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館護戦線  作者:
館護戦線
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「家族で、良かった。」

……意識が浮かぶ。暗い水の底からゆっくり引き上げられるみたいに。


レド「……ん……」


まぶたが重く、身体も鉛みたいだ。


指一本すら動かない。息を吸うだけで胸が軋む。


レド(……生きてる……?)


ぼんやりと目を開けると、最初に視界に入ったのは顔。


レドの視界は滲んで、揺れて、焦点が合わない。


でも、その声だけはすぐ分かった。


ハウル「……レド……」


掠れた声。泣きすぎたみたいな震えた声。


レド「……っ」


ゆっくり理解する。自分の頭が柔らかい何かに乗っている。


…膝枕。ハウルの膝。


レド「……ぁ……」


喉が小さく鳴る。視線を少しだけ下げるとそこにはレイズがいた。

唇を噛みしめて顔を歪めてる。


ルガは必死に涙を堪えてるのに全然隠せてない。

涙で視界はぐちゃぐちゃなのにずっと目を逸らない


そして、エイルがいた。両手を口に当てて、声を殺して泣いている。


家族全員が自分を囲んでる。


レド「……なんだよ……」


小さく笑う。


レド「……勢揃い、じゃん……」


声がかすれてる。自分の声なのにやけに遠い。


その時、視界の端自分の腕が見えた


…が、透けている。


輪郭が淡く崩れている。


砂みたいに。光みたいに。少しずつ消えてる。


レド「……あー……」


理解した。妙にすんなり。


レド「……そっか……俺……」


(死ぬんだ)


不思議と怖くはなかった。ただ「あ、時間切れか」って感じだった。


ハウルの手がぎゅっとレドの手を握る。


ハウル「……喋るな……」


震える声。


ハウル「もういい…喋らなくていい…」


レド「…うるせぇよ……」


いつもの口調。でも力がない。


レド「……最後くらい…言わせろ……」


ゆっくり息を吸う。

胸が痛いけど…


でも、ちゃんと…伝えないと。


レド「悪かった…」


全員の目が揺れる。


レド「…いっぱい、迷惑かけた」


レイズは首を振る。


レド「……銃向けたり…揉めたり……」


ルガは目を伏せる。


レド「…家族なのに…俺、何も知らなくて……」


エイルの目から涙が溢れる。


声が途切れる。でも続ける。


レド「…それでも」


エイルの方を見る。レイズとルガを見る。最後にハウルを見る。


レド「見つけてくれて、ありがとう」


小さく

本当に小さく


レド「……俺…嬉しかった」


ハウルの目からぽたぽたと涙が落ちる。


ハウル「……っ……」


レド「…父さん」


その呼び方にハウルの肩がびくっと震えた。


レド「母さん」


エイルが崩れるみたいに泣く。


レド「…兄貴たち……」


レイズが涙を拭って、ルガの拳が震える。


レド「……短かったけどさ…最期…家族で、よかった」


ふっと力が抜ける。


そして、ヤグの時には絶対にしなかった顔。


尖ってなくて、皮肉もなくて……ただ優しくてあどけない子供みたいな、柔らかい笑み。


レド「……じゃあな」


光が舞う


指先、腕、胸…少しずつ、粒子みたいに崩れていく。


ハウル「待て…!レド…、レド!!」


手を掴もうとする。でも。すり抜ける。


レイズ「やめろ…!!」


ルガ「…消えるな…」


エイル「お願い…お願いだから……」


誰も止められない。


レドの身体は光になって…静かに……本当に静かに。


煙みたいに、空気に溶けて消えた。


あとには何も残らない。ハウルの膝の上には空っぽの温もりだけ。


ハウル「……っ……あ……」


声にならない。


エイルが泣き崩れ、レイズが地面を殴って、ルガが俯いて声を抑える


誰も立てない。


誰も喋れない。


広場には、家族の泣き声だけがいつまでも…いつまでも響いていた。

レドが家族と居れた時間はほんの少しと短すぎたけれど


それでも彼は最後に、家族の中で笑うことができた。

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