戻ってきた場所
ただ、その日から二人は歩き続けた。
仲間の痕跡を追っては外し、また探して、昼も夜も曖昧なまま。
ただ足を動かし続けた
そして今、二人はまたこの更地に戻ってきていた。
あの日、すべてが終わった場所。
血の跡やなぎ倒された植物はほとんど片付いていて、大きな瓦礫以外はほぼ何も残っていないはず。
なのに、逆に「ここで何かがあった」という事実だけが濃く残っている。
風が吹き抜けるたびにその空白が胸の奥をじわじわと締め付けてきた。
ララメはゆっくりと中心へ歩いていき、ふっと足を止める。
言葉にはしないが、そこが“場所”なのだと分かってしまう。
そしてそのまま力が抜けたように座り込んだ。
少し遅れてメアリーも隣に腰を下ろす。
ララメ「……戻ってきちゃったね」
軽く笑ったつもりの声は、思ったよりも乾いていた。
メアリー「…妙ですね」
ララメ「なにが?」
メアリー「何も残っていないはずなのに、“残っている感じ”がするのです」
ララメは空を見上げながら、小さく息を吐く。
ララメ「……あー、分かる、それ」
しばらく言葉が途切れる。周囲は静かで、風の音だけがやけに耳に残る。
ララメ「……ここさ、うるさかったよね」
メアリー「はい」
ララメ「みんな居てさ、騒いで…戦って、失って…なのに今、こんな静かってさ」
少しだけ笑う。
ララメ「反則じゃない?」
メアリー「…そうですね」
メアリーの手が膝の上で静かに握られる。
ララメ「……ねぇ」
メアリー「はい」
ララメ「ほんとに、いないかな」
主語はないのに、それでも意味ははっきりしていた。
メアリーは少しだけ間を置いてから静かに答える。
メアリー「……“いない”とは、言い切れないのです」
ララメ「……だよね」
ララメはそのまま後ろに手をついて、空を見上げる。空見上げた先はやけに広くて、何もないのに目を逸らせなかった。
ララメ「じゃあさ、探すしかないじゃん」
メアリー「…はい!」
短い返事。でもそこに迷いはなかった。
またしばらく二人は何もせずにその場にいた。
ただこの場所をちゃんと感じるために。
ここにあった全てを、受け止めるために
ララメ「……あとさ」
メアリー「はい」
ララメ「ここ、終わりじゃないよね」
メアリーは少しだけ視線を落として、それから前を見据える。
メアリー「……はい。ここは終わりではないのです」
ララメは目を閉じたまま、小さく笑う。
ララメ「そっか」
それ以上は何も言わない。ただ隣にいる存在を感じながら、同じ景色を見ていた。
二人は立ち上がらない。まだここにいる。まだ離れない。
……離れたくない。
けれどその沈黙の中にあったのは、さっきまでの喪失だけじゃなかった。
――ここは終わりじゃない。
その認識だけが静かに根を張っていた。
章?のようなものが変わりました
ここからは主人公が変わります




