自由な暴力
だがその2人の覚悟ごと、トゥトゥは軽々と踏み越えた。
トゥトゥ「じゃ、いくね♡」
次の瞬間トゥトゥの姿が消える。
ララメ「っ!?」
見失ったと理解した瞬間にはもう遅かった。
ドン"ッ!!
腹部に凄まじい衝撃でララメの身体が吹き飛ぶ。
地面を何度も跳ね、瓦礫を砕きながら転がっては木に叩きつけられようやく止まった。
ララメ「……っ、ぁ……!」
肺の空気が全部押し出され、視界が白く揺れた。
メアリー「ララメさん!」
叫びながら前へ出るも、その視界の端でトゥトゥがもうこちらを向いていた。
…速い。速すぎる。
それでもメアリーは踏み込んだ。触れればいい。
その一瞬、メアリーの手がトゥトゥの腕を掴んだ。
メアリー「腐ってくださいっ!」
能力が発動して黒ずむように腐食が広がり
…ビリ。崩れ落ちたのは服だけだった。
メアリー「…え」
トゥトゥ「あはっ!」
露わになった無機質な白い腕には腐食も、傷一つない。
トゥトゥ「効かないよ?」
無邪気な声にメアリーの背筋が凍る。
次の瞬間、視界いっぱいにトゥトゥの笑顔があった。
トゥトゥ「残念♡」
メアリー「――っ」
衝撃で身体が横殴りに吹き飛ぶ。幽体なんてもう関係ない。
地面へ叩きつけられ石畳が砕け散る。メアリーはようやく止まって
ララメ「……メアリー、ちゃん……!」
ララメは震える腕で起き上がろうとするが、身体が言うことを聞かない。
言わずもがな圧倒的だった。
強いとかそういう次元じゃない。
まるで勝負になっていない。
トゥトゥ「ねーえ、もう終わり?」
子供のような退屈そうな声だった。
ララメもメアリーも満身創痍。立ち上がるだけで精一杯。
そんな二人を見下ろしながら、トゥトゥは小さく首を傾げる。
その瞬間、ガシッとトゥトゥの身体が背後から強く抑え込まれた。
トゥトゥ「お?」
黒いノイズが空気を侵食する。
バチバチと壊れた映像みたいな音が鳴り、周囲の景色が歪み始めた。
……蒼柄だ。
全身を蝕む“バグ”を無理やり纏い、そのままトゥトゥごと巻き込もうとしている。
蒼柄「……これ、で……!」
腕が震えているどころか、存在そのものが崩れかけているのにそれでも離さない。
トゥトゥ「……へぇ〜!」
楽しそうな声と共に次の瞬間
ガッ!!と蒼柄の身体が蹴り飛ばされた。
蒼柄「っ!?」
凄まじい衝撃に視界が回転する。地面へ叩きつけられた瞬間、意識が一瞬白く飛んだ。
ララメ「蒼柄くん!」
メアリー「っ……!」
トゥトゥはその場でくるりと振り返る。
その動きは妙に軽やかでまるで踊っているみたいだった。
トゥトゥ「アオ、それ面白いね♡」
そして振り返ったその姿に、ララメたち3人の息が止まった。
蒼柄「……っは、?」
背丈が違う。
小さな少女だったはずの身体がいつの間にか変わっていた。
ララメやメアリーと同じくらいの女性の姿。
白い髪が長く揺れ、細い手足に滑らかな輪郭。
その姿はこの荒れ果てた戦場には場違いなほど華麗だった。
まるで壊れた世界に一人だけ違う舞台の人間が紛れ込んだみたいに。
トゥトゥ「体格差で抑え込まれるならぁ」
くすっと笑う。
トゥトゥ「変えればいいだけじゃん?」
蒼柄「……」
トゥトゥは両腕を広げて、楽しそうに。本当に…心の底から。
トゥトゥ「“自由”って、便利だよねぇ〜!」
トゥトゥは満足そうに笑いながら、ララメ、メアリー、蒼柄の順番に指を向けていく。
トゥトゥ「じゃ、誰からにしよっかな〜」
その声音は軽い。まるで遊園地のアトラクションでも選んでいるみたいだった。




