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館護戦線  作者:
館護戦線
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終幕


もう戦場の音なんてなかった。爆炎の匂いや砕けた瓦礫、白い煙。


そして、大切な人を失った者の嗚咽だけ。


メアリー「……っ、ぁ……っ……」


いつも明るくて、少しバカっぽいけど丁寧な彼女が涙も流せず絶望していた。


そして、泣き顔なんて見せなかった彼女が小さな肩を震わせて子供みたいに泣いていた。


ララメ「……やだ……やだよ……」


膝を抱えて顔を埋めている。電撃なんてもう一切出ていない、ただの年相応の女の子。


奈子「角灯さん…砮裏さん…」


奈子も涙を流している。ぎゅっと自分の腕を抱きしめながら

……もう、心も体も…

何もかも、限界だった。


誰もが「終わった」と、そう思っていた。



その時、ぞわっと空気が歪んだ。


ソラ「……え……?」


空間の一点に黒い靄みたいなものがゆらりと集まる。


煙か、影か、憎悪か…


…何か良くないものが固まって、人の形を作る。


腕、脚、頭、そしてコート……


フォドル。



メアリー「……うそ……」


ララメ「……まだ……?」


誰も動けない。絶望が喉を締め付ける。フォドルももうボロボロだった。


核はレドによって破壊された。


ただ、フォドル自身の強く黒い残留思念が渦を巻いて、再び"形だけ"戻した。


片腕は垂れ下がり、呼吸も荒く、立っているのがやっと。


…それでも右手だけ、その掌だけ。


ドス黒いエネルギーがぎゅうううっと収束している。


圧縮された“死”

あれに触れたらきっと、一瞬で存在ごと消える。


全員が理解した。


「終わりの力」だって。


ハウル「……っ……」


動こうとするが足が震えて立てない。エイルも、レイズも、ルガも

……もう限界。


ソラも能力を使い切っている。アマネとニアを抱えるだけで精一杯。


誰も前に出られないと思ったその時、瓦礫を踏む音。


静かな足音


その時、全員の前にすっと背中が立った。


綯緒「…はぁ」


軽くため息。いつも通りの面倒くさそうな顔。


綯緒「…最後まで面倒かけんなよ。ほんと」


フォドル「お前か……」


綯緒「空気を読めよ。クソ野郎」


ソラ「綯緒さん…!?」


ただ一人でフォドルの前に立ち、行く手を塞ぐ。


フォドル「…まだ、残っていたか」


声はかすれている。でも右手の力だけは消えない。


フォドル「…終わらせる」


ゆら…と腕を上げる先、狙いは綯緒。


ララメ「逃げて!!」


メアリー「綯緒さん!!」


でも綯緒は動かないまま、ただ静かにフォドルを見る。


綯緒「……来いよ」


フォドルに集まった黒い光が一直線に走る。


触れれば消滅の確実な一撃。

避けられない距離。


でも、綯緒は小さく呟いた。


綯緒「…悪ぃな、代償…デカそうだけど」


そして手を振る。まるで埃を払うみたいに軽く。


“消した”。


音も衝撃もないまま、フォドルの身体だけがすっ…と。


最初からそこに存在しなかったみたいに。輪郭ごと、影ごと、黒い力ごと。


完全に消滅した。


……沈黙の中、風の音だけが通り抜ける。


終わった。今度こそ本当に


綯緒「……っ……」


ふらっと膝が折れる。


奈子「綯緒さん!?」


綯緒「…あー……」


呼吸が浅い。でも傷は無く血も出てない……のに、妙に顔色が悪い。


綯緒「……やっぱ…これ、重いよな……」


メアリー「だ、大丈夫なのですか…?」


綯緒「さぁな、」


苦笑。


綯緒「…代償、いつ来るか分かんねぇのが一番怖ぇんだよな……」


今は何も起きてない。

痛みも異常もない。


綯緒「…命を消しちまったから……」


だからこそ不気味だった。


綯緒はそのまま座り込む。


……遠くの來菟はまだ眠ったまま。瓦礫にもたれて微動だにしない。


本当に静か。


戦場だった場所とは思えないくらい誰も喋らない。


ただ、泣き疲れた呼吸だけが微かに響いていた。


終わったんだ。そう思えるくらい。長い、長い戦いだった。

悲しみも、喪失も、後悔も…きっとこれから先も残り続ける。


でも


それでも、長い戦いはここで確実に終わりました

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