反逆者_"裏切り"の意味
「裏切り者」
その言葉は実に便利なもの。
相手をこちらからの視点だけで悪者にすれば迷わなくて済むのだから。
でも
あの背中は本当に、「裏切り者」なのだろうか
トゥトゥ「……あれ?」
首を傾げる。
トゥトゥ「なにそれ、しょーもな」
つまらなそうに口を尖らせる。その時遠くで巨大な衝突音。
フォドルがレイズとルガをまとめて地面に叩き伏せる。土煙。
フォドルの視線がゆっくり戦場を舐める。そして止まる。守るように兄の前に立つ霣羅。その構図。フォドルの目が細まる。
フォドル「……なるほど」
低い声。感情ゼロ。
フォドル「霣羅。」
名前を呼ぶ。その響きにかすかな冷気が混じる。
フォドル「任務放棄、敵性個体の保護、私情による戦闘不能」
一拍。
フォドル「裏切り者と判断する。」
空気が凍る。
ララメ「霣羅…」
メアリー「終わりましたねー」
軽い声とは裏腹に緊張が走る。フォドルの腕がゆっくり上がる。処刑宣告みたいに。
フォドル「処分対象だ」
その瞬間。霣羅は兄を庇うように一歩前に出た。もう怒っていない。ただ静かに決意だけを宿した目で。
霣羅「……そうかよ」
刀を握り直す。
霣羅「なら」
低く呟く。
霣羅「今度はお前らが敵だ」
兄を守るため。初めて。狩が司令官に刃を向けた。広場の空気が変わった。
ほんの少し前まで「司令官の勝ち確試合」だったはずの戦場。
今は違う。霣羅がフォドルに刃を向けている。司令官に。命令の絶対者に。守るように砮裏の前に立って。
その背中はどう見ても「裏切り者」じゃなかった。
ララメ「……」
足をぶらぶらさせていた動きが止まる。視線が霣羅から離れない。
メアリー「ララメさんどうしました?」
ララメ「……いや」
小さく呟く。
ララメ「……あれ、裏切りって言うのかな」
メアリー「え?」
ララメ「だってさ」
少しだけ、眉をひそめる。
ララメ「あれ、ただの“兄ちゃん守ってる弟”じゃん」
軽口みたいな言い方。でも声が少しだけ固い。フォドルの声が落ちる。
フォドル「処分対象だ」
腕が上がる。次の瞬間、地面が爆ぜた。フォドルの姿が消える。
一直線に霣羅へ。圧倒的な速度。避けられない。誰が見ても「終わった」と分かる軌道。
その時鈍い衝撃音。
フォドルの拳が止まる。霣羅の目が見開かれる。目の前に黒いコート
ハウル「……っ、は……相変わらず、容赦ないな……兄さんよ」
血を吐きながらでも笑っている。フォドルの拳を腕一本で受け止めていた。
霣羅「……なん、で……」
ハウル「ガキ守るの、年長者の役目だろ……」
息が荒い。まだ治療されたばかり。本来なら立てる状態じゃない。それでも立っている。
ハウル「……アマネ、ニア」
振り返らず言う。
ハウル「そっち頼んだ……レイズとルガ、まだ死なせんなよ」
アマネ「……っ、はい!」
ニア「まかせて……!」
二人がすぐ駆け出す。瓦礫の中。血まみれの兄弟。アマネが膝をつき光が溢れる。
アマネ「大丈夫……大丈夫だから……!」
ニアがバリアを張る。
ニア「もう誰も来ない……絶対守る……」
淡い光がレイズの傷を塞ぎ。ルガの呼吸が戻る。
レイズ「……ち……まだ、生きてんのか俺……」
ルガ「……情けないですね、兄さん……」
弱々しく笑う。その横で。フォドルはハウルを見下ろす。
フォドル「……起き上がったか」
ハウル「悪運だけは強くてな……」
フォドル「邪魔だ」
ハウル「知ってる」
二人の間の空気が張り詰める。完全なタイマン。殺意と殺意。経験と経験。
フォドル「……ならば、先にお前から処理する」
ハウル「上等」
次の瞬間。衝撃波。地面が砕ける。
フォドル vs ハウルの再戦。本気同士。
その凄まじい激突を、少し離れた場所でララメは見ていた。拳をぎゅっと握っている。自分でも気づかないうちに。
ララメ「……ねぇ、メアリーちゃん」
メアリー「はい?」
少しだけ、困ったみたいに笑う。
ララメ「これ、どっち応援するのが正解なんだろ」
メアリー「……」
メアリーも黙る。もう「勝ち確」なんて空気じゃない。正義も命令もぐちゃぐちゃだ。
ララメの視線は。兄を守る霣羅。必死に治療するアマネたち。血だらけで立つハウル。
そして、無感情な司令官。
ララメ「……めんどくさ」
そう呟いたけど。その声はいつもよりずっと小さかった。
霣羅が完全に司令官への反逆を決めましたね。
霣羅を裏切り者と思うかは自由ですが…少なくとも私はそう思いません
じゃーつぎ




