終末への予兆。
広場の端には瓦礫と血と壊れた柵。
その中心でトゥトゥだけがやけに楽しそうに笑っていた。
トゥトゥ「ねぇねぇ、まだ遊べる子いないの〜?」
軽い声。遠足気分みたいな声。その足元には砕けた地面と吹き飛ばされた狩たち。
その笑顔がやけに腹立たしい。
霣羅の刀が黒炎を纏って震えた。
霣羅「…テメェだけは」
低い。喉の奥から絞り出す声。
霣羅「絶対、八つ裂きにする」
砮裏を奪った張本人。兄を改造して道具にして壊した元凶。理屈なんてもうない。怒りだけ。
隣でメアリーがスカートの裾を握り締めていた。いつもへらへらしてる顔がない。
メアリー「奈子さんを……よくも……」
拳が白くなるほど力が入る。
メアリー「……許さないのです」
トゥトゥ「あ、こわ〜♡」
全然怖がってない顔で笑う。
トゥトゥ「怒ってる人ってさぁ、だいたい弱いんだよね」
霣羅が一直線に踏み込む。黒炎が軌跡を描き一直線にトゥトゥの首へ。
同時にメアリーが横から回り込み死角から素手を叩き込む。連携としては完璧。殺意も十分。
普通の相手なら終わってた。
――でも。
トゥトゥ「おっそ」
消えた_いや、消えたように見えただけ。
次の瞬間には霣羅の懐。腹に拳。空気が全部吐き出される。
霣羅「が……ッ!?」
身体が吹き飛ぶ。
メアリー「っ、霣羅さん!」
宙を浮遊して触れようと迫る。
でも全部
トゥトゥ「はいっはいっは〜い♪」
子供の遊びみたいに軽く避けられる。紙一重どころか余裕。
トゥトゥ「怒り任せ〜」
小さな手で刃を逸らされる。
トゥトゥ「フォームぐちゃぐちゃ〜」
肘が鳩尾にめり込む。
メアリー「……っ!!」
衝撃で視界が白く弾けた。膝が崩れる。
そこに後頭部を掴まれそのまま地面に叩きつけられる。瓦礫が砕ける音。
トゥトゥ「ねぇ」
透けるはずのメアリーの髪を掴んだまま、にっこり笑う。
トゥトゥ「感情だけで殴ってくる人ってさぁ」
霣羅が無理やり立ち上がる。腹を押さえながらまた刀を構える。足が震えてるのに止まらない。
霣羅「……まだ……だ……」
トゥトゥ「そーいうの、超つまんない」
瞬間
また視界からトゥトゥが消えた。
霣羅の胸に蹴りが入り骨が軋む音が鳴る
黒炎ごと吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。霣羅はそのままずるりと崩れ落ちた。
メアリー「……っ、あめら……さん……」
起き上がろうとするが腕が震えて力が入らない。トゥトゥがその前にしゃがみ込み目線を合わせる。
にこにこ。
トゥトゥ「もっとさぁ、絶望とか、恐怖とか、命乞いとかしてくれないと」
首を傾げる。
トゥトゥ「怒ってるだけって、ほんと退屈」
メアリーは指一本動かない。霣羅も立とうとして膝が崩れる。
霣羅「……く、そ……」
視界が滲む。力が入らない。
トゥトゥ「もういいや」
くるっと背を向ける。
トゥトゥ「飽きた〜」
手をひらひら振って。
トゥトゥ「じゃ、つぎ探そ♡」
軽い足取りで戦場の奥へ消えていった。
残されたのは静かな煙と横たわる2人。霣羅の拳がぎりっと瓦礫を握り潰した。
霣羅「……クソ……」
怒りだけじゃ届かない。その事実だけが重く胸に残った。
瓦礫の中央。フォドルがゆっくりと視線を落とすその先。
膝をつき銃を握ったまま動けずにいるヤグ。撃てなかった。
真実を突きつけられ揺れている。その様子をフォドルは無表情で見つめていた。
フォドル「……ヤグ」
低い声で感情の薄い淡々とした呼びかけ。
フォドル「お前は、そんなもので揺るがない個体だと思っていたがな」
失望
ただそれだけが滲む
フォドル「失敗作か?」
ヤグの肩がぴくりと震える。フォドルは小さく息を吐いた。
フォドル「……興が削がれた」
次の瞬間、ピシ……と。空間そのものに細い亀裂が走る。地面が低く唸り始める。
ソラ「……え……?」
アマネ「なに、これ……」
ニア「……や、だ……」
館全体が軋む。見えない重力みたいなものが圧し掛かる。呼吸が重く立っているだけで膝が笑う。
フォドルの足元から黒い光が滲み出す。影が広がるみたいに床を這っていく。
フォドル「……もういい。まとめて処理する」
片腕をゆっくり上げるというただそれだけの動作。
なのに天井の梁が崩れて壁に亀裂が走り、窓ガラスが一斉に砕けた。
館そのものが悲鳴を上げているみたいだった。
レイズ「……まずい……」
ルガ「館ごと……壊す気だ……!」
フォドルの瞳が冷たく細まる。
フォドル「全て瓦礫になれば、雑音も消える」
黒い光が脈動する。心臓みたいにドクンドクンと。
世界が沈み終わりが形を持って広がっていく。誰も動けない。
ただ滅びだけが迫っていた。
怪物が2人もいるこの戦場は絶望的ですね
怒りは原動力になりはしますが、それだけじゃ到底格上には届かない……
ですがそう簡単に終わりません。




