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館護戦線  作者:
館護戦線
32/76

探し求めていた名前

家族の定義はなんだろうか

一緒に住んでいるからか、思いが繋がっているからか


それがなかったら、血が繋がっているとしても家族とは呼べないのだろうか

爆音と共に拳と拳がぶつかるたび空気が歪む。


床がが割れて瓦礫が跳ね、衝撃波が広場を舐める。


ハウル「ッ……!!」


腕が痺れ骨が軋む。


それでも止まらない…止まるわけに行かない。

目の前の男だけは絶対に倒す。


ハウルが踏み込んだその瞬間、視界がぐらりと揺れた。


ガッと胸倉を掴まれ、強制的に距離がゼロになる。


フォドルの顔が目の前。離れようと肩を押すも距離は開かない。


フォドル「……まだ気づかないか?」


静かすぎる声。戦場の中なのにそこだけ音が消えたみたいだった。


ハウル「……何がだ?」


荒い息のまま血の混じった唾を吐き捨てながら睨み返す。


フォドルの瞳は冷たく感情がない。まるで実験結果でも告げるみたいに。


フォドル「__“攫われた三男が、今どこにいるか”」


ハウル「……っ!?」


心臓が跳ねた。


その言葉、ずっと胸の奥に刺さったままの棘。


失った家族、奪われた息子、思い出すたび胃が焼ける記憶。


考える前に視線が勝手に後ろを向く。


視線の先の瓦礫の向こうに血まみれで倒れている男。荒い息に傷だらけの身体。


さっきまでシロクラと本気で殺し合ってた、口が悪くて、態度も最悪で、来た時も喧嘩腰で、いちいち癪に障る男、


ヤグ。


ハウル「……は……?」


喉がひきつる。フォドルの声が真正面から追い打ちをかけてくる。


フォドル「狩側の個体」


フォドル「幼い頃から俺の元で動いていた」


フォドル「忠実で、扱いやすい駒だ」


淡々と事実だけ並べるみたい。


そして、


フォドル「__お前の息子の、“三男”だ」


ハウル「……は……?」


理解が追いつかない。


息子?ヤグが?あの子が?


頭の中が真っ白になる。


でも胸の奥がぎゅっと掴まれる感覚と、理由の分からなかった違和感が次々と繋がる。


初対面なのに妙に引っかかった感覚、目が合うたび胸がざわついた理由。


倒れたヤグの顔を見る。血の付いた口元、荒い呼吸、鋭いはずなのに、家族にあるはずの妙な雰囲気が


……似てる。


ハウル「……っ」


昔。

ハウルとエイル、そしてレイズとルガに加え、新しい家族……"レド"という名前をつけた三男。


ある日の深夜に攫われ、大規模に捜索しても見つからなかった。


その記憶がフラッシュみたいに脳裏を焼く。


ハウル「……うそ、だろ……」


膝が震える。

フォドルが冷たく告げる。


フォドル「ずっと俺の管理下にあった」


フォドル「お前が探していた間もな」


フォドル「皮肉だな。家族同士、気づかず殺り合うとは」


最低だ、最低すぎる。ハウルの拳がぎりっと鳴り、血が滲むほど強く握る。


ハウル「……てめぇ……」


声が震える。怒り、後悔、自分への嫌悪、全部が混ざって吐き気がする。


ハウル「……俺の……家族を……」


フォドルの胸倉を掴み返す。涙が滲むが目は逸らさない。


ハウル「……駒みたいに使ってんじゃねぇよ……ッ!!」


フォドル「……」


ハウル「返せ」


低い声。地鳴りみたいな声。


ハウル「……俺の家族、返せよ……フォドル」


次の瞬間地面が爆ぜた。今までとは比べ物にならない踏み込み。


怒りがそのまま力に変わる。拳が唸りを上げフォドルへ叩き込まれる。


遠くの瓦礫の中でヤグがかすれた声で吐き捨てる。


ヤグ「…なん…だ、?……」


その目はほんの少しだけ揺れていた。



瓦礫の中で重い沈黙を破ったのは小さな咳払いだった。


シロクラ「……っ、は……」


肺の奥に溜まった血を吐き出す。焼けるように疲れた全身。それでも意識は戻った。視界がゆっくり焦点を結ぶ。


倒れた瓦礫、崩れた壁、血の匂い。そして近くの場所にヤグ。床に倒れ荒く息を吐いている。


まだ生きている。シロクラの目が細くなる。よろめきながら立ち上がる。


足が震えるがそれでも前へ出る。シロクラの中にあるのはただ一つ。


“終わらせる”。


こいつだけはここで。


シロクラ(終わらせる、こいつだけは、この男だけは絶対に生かさねぇ、)


拳を握り爆ぜる火花。掌に熱が集まる。爆破の兆候。


ふらふらとヤグへ歩く。


その足音でヤグの瞼がぴくりと動いた。


ヤグ「……うるせぇ……」


掠れた声。ゆっくり目を開ける。ぼやけた視界の中で近づいてくる血まみれの影。


それをみてヤグは舌打ちした。


ヤグ「……まだ、終わってねぇのかよ…雑魚が……」


腕に力を込め、無理やり身体を起こす。骨が軋んで傷が開く。


それでも立ち、戦う体勢。


シロクラが目を見開く。


シロクラ「……は、起きてくんなよ……クソが……」


ヤグ「こっちのセリフだ、ボケ」


血を吐きながら笑う。


ヤグ「さっさと死ねばいいんだ、」


その一言で空気が張り詰めた次の瞬間

"ドンッ!!"と爆音。シロクラの爆発が地面を抉る。


同時にヤグが低く踏み込み死角へ滑り込む。拳と爆炎が交差する。互いに満身創痍。もうまともに戦える状態じゃない。


なのに止まらない。止める理由がない。周囲から見ればただの殺り合い。


…同じ館に住むはずだった家族同士の争い



その事実を知っているのは遠くでフォドルと対峙するハウルだけ。ハウルの視界の端でヤグとシロクラが、また本気でぶつかる。


ハウル「……っ……やめ……」


声が出ないまま喉が締まる。あれは敵じゃない。

あの子は…自分が……何年も探し続けた。


ハウル(……レド……)


でもヤグは何も知らない。自分が誰なのか、誰の息子なのかも。


ただ“狩”として目の前の敵を殺そうとしているだけ。


そしてシロクラも当然知らない。だから容赦なく爆発させる。


ためらいゼロ。二人の衝突がまた広場を揺らした。フォドルが横目でそれを見て淡々と呟く。


フォドル「……滑稽だな。血は争えんか」


ハウルの拳がぶるっと震えた。止めたいけれどフォドルがいる。守れないまま間に合わない。


最悪の距離。


最悪のタイミング。


最悪の真実。


広場の中央で何も知らないまま。ヤグ……いや、レドは、今も全力で生き残るために銃を振るっていた。

今回は真実回でした

…キャラデザが見える状態だと似てるのがわかるんですがね、w

やっと探してた息子が今司令官の駒として動いてるなんてね…


家族回はまだ続くようです

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