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館護戦線  作者:
館護戦線
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届かなかった戦場にて

視線が最後に向いたのはアマネとニア。まだ無傷の回復と防御。


フォドル「支援役から消すか」


腕を構える。ニアが震えながら前に出る。


ニア「……バリア……!」


半透明の盾。でも防ぎきれないと分かっている。


アマネ「……っ……」


逃げなきゃ。でも足が動かない。フォドルの腕が振り下ろされ__


瞬間、金属が噛み合うような音と共にフォドルの腕が途中で止まっていた。


フォドル「……?」


フォドルの視線が初めて揺れる。自分の腕を掴んでいる手は細いのに微動だにしない。

少し余裕そうに笑っている金髪の青年。


來菟「はいストーップ」


低い声。フォドルが腕を引くが動かない。まるで万力。


フォドル「……ほう?」


來菟「視認完了!」


明るい声で淡々と告げる。その瞬間フォドルの身体がわずかに重くなる。力が抜けて感覚が鈍る。來菟の能力。


――視認した対象を自分より弱くする。

つまり來菟に対してだけフォドルは「格下」になる。


フォドル「……面白い」


拳を振るうが來菟は一歩も動かない。直撃なのに無傷のままピクリとも揺れない。


來菟「効かないぜ!」


そしてそのまま関節を捻り地面に叩きつける。初めてフォドルの背が地面に触れた。

同時に横から影。


綯緒「……荒いな、相変わらず」


軽い声。しかし動きは洗練されている。最小限の動作。紙一重で攻撃を避け無駄のない蹴りを腹部に入れる。


ドッと鈍い衝撃。フォドルの身体が数メートル滑る。


綯緒「代償いらない範囲で削る。長期戦でいい」


來菟「了解」


二人並ぶ。一歩前へ。真正面から逃げない、隠れない。正々堂々フォドルを見据える。


その背中はあまりにも自然で、まるで最初から「ここに立つ役目」だったみたいだった。


瓦礫の中の薄れかけた意識でソラがそれを見る。


ソラ「……ぁ……」


初めてフォドルが「止められている」。胸の奥に小さな火が灯った。戦場の空気が変わる。怪物一強の盤面がようやく「戦い」になった。



來菟と綯緒がフォドルを正面から押さえ込み、鈍い衝撃音が何度も響く。蹴り、受け流し、関節、最小限の攻防


……怪物同士の取っ組み合いみたいな静かな激戦で広場の空気が張り詰めたその瞬間。


――――ドォォォンッ!!!!


爆発。壁が内側から吹き飛んだ。瓦礫と粉塵が雪崩のように広場へなだれ込む。


ニア「きゃっ……!?」


アマネ「な、なに……!?」


煙の中から黒い影が一つ。ゴロゴロと転がってきて地面に叩きつけられる。血まみれで焦げたコート、ヤグ。


ララメ「……え」


メアリー「……せんぱい……?」


ピクリとも動かない。続いて瓦礫の向こう。崩れた穴の奥から足音。重く引きずるような音。


一歩、また一歩…シロクラが姿を現した。全身ボロボロで服は裂け、腕は焼け焦げていて額から血が流れている。呼吸が荒い。


シロクラ「……っ……は……っ……」


それでもまだ立っている。目は諦めずに戦意だけで無理やり立ってる顔。数歩前に出たところで、ガクッと膝が落ちる。


そのままヤグの近くに倒れ込んだ。もう動かない完全停止。さっきまでの激闘が嘘みたいな静寂。


ただ二人の荒い呼吸だけが微かに響いている。


ソラ「……シロクラ……さん……」


アマネ「二人とも……ボロボロ……」


來菟と綯緒も一瞬だけ視線を向ける。フォドルはゆっくりとヤグを見た。見下ろすように。

しばらく無言。そしてぽつり。


フォドル「……あんなに手こずるか、ヤグ」


呆れたような。でもほんの僅かだけ、「評価」が混ざった声音。


フォドル「腕は落ちていないようだな」


來菟と綯緒から距離を取り、いつのまにか近づいては足先でヤグの肩を軽く蹴る。気絶しているからか反応はなし。


フォドル「……使える駒だと思ったが」


小さく鼻を鳴らす。その態度が家族でも仲間でもなく、ただの“戦力”として、"駒"として見ている証明


レイズの拳が震え、ルガの奥歯が軋む、エイルが唇を噛む、空気が冷える。


その時、シロクラの指が微かに動いた。ぎゅっと地面を掴む。まだ終わっていない。まだ諦めていない。


血まみれの指先がわずかに震えた。その小さな動きをソラだけが見ていた。


ソラ「……っ」


胸の奥が熱くなる。ボロボロでも、何度倒れてもみんな立とうとしてる、じゃあ自分だけ寝てられない。


戦場はまだ終わらない。フォドルが再び來菟と綯緒へ視線を戻す。


フォドル「……増えるな、今日は」


ゆっくりと構え直す。殺気がさらに濃くなる。本気の怪物。


対するは傷だらけの仲間たちと新戦力。広場は完全な総力戦へ変わっていた。

今回は來菟さんと綯緒さん参戦回でした。

フォドルを初めて真正面から止めた二人ですが、それでも「やっと戦いになった」だけなのが怖いところ。

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