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館護戦線  作者:
館護戦線
24/76

再会は血腥い戦場で

続きをやれ。

崩れた建物の中央。瓦礫に囲まれた即席の広場で、四人はそれぞれ距離を取り荒い呼吸を繰り返していた。


レイズの脚は震え、ルガの掌は血に濡れ、ララメの電撃は火花を散らし、メアリーの腐敗は地面を溶かしている。誰が倒れてもおかしくない。


そんな均衡が次の一撃で終わる空気。

_その時。空間がぐにゃりと歪んだ。


空中に黒い亀裂が走る。円状に開いたそれはまるでワープゲート。

全員の視線が同時にそこへ向いた。


そしてゆっくりと、一人の男が現れる。長いコート。無駄のない足取り。圧倒的な存在感。司令官…兼、フォドル。


その片手には誰かが引きずられていた。

足が地面を擦る音。血の跡。意識のない身体。拘束具。ぐったりと垂れた腕。


レイズ「……?」


ルガ「……誰……」


顔が見えた瞬間。兄弟の呼吸が止まった。


ルガ「……は?」


レイズ「……と、父さ、ん?」


喉がひゅっと鳴る。視界が揺れる。見間違いじゃない。


あの髪、あの顔…幼い頃も今までも、何度も見上げた…間違いなく。自分達の父親、ハウルだった。


時間が止まったように一歩も動けない。


ララメ「ちょっとーいまいいとこだったのに!」


空気を読まない声が、妙に軽く響く。


メアリー「なんで知らない人連れてくるんですかー!」


フォドルは一切表情を変えず、感情のない目で四人を見る。


フォドル「気にするな。観戦のようなものだ」


そう言ってハウルを無造作に放る。ドサッと重い音。地面に転がる身体に反応はない。ピクリとも動かない。


その瞬間、レイズの足が勝手に前へ出た。


ルガ「待て兄さん!」


レイズ「父さん……!」


叫びが滲む。同時に、建物の二階の崩れた壁から、もう一人出てくる影。


エイルだった。視線は一直線にハウルへ。そして、顔色が真っ白になる。


エイル「……あなた、?」


震える声。まるで幽霊を見たみたいに。エイルは膝から崩れ落ちる。


エイル「なんで……どうして……」


空気が完全に変わった。戦闘どころじゃない。敵味方も関係ない。


全員の視線がハウルに集まる。その中心で、フォドルだけが静かに笑った。


フォドル「さぁ、続きをやれ」


レイズ「……っ、」


フォドル「感情が混ざった方が、戦いは面白い」


背筋が凍る。この男にとって。これはただの娯楽。家族も仲間も命も全部、盤上の駒に過ぎない。


風が吹き抜ける。誰もすぐには動けなかった。戦場なのに、葬式みたいな静寂だけが落ちていた。



レイズ「……返せ」


小さく。けれど震えるほどの怒気を孕んだ声。


レイズ「……返せよ、クソ野郎ッ!!」


爆発するように地面を蹴る。一直線。理性も作戦もない。ただの突撃。


ルガ「待て兄さん!」


止める声は届かない。レイズの拳は真っ直ぐフォドルの顔面へ、しかし当たらない。


いつの間にかフォドルの姿が半歩ずれている。紙一重。レイズの拳は空気だけを殴った。


フォドル「遅い」


次の瞬間。腹部に鈍い衝撃。何をされたのか見えないまま、ただレイズの身体が床から浮いた。


レイズ「が……ッ!?」


衝撃波のように吹き飛び、壁に叩きつけられる。ルガの瞳が見開く。


ルガ「……っ」


迷いは一瞬。次の瞬間にはルガも駆けていた。兄だけ行かせるわけがない。


ルガ「兄さんを止めます」


低い声の冷たい怒りが死角へ滑り込む。横合いからのレーザー斬撃。完璧なタイミング。


だがフォドルは振り向きもしない。


フォドル「甘い」


肘。ただの肘打ち。それだけでルガの視界が真っ白になる。


ルガ「……ッ!!」


骨に響く衝撃。呼吸が止まり地面に転がる。二人同時。


数秒…たったそれだけで圧倒的だった。


子供と大人、いや、蟻と神……それくらいの差。フォドルは退屈そうに埃を払う。


フォドル「感情任せの突撃か、つまらんな」


その頃少し離れた場所。エイルは膝をついて、震える手でハウルの頬に触れる。


エイル「……お願い……お願いだから……」


耳を近づける。胸元に手を当てる。微かに。ほんの微かに鼓動。エイルの目に涙が滲む。


エイル「……生きてる……よかった……ほんとに……よかった……」


崩れるようにハウルを抱き寄せる。安堵で力が抜ける。そのすぐ近く。瓦礫に腰かけた二人。ララメが頬杖をつく。


ララメ「なんか熱い展開だけどどうする?」


メアリー「ひまなのです」


ララメ「助太刀いる?」


メアリー「司令官さんですし」


メアリー「多分、私達いらないのです」


レイズが吹き飛び、ルガが転がる。フォドル無傷。


ララメ「あー……」


ララメ「うん、いらないねこれ」


メアリー「お茶でも飲みたい気分なのです」


ララメ「それな〜」


完全に観戦モード。足ぶらぶら。まるでスポーツ観戦。戦場の温度差が異常だった。


フォドルはそんな二人を一瞥し、軽くため息をつく。


フォドル「……お前達、少しは緊張感を持て」


ララメ「えー、だって司令官いるし?」


メアリー「勝ち確なのです」


フォドル「……はぁ」


その隙に瓦礫の中。レイズが歯を食いしばって起き上がる。血を吐きながらそれでも立つ。視線は父だけ。


レイズ「……まだ、だ……」


ルガも、ふらつきながら隣に並ぶ。


ルガ「……兄弟、ですから」


二人肩を並べる。ボロボロ。でも折れない。フォドルの口元がほんの僅かに歪む。


フォドル「……ほう、まだ来るか」


空気がまた張り詰める。本気の殺気がじわりと滲んだ。

皐さんより最悪な奴がいましたね、はい

ハウルさんへの仕打ちが酷い気がするのは私がいちばんわかってます

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