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館護戦線  作者:
館護戦線
23/76

「消えればいい」

瓦礫が転がる広場。壁は崩れ、天井は半分落ちている。


その中央で、ルガとメアリーが息を荒げて対峙していた。ルガの腕は血に濡れ、呼吸は重い。


メアリーの霊体もところどころ輪郭が乱れ、薄くなっている。

互角。決定打がどちらにもない。


ルガ「……ちっ」


ルガが舌打ちして構え直す。メアリーはふわりと宙に浮いたまま、微笑んでいる。


いつもの柔らかい笑顔。それがルガには妙に腹立たしかった。


ルガ「どうして笑っていられるんですか」


メアリー「え?」


ルガ「仲間を殺して、平然として……」


ルガ「……あなたみたいなのは消えればいいんですよ」


その一言で空気が凍った。メアリーの動きが止まり笑顔が固まる。そして視界が暗転した。




_________



「裏切り者」


「信用してたのに」


「最低ね」


「消えてしまえばいいのに」


_________



館の廊下。冷たい視線。距離を取られる足音。メイド服の裾を掴んでも誰も振り返らない。


_________


メアリーは昔狩ではなかった。とある館で働くただのメイドだった。


住民とメイドが二人と執事が一人。小さくて穏やかな館。毎日掃除して料理運んで他愛ない会話して。それだけで幸せだった。


メアリー「今日のお茶、少し甘くしすぎましたかねぇ?」


同僚メイド「ふふ、でも住民様好きそうですよ?」


執事「……軽い考えで味作りを怠らないでください。馬鹿なんですか?」


メアリー「わぁ毒舌!」


笑い声。温かい日常。ずっと続くと本気で思っていた。


……あの日までは。


買い出しの帰り。一緒にいたメイドが「落とし物した」と言って別れた。


それが最後だった。帰ってこなかった。失踪。そして疑いの目がメアリーに向いた。


「一緒にいたんでしょう?」


「最後に見たのあなたよね?」


必死に否定した。それでも完全には晴れなかった。


それでも働いた。


信じてもらえると思っていたから。


けれどある日、仕事で入った部屋…床一面の赤と倒れている住民。そして冷たい身体。


メアリー「……え……?」


駆け寄った。抱き起こそうとした。服が血で汚れた。その瞬間、執事が入ってきた。


執事「……何をしているんですか?」


メアリー「ち、違います!これは——」


執事「裏切り者!!!」


その叫びですべてが決まった。説明は届かない。誰も聞かない。


「やっぱり」


「怪しかったのよ」


「メイドが狩と繋がってたんだ」


気づけば牢の中だった。暗くて冷たい石の床。そして真実を知る。


京 皐 / かなど さつき

この異能力を持つ人外がありふれた世界では珍しい人間の男性。


人間として優遇される立場でありながら、穏やかな顔つきと所作で住民からの信頼を得ている、周りから見ればただの人格者。



……ただ、その執事。皐こそが本物の裏切り者だった。住民を殺して罪をなすりつけた張本人。それを必死に訴えた。


でも、誰も信じなかった。


人間だからか、皐という執事が日頃から積み重ねた信頼からか。




結果、メアリーは処刑された。


方法は——溺死。


目隠し


拘束


海へ



メアリー「いや……いや……!」


息ができない。


暗い。


苦しい。


冷たい水へ落ちていく。


怖い。助けて。誰か…信じて。

結局、誰も、来なかった。


そこで人生は終わった…はずだった。

気づけば海辺に立っていた。崖の下の水面。そこに。腐った自分の死体。


メアリー「……ぁ……」


手を見ると透けている。足はもうない。触れた石がじわりと腐る。そして理解した。自分はもう生き物じゃない。


幽霊だ。そして、水が酷い弱点となりトラウマを抱いた。


絶望して動けなかった。


メアリー「もう嫌、嫌…なんで、館に貢献していたはずなのに……」


その時、声が聞こえた。


ヤグ「……人外の館が嫌になったんなら、狩やらねぇか?」


血まみれの男で怖かった。でももう何も残っていなかった。


だから頷いた。それがメアリーという狩の始まりだった。


フラッシュバックが終わる。

戦場。目の前にはルガ。


ルガ「……どうしたんです」


メアリーの笑顔が消えていた。代わりにほんの少しだけ震える唇。


メアリー「……消えればいい、ですか」


小さな声。


メアリー「昔も……言われましたねぇ……」


ルガ「……?」


メアリー「裏切り者は、消えろって」


空気が重くなる。メアリーの周囲に黒い霧が広がる。触れた瓦礫がじわじわ腐って崩れる。


メアリー「わたくし……何もしてなかったんですよ。ただ、働いてただけなのに……」


ルガの背中に寒気が走る。メアリーが初めて笑っていなかった。


メアリー「……あなたも、同じこと言うんですね」


ゆっくり顔を上げる。その瞳は静かに壊れていた。


メアリー「でも……」


ふわりと浮かび、霊気が膨れ上がる。


メアリー「消えるのは……どちらでしょう?」


次の瞬間、廊下全体が腐敗の霧に包まれた。

皐さん…お前マジでよぉ……

すみません自我が出てきました


次はまた一段と重くなるかもしれないです

ここでようやく折り返し…長くなるなぁ、


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