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館護戦線  作者:
終幕のあとで
58/76

"勝負未満"

その圧倒的強者を前に、ララメは歯を食いしばり、蒼柄もふらつきながら立ち上がろうとするが身体がまともに動かない。


トゥトゥ「きーめた!」


明るい声


その瞬間白い髪がふわりと揺れ、華麗にスカートを靡かせたかと思えば__姿が消える。


ララメ「っ!?」


蒼柄「メアリーさん!!」


気づいた時にはもう遅かった。


メアリーの真後ろでトゥトゥが笑っている。メアリーが振り返るより速くその拳が振り抜かれた。


メアリー「――っ!!」


衝撃と共に身体が地面へ叩きつけられる。


そのままトゥトゥは片手でメアリーを押さえ込み、逃がさないように地面へ縫い付けた。


地面が砕け瓦礫が跳ねる。


トゥトゥ「捕まえた♡」


メアリー「……ぁ、っ……!」


幽体は本来なら触れられないはずの存在なのに、そんな理屈すらトゥトゥには関係ないみたいだった。


押さえつけられるたび、メアリーの輪郭がぼやけていく。


存在そのものが不安定になっていくように、身体の端がノイズみたいに揺らいでいた。


ララメ「メアリーちゃん!!」


ララメが電撃を放とうとした瞬間、トゥトゥがちらりと視線だけ向ける。


その笑顔に背筋が凍った。


トゥトゥ「動いたら、このまま壊しちゃうよ?」


メアリー「……や、め……っ」


押さえつけられたまま掠れた声が漏れる。


輪郭はさらに不安定になり、指先がノイズみたいにちらついていた。


トゥトゥはそんな様子を覗き込みながら、楽しそうに目を細める。


トゥトゥ「毒かこのまま力か、どっちでしにたい?」


メアリー「っ、いや……」


苦しそうに身を捩るもまるで動けない。


トゥトゥ「あー!もう死んじゃってるもんね〜!ごめんごめん!」


けらけらと笑う。

悪意すら感じないくらい、無邪気な声だった。

だからこそ恐ろしい。


ララメ「……っ、この……!!」


ララメが立ち上がろうとするも足に力が入らない。焦りだけが募っていく。

その時。


蒼柄「っ、性格が歪みすぎてますね…酷すぎますよ!!」


蒼柄が無理やり踏み込む。全身を纏うバグが激しく明滅する。


存在が崩れかけているのも構わず、一直線にトゥトゥへ突っ込む。


トゥトゥ「あは♡」


嬉しそうな声を発した次の瞬間、蒼柄の短刀が振り抜かれた。


鋭い音が響く。


トゥトゥは片手でメアリーを押さえ込んだまま、もう片方の腕だけで短刀を受け止めていた。


蒼柄「……っ!?」


トゥトゥ「やっぱアオ、戦う方が楽しいよ♡」


笑顔のまま蒼柄の腹へ膝蹴りが叩き込まれる。


蒼柄「がっ……あ"!?!」


身体が浮いてそのまま吹き飛ばされ、地面を転がった。


バグが一気に弾け、周囲の景色まで歪む。


ララメ「蒼柄くん!!」


トゥトゥはようやくメアリーから手を離し、ゆっくり立ち上がる。


スカートについた砂を軽く払って、にこりと笑った。


トゥトゥ「次、誰にしよっか♡」


トゥトゥ「アオは壊れかけだしー。じゃあララ!」


ララメ「っ!?」


名前を呼ばれた瞬間、ララメは反射的に能力を展開する。


桃色の電光が目の前で弾け、壁みたいに空間を埋め尽くした。


だがトゥトゥは止まらない上、むしろ笑っていた。


トゥトゥ「きれー♡」


次の瞬間白い影が雷光の中へ突っ込む。バチバチと電撃が身体を走っているのに、その勢いはまるで落ちない。


ララメ「なっ――」


トゥトゥは電光ごと踏み込み、そのまま上空から蹴りを振り落とした。


ララメは咄嗟に横へ飛ぶ。直撃は避けた。だが地面が砕け、爆風みたいな衝撃が身体を揺らす。


着地する暇もない。

トゥトゥは空中で身体を捻り追撃みたいにもう一度蹴りを放った。


見えた時にはもう遅かった。


ララメ「ぁ゛っ!!」


腕に衝撃が走る。

鈍い音と共に肩が外れ、腕が不自然な方向へ跳ねた。激痛が脳を焼く。


ララメは数メートル吹き飛ばされ、そのまま瓦礫へ叩きつけられる。


トゥトゥ「わ、避けたのすごーい♡」


楽しそうな声。に反しララメは息を詰まらせながら、動かない腕を押さえる。


痛く視界が滲む。


でも


ララメ「……っ、ぅ……」


これで済んだ。

そう思ってしまうくらい今の一撃は重かった。


もし直撃していたらなんて考えるだけで背筋が冷える。


痛い、本当に痛いけど、この重さなら腕丸ごと吹き飛んだっておかしくない。


そんな威力がララメに叩きつけられていた。


トゥトゥは電撃を受けた痕跡すらないままくるりと蒼柄の方へ振り返る。


蒼柄「っく、……」


息が乱れる。


全身のバグはさらに酷くなっていた。輪郭がちらつき、立っているだけで限界なのが分かる。


それでも蒼柄は短刀を握り直した。


トゥトゥ「さいご、アオー!」


蒼柄「いい加減にしてください!」


掠れた叫びと同時に蒼柄が短刀を構える。

――構えた直後。視界から一瞬で刀が消える。


蒼柄「……っは、」


理解が追いつかない。


次の瞬間、腹部に鈍い衝撃が突き刺さった。

空気が肺から強制的に吐き出される。


蒼柄の身体が地面へ叩きつけられ、そのまま瓦礫の上を滑った。


そして、金属音


蒼柄「……ぁ、」


視線を落とすと自分の短刀が自分の腹を貫いたまま、地面へ突き刺さっていた。


まるで縫い付けるみたいに。


蒼柄「が、……っ……!」


抜こうとしても力が入らず動けない。

トゥトゥはその様子を見下ろしながら、ぱんっと手を叩く。


トゥトゥ「はい!おーわり!」


無邪気な声。

まるで遊びが終わった子供みたいに、満足そうに笑っていた。


ララメ「……蒼柄、くん……」


メアリー「……っ……」


誰も動けない。希望なんて最初からなかったみたいだ。


こんな格差に気づかず今まで普通に過ごしてきていたと思うと、どうしようもない無力感に苛まれる。

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