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館護戦線  作者:
館護戦線
34/76

終末への予兆。

広場の端には瓦礫と血と壊れた柵。


その中心でトゥトゥだけがやけに楽しそうに笑っていた。


トゥトゥ「ねぇねぇ、まだ遊べる子いないの〜?」


軽い声。遠足気分みたいな声。その足元には砕けた地面と吹き飛ばされた狩たち。


その笑顔がやけに腹立たしい。

 

霣羅の刀が黒炎を纏って震えた。


霣羅「…テメェだけは」


低い。喉の奥から絞り出す声。


霣羅「絶対、八つ裂きにする」


砮裏を奪った張本人。兄を改造して道具にして壊した元凶。理屈なんてもうない。怒りだけ。

 

隣でメアリーがスカートの裾を握り締めていた。いつもへらへらしてる顔がない。


メアリー「奈子さんを……よくも……」


拳が白くなるほど力が入る。


メアリー「……許さないのです」

 

トゥトゥ「あ、こわ〜♡」


全然怖がってない顔で笑う。


トゥトゥ「怒ってる人ってさぁ、だいたい弱いんだよね」

 

霣羅が一直線に踏み込む。黒炎が軌跡を描き一直線にトゥトゥの首へ。


同時にメアリーが横から回り込み死角から素手を叩き込む。連携としては完璧。殺意も十分。


普通の相手なら終わってた。

 

――でも。


トゥトゥ「おっそ」


消えた_いや、消えたように見えただけ。


次の瞬間には霣羅の懐。腹に拳。空気が全部吐き出される。


霣羅「が……ッ!?」


身体が吹き飛ぶ。

 

メアリー「っ、霣羅さん!」


宙を浮遊して触れようと迫る。


でも全部


トゥトゥ「はいっはいっは〜い♪」


子供の遊びみたいに軽く避けられる。紙一重どころか余裕。

 

トゥトゥ「怒り任せ〜」


小さな手で刃を逸らされる。


トゥトゥ「フォームぐちゃぐちゃ〜」


肘が鳩尾にめり込む。


メアリー「……っ!!」

 

衝撃で視界が白く弾けた。膝が崩れる。


そこに後頭部を掴まれそのまま地面に叩きつけられる。瓦礫が砕ける音。

 

トゥトゥ「ねぇ」


透けるはずのメアリーの髪を掴んだまま、にっこり笑う。


トゥトゥ「感情だけで殴ってくる人ってさぁ」

 

霣羅が無理やり立ち上がる。腹を押さえながらまた刀を構える。足が震えてるのに止まらない。

 

霣羅「……まだ……だ……」


トゥトゥ「そーいうの、超つまんない」


瞬間


また視界からトゥトゥが消えた。

 

霣羅の胸に蹴りが入り骨が軋む音が鳴る


黒炎ごと吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。霣羅はそのままずるりと崩れ落ちた。

 

メアリー「……っ、あめら……さん……」


起き上がろうとするが腕が震えて力が入らない。トゥトゥがその前にしゃがみ込み目線を合わせる。


にこにこ。

 

トゥトゥ「もっとさぁ、絶望とか、恐怖とか、命乞いとかしてくれないと」


首を傾げる。


トゥトゥ「怒ってるだけって、ほんと退屈」

 

メアリーは指一本動かない。霣羅も立とうとして膝が崩れる。

 

霣羅「……く、そ……」

 

視界が滲む。力が入らない。

 

トゥトゥ「もういいや」


くるっと背を向ける。

 

トゥトゥ「飽きた〜」


手をひらひら振って。

 

トゥトゥ「じゃ、つぎ探そ♡」

 

軽い足取りで戦場の奥へ消えていった。


残されたのは静かな煙と横たわる2人。霣羅の拳がぎりっと瓦礫を握り潰した。


霣羅「……クソ……」


怒りだけじゃ届かない。その事実だけが重く胸に残った。


瓦礫の中央。フォドルがゆっくりと視線を落とすその先。


膝をつき銃を握ったまま動けずにいるヤグ。撃てなかった。


真実を突きつけられ揺れている。その様子をフォドルは無表情で見つめていた。


フォドル「……ヤグ」


低い声で感情の薄い淡々とした呼びかけ。


フォドル「お前は、そんなもので揺るがない個体だと思っていたがな」


失望


ただそれだけが滲む


フォドル「失敗作か?」


ヤグの肩がぴくりと震える。フォドルは小さく息を吐いた。


フォドル「……興が削がれた」


次の瞬間、ピシ……と。空間そのものに細い亀裂が走る。地面が低く唸り始める。


ソラ「……え……?」


アマネ「なに、これ……」


ニア「……や、だ……」


館全体が軋む。見えない重力みたいなものが圧し掛かる。呼吸が重く立っているだけで膝が笑う。


フォドルの足元から黒い光が滲み出す。影が広がるみたいに床を這っていく。


フォドル「……もういい。まとめて処理する」


片腕をゆっくり上げるというただそれだけの動作。


なのに天井の梁が崩れて壁に亀裂が走り、窓ガラスが一斉に砕けた。


館そのものが悲鳴を上げているみたいだった。


レイズ「……まずい……」


ルガ「館ごと……壊す気だ……!」


フォドルの瞳が冷たく細まる。


フォドル「全て瓦礫になれば、雑音も消える」


黒い光が脈動する。心臓みたいにドクンドクンと。


世界が沈み終わりが形を持って広がっていく。誰も動けない。


ただ滅びだけが迫っていた。

怪物が2人もいるこの戦場は絶望的ですね

怒りは原動力になりはしますが、それだけじゃ到底格上には届かない……


ですがそう簡単に終わりません。

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