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館護戦線  作者:
終幕のあとで
56/76

再び、"狩"へ

音の無い戦場の中で、震える声が落ちる


ララメ「……うそ」


目の前に立つ背中を見間違えるはずがない。


メアリー「蒼柄さん、?それに、貴方っ!!」


皐「…っはは、邪魔が入りましたか。でも」


皐は口元を吊り上げながら、目の前の青年を見下ろした。


皐「随分とまぁ、ボロボロなご様子でw」


蒼柄「……はぁっ……はぁ……」


呼吸が荒く、立っているのすら無理をしているのが分かる。


服は裂けバグで全身に傷が走り、短刀を握る手も小さく震えていた。


前、エイルと対峙し消えてしまった時


そこからまた"あの時"のように消えてしまい、今"無理やり出てきた"ようなもの。


それでも蒼柄は倒れない。皐を睨みつけたまま一歩も退かなかった。


蒼柄「っぐ……」


ララメ「蒼柄くん、!」


皐「生きてるのが不思議なくらいじゃないですか?」


蒼柄「……黙れ……卑怯……者……」


掠れた声。でもその目だけは生きている


メアリー「……皐さん、何故ここに!」


皐「司令官さんと繋がっていまして」


まるで世間話でもするみたいに軽い口調で返す。


皐「それと_この方に」


パチンと皐が軽く手を叩いたその直後、軽い足音が静かな更地に響いた。


ララメとメアリーの視線が同時にそちらへ向く。


そこにいたのは白髪の小さなお人形の少女。


皐の半歩前へ当然みたいに立つ。無機質な姿に楽しそうに細められた目。


口元は前と変わらない笑み。


トゥトゥ「やっほ〜♡」


ララメ「……なんで、」


今度の声はさっきよりずっと小さかった。信じたくないものを見たみたいに。


蒼柄の肩が小さく揺れる。


トゥトゥはそんな彼をちらりと見上げ、くすくす笑った。


トゥトゥ「も〜アオ、邪魔しちゃダメだよ?」


蒼柄「……っ……」


皐「いやぁ、本当に手間をかけさせてくれますね」


ララメはゆっくり立ち上がる。目はトゥトゥから逸らさない。


ララメ「…なんのつもり、答えて」


トゥトゥ「えー?」


首を傾げる。まるで本当に意味が分からないみたいに。


トゥトゥ「やだ♡」


皐「めんどくさい事になりましたし、自分はお暇しましょうかねぇ」


まるで仕事終わりみたいな軽い声だった。


トゥトゥ「わかったー!」


メアリー「待ってください皐さ――」


言い切るより前にトゥトゥの拳が目の前に迫る。


メアリー「っ!!」


反射的に体を捻り回避した瞬間


"ドゴォンッ!!"


凄まじい衝撃が地面を叩き割った。


ほんの数秒前までメアリーがいた場所がクレーターみたいに陥没している。


瓦礫が弾け飛び、遅れて風圧がララメの髪を揺らした。


ララメ「メアリーちゃん!」


メアリーは数歩浮遊し距離を取る。だが顔色が変わっていた。


速い


見えてから避けたんじゃない。本能で動いてギリギリ間に合っただけだ。


トゥトゥは壊れた地面の中心できょとんと首を傾げる。


トゥトゥ「あれ、避けれたんだ!」


楽しそうに笑う。その隙に皐の姿はもうなかった。


ララメ「……っ!」


辺りを見回すも気配が消えている。


……逃げた。


蒼柄「……はぁ……っ……」


蒼柄が小さく息を飲む。短刀を握る手に力が入る。


トゥトゥはそんな蒼柄の方へ振り返り笑った。


トゥトゥ「じゃあ、アオから攻撃するね♡」


その言葉と同時に空気が張り詰めた。

蒼柄はララメを庇うように荒い呼吸のまま一歩前へ


震える足を無理やり踏みしめながら、トゥトゥの前に立つ。


蒼柄「……暴れるのは、よしてください……」


声は今にも消えそうなくらい弱い。それでもちゃんと前を向いていた。


トゥトゥ「えー?なんでぇ?」


心底不思議そうに首を傾げる。


蒼柄「もう…戦うのは……」


トゥトゥ「トゥトゥたち、“狩”でしょ?」


蒼柄「っ、」


言葉が詰まる。トゥトゥはにこにこと笑ったまま蒼柄へ歩み寄る。


トゥトゥ「狩はさぁ、戦って、壊して、消して、それで終わりじゃん」


蒼柄「違…」


トゥトゥ「なのにアオたち、変になっちゃったよね〜?」


蒼柄「……」


トゥトゥ「昔はもっと、ちゃんと“狩”だったのに」


その声は責めているわけでも怒っているわけでもない。


本当に、ただ変わったことを不思議がっているだけ。


だから余計に怖い。


指先が小さく震える蒼柄を見て、背後でララメがゆっくり立ち上がった。


ララメ「蒼柄くん、下がって」


蒼柄「だめ……です……」


即答だった。


蒼柄「ララメさんたちじゃ…トゥトゥさんには……」


最後まで言い切れない。


メアリー「蒼柄さんだって無理なのです!」


存在がまたノイズみたいに揺らぐ。


トゥトゥ「あはっ♡」


それを見たトゥトゥが嬉しそうに笑う。


トゥトゥ「やっぱりアオ、壊れかけてる!」


蒼柄「……っ」


トゥトゥ「じゃあさ」


トゥトゥは拳を軽く握り


トゥトゥ「完全に壊れるまで遊ぼ?」


蒼柄へ踏み込む小さな身体が、地面を砕く勢いで加速した。


振り上げられた拳が真っ直ぐ蒼柄へ向かうその寸前。


バチッ!!!と桃色の雷光が空気を裂いた。


トゥトゥ「わっ!」


電撃がトゥトゥの身体へ直撃する。火花が弾け、衝撃で足元の瓦礫が跳ねた。


ララメ「近付かないで!」


ララメが前へ出る。


掌にはまだ電気が散っている。


トゥトゥは数歩後ろへ下がったものの怯んだ様子はない。


…むしろ楽しそうに目を細めていた。


トゥトゥ「えー、抵抗しなかったら楽なのに?」


ララメ「誰が」


吐き捨てるような声。隣でメアリーも静かに前へ出る。視線は一切逸らさない。


メアリー「……終わってますね」


トゥトゥ「褒め言葉として受け取るね♡」


くすくす笑う姿はまるで会話を楽しんでいるだけみたいな空気。


なのに、その場の緊張だけが異様に重い。


蒼柄「……っ、ララメさん……メアリーさん……」


ララメ「黙って休んでて」


蒼柄「…ですが!」


ララメ「蒼柄くん、今にも消えそうじゃん」


蒼柄の身体はまだ不安定にノイズを走らせている。


輪郭が時折ぶれるたびにメアリーの表情がわずかに険しくなった。


メアリー「……今の蒼柄さんは、まともに戦える状態ではないのです」


トゥトゥ「あは♡」


両手を後ろで組み、首を傾げる。


トゥトゥ「じゃあ二対一?」


ララメ「違う」


ララメの目が鋭く細まる。


ララメ「二人で止めるの」


ララメの能力、桃色の電気がバチバチとララメの周囲で弾けた。

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