ!任務だもんね!やるしかないよね!ひっさしぶりに大きいビリビリやっちゃうぞーー!!!」


誰に言ってるのか分からない言葉。メアリーが、くるっと宙返り。


メアリー「楽しい遠足なのです!」


ヤグ「どこがだよ……」


霣羅「……出発は今夜だ」


ヤグ「なんでだよ」


メアリー「遠いらしいのです!」


ララメ「用意してくる〜!!!」


狩達は知らない。その頃同じ空の下で、あの館では優しい空気と笑い声が満ちているなんて。知る必要が無い。


数分後の薄暗い作戦室。

蛍光灯は点いているのに、白く濁っているみたいで光が床まで届かない。


机の上には地図とララメのお菓子。ララメは椅子に座ってぶんぶん足を揺らしていた。


ララメ「ねー霣羅ー!」


霣羅「……」


ララメ「ねーってばー」


霣羅「……何だ」


三拍遅れて返事。ララメはにこっと笑う。


ララメ「今回さ!住民何人くらいかな?」


霣羅「………不明」


ララメ「多そう?」


霣羅「…多い」


ララメ「そっか!じゃあさっさと終わらせてさー、帰ってきたらさ」


霣羅「……」


ララメ「パン食べよ!昨日のやつ、おいしかったし」


霣羅「…覚えていたのか」


ララメ「当たり前じゃん?ごはん大事!」


えへへと笑う。この場所で「おいしかった」なんて言葉を使うのはたぶんララメだけだ。

霣羅は少しだけ顔を落とす。


霣羅「…補給食で十分だ」


ララメ「やだ!味気ない!」


霣羅「栄養は同じだ」


ララメ「違うよ」


即答。


ララメ「おいしいって思えるかどうかが大事なんだよ」


霣羅「…………」


ララメ「霣羅も今度ちゃんと食べよ。一緒に」


霣羅「…時間が合えば」


ララメ「やった!」


無邪気に喜ぶララメの横で霣羅はただ腕を組んで見守るだけだった


廊下の隅、ヤグは壁にもたれて座り込み、さっきとは違う銃を分解している。


カチャカチャと同じ音の繰り返し。ふわっと影が横に浮いた。


メアリー「先輩♡」


ヤグ「なんだ幽霊」


メアリー「メアリーなのです」


ヤグ「変わんねぇだろ」


メアリーはくるっと逆さまになる。


メアリー「怖くないのです?」


ヤグ「何が」


メアリー「今回の任務」


ヤグは飴を噛み砕いて


ヤグ「俺が怖気付くと思うか?」


メアリー「死ぬかもなのですー!」


ヤグ「いつもだろ」


メアリー「それはそうなのです」


ヤグ「明日死ぬか今日死ぬかの違いだ。考えるだけ損。それに、既に命がねェお前が気にする事じゃねぇだろ」


メアリー「先輩、死んだらどうするのです」


ヤグ「どうもしねぇよ。終わりだろ」


メアリー「理想の死に際は!」


ヤグ「んなもんねぇよ」


メアリー「つまらないのです」


ヤグ「ロマン求めんな」


メアリー「じゃあ、生きて帰ったら?」


ヤグ「……さぁな」


メアリー「疲れたって言ってくるみパン買うのです?」


ヤグ「それくらいだな」


メアリー「ちっちゃいのです」


ヤグ「うるせぇ」


メアリー「ふふっ、じゃあわたくしも付き添うのです!」


ヤグ「……勝手にしろ」


狩の本部だって温度が0ではない。暖かさはないといえど、会話は確かにあった。


ヤグは手を動かして再びカチャカチャと銃を弄る。同じ音に同じ暗さ、だけどほんの少しだけ隣に誰かがいる音が混ざっていた。





夜の館、窓の明かりがぽつぽつ灯っていて、遠くから見ると小さな船みたいだった。


虫の声に木々のざわめき。それから、食器を片付ける音が、かすかに中から漏れてくる。


来客用のテラス階段に二つの影。綯緒は手すりにもたれて立っている。


來菟は一段下に座って空を見上げていた。

やけに星が多い綺麗な夜


來菟「はぁーーーー!」


背中を反らして、大きく息を吐く。


來菟「今日さ」


綯緒「……」


來菟「意味わかんねーくらい騒がしかったな」


綯緒「お前が一番うるさい」


來菟「ひどっ」


へらっと笑う。

でも、その声は昼より少し小さい。館の中から笑い声が聞こえるたび、來菟はちらっとそっちを見る。ちょっとだけ名残惜しそうに。


來菟「……なぁ」


綯緒「……」


來菟「俺ら、守れっかな」


夜風が吹く。木が揺れて葉が擦れる音。綯緒はすぐには答えない。ただ視線を館に向けたまま。


窓の向こうに誰かの影が横切る。ソラかハウルか、子供たちか。普通の家の普通の灯り。


來菟「っははw」


自分で笑う。


來菟「守れなかったら、俺死んじゃうかも」


軽口みたいに、冗談みたいに。でもちょっとだけ本音が混ざってる声。


綯緒「やめとけ」


短い否定。


來菟「えー」


綯緒「そういう言い方するな」


來菟はきょとんとする。


綯緒は視線を落とさず淡々と続ける。


綯緒「守れなかったら死ぬとか…安い覚悟みたいで気に入らん」


來菟「……」


綯緒「守れなかったら」


ほんの一瞬言葉を選ぶ間。


綯緒「その時は、もう一回奪い返すだけだ」


來菟「……」


綯緒「何度でも」


声は低いけど、妙に確信がある。

綯緒は能力の代償も、痛みも、全部込みで言ってる声。


來菟はしばらく黙ってから小さく笑う。


來菟「……あーあ」


綯緒「なんだ」


來菟「やっぱお前ズルいわ」


綯緒「何がだ」


來菟「そういうとこ。安心させる天才」


綯緒「してない」


來菟「してるっての」


立ち上がってぐっと背伸び。


來菟「よーし。じゃあ決めた」


綯緒「?」


來菟「全員守りてえ!」


綯緒「……」


來菟「館も、あいつらも、お前も」


ニッと笑う。いつもの自信満々な顔。


來菟「だって俺、超☆絶イケメンだし?」


綯緒「関係ないだろ」


來菟「関係ある。主人公属性だから」


綯緒「意味不明だ」


でも綯緒の口元が、ほんの少しだけ緩む。


來菟「帰ろーぜ。寒いし」


綯緒「ああ」


扉を開けると館の中の暖かい空気がふわっと流れてくる。

綯緒は小さく呟く。


綯緒「……守りたい、よな」


來菟「ん?」


綯緒「なんでもない」


その背中を押すように、灯りが揺れた。

「おかえり」と言っているみたいに。





同じ夜。同じ空の下。けれどそこには灯りがなかった。


月は雲に隠れ、地面は湿っている。足音だけが規則的に続いていた。


舗装されていない道を四つの影が進んでいく。


ヤグ「……っはぁ〜〜……」


盛大なため息。肩に銃。片手はポケット。やる気ゼロの歩き方。


ヤグ「遠すぎんだろ。なんだよこの距離、旅行かよ……」


ララメ「えー!夜の行軍ちょっとワクワクしない!?」


ヤグ「しねぇよ。足いてぇんだよ」


ララメだけやたら軽い足取りでぴょんぴょん先を歩いている。ほぼスキップ。


ララメ「久しぶりの大きい任務だしさー!なんかこう、ドカーン!って感じのやつでしょ!?」


ヤグ「テンションどうなってんだお前の脳みそ……」


その横に透けた影が腕に絡みつく。


メアリー「先輩〜♡」


ヤグ「うおっ」


いつの間にか隣にいる。ぴったり密着。メアリーが腕に抱きついてすりすりしてくる。


メアリー「つかれたのです」


ヤグ「テメェ体力の概念ねぇだろ」


メアリー「もう100時間くらい歩いた気分なのです」


ヤグ「盛るな」


振りほどくように早く歩く。


メアリー「おんぶ♡」


ヤグ「却下」


メアリー「ケチー!」


ヤグ「戦闘前に体力使わせんな幽霊」


メアリー「先輩は冷たいのです」


ヤグ「お前が甘えすぎなんだよ」


メアリー「……好き」


ヤグ「急に重いわ!?」


前方。霣羅が一定の速度で歩き続けている。ぶれない。音も最小限。まるで人形みたい。


ララメ「霣羅ー!眠くないのー!?」


霣羅「……問題ない」


ララメ「ほんと!?すご!」


霣羅「…目は半分閉じているが」


ララメ「寝てるじゃん!?」


ヤグ「歩きながら寝んな怖ぇよ……」


霣羅は空を見上げる。雲しかない夜。星も見えないはず


だが霣羅の異常なまでの視力では雲の向こうの星も見える。


霣羅「……明るいな」


ぽつり。


ララメ「ん?」


霣羅「…星がある」


ヤグ「夜だからな」


霣羅「……そうか」


会話終了。ララメが両手を後ろで組みながら振り返る。


ララメ「でもさー!」


ぱっと笑う。この暗闇でその笑顔だけやけに明るい。


ララメ「任務終わったらご褒美ほしくない?」


ヤグ「いらん」


メアリー「ほしいのです」


霣羅「…睡眠」


ララメ「えー!もっとこう楽しいやつ!」


ヤグ「仕事終わりに楽しいとかねぇよ。だいたい後味最悪だろいつも」


ララメ「えー」


ヤグは銃の重みを持ち直す。カチャッと小さな金属音。


ヤグ「今回の目標、館だっけか」


メアリー「人いっぱいらしいのです」


ヤグ「はぁ、めんど」


ララメ「そんな事言わないのー!」


ヤグ「疲れるし…後味悪ぃし妙に引きずる傷が着くこともある。いいとこと言ったら金払いくらいだろ」


メアリー「でも先輩ほぼいちばん強いのです」


ヤグ「嬉しくねぇ称号だな」


ララメ「私はド派手にいくよー!ビリビリ全開!」


ヤグ「建物ごと吹っ飛ばすなよ」


ララメ「えー?ダメ?」


ヤグ「巻き込まれんの俺らだからな」


そんないつも通りの軽口。ただの任務前の移動。特別な感情は誰も持っていない。


……まだ。

霣羅が静かに前を見つめる。


霣羅「到着まで、まだ少しある」


ヤグ「うわ最悪」


メアリー「先輩にまだ甘えていい時間いっぱいあるのです」


ヤグ「やめろ重い」


ララメ「よーし!競争しよ!」


ヤグ「すんな」


四人の影が闇に溶けていく。

遠い。まだ遠い。けれど確実に館の灯りに向かって、近づいている。


その頃

暖かい家の中では「おやすみ」の声や穏やかな寝息が静かに重なっていた。


誰も知らない。

その光に、もう狩人が歩いてきていることを。


分け方書き方載せ方がとても…

でも読んでくれてる人が一人でもいるのなら嬉しいです

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