家族の選び方
食堂はもう原型を留めていなかった。テーブルは割れ、皿は砕け、壁には焦げ跡と腐食の穴。
甘い匂いと焦げ臭さと血の匂いが混ざっている。
ララメの足元でピンク色の電流がぱちぱちと弾けた。
ララメ「……つよ……っ、普通に強すぎない!?」
レイズが床を蹴った瞬間姿が消える。次の瞬間にはララメの背後。
レイズ「遅ぇ!」
ドンッと蹴り。ララメが壁に叩きつけられる。
ララメ「っ、ぐぁ……!」
肺の空気が抜ける。だが即座に笑う。
ララメ「でもっ……捕まえたぁ!!」
手を振るった瞬間雷が炸裂。至近距離の放電。バチィィッ!!
レイズ「ぐッ……!?」
全身が痺れ動きが鈍る。その隙にメアリーがふわりとレイズの腕に触れた。
メアリー「……腐ってくださいなのです!」
じわっと。触れた部分から皮膚が黒く変色し、崩れ始める。
レイズ「チッ……!」
即座に腕を振り払って距離を取る。腐食は浅いが確実に削られている。
レイズ「……触れたらアウトかよ。クソ能力だな」
メアリー「褒め言葉なのです♪」
にこっと笑う。無邪気すぎる笑顔。だがその顔は感情が薄い。
その横、ルガの掌が静かに光る。
ルガ「……兄さん、下がって」
レイズ「ルガ?」
ルガ「撃つから」
次の瞬間。キィィィィン…と一直線のレーザーが走った。壁を、床を、空気を焼き切りながらララメへ。
ララメ「うわやばっ!?」
咄嗟に横跳び。しかし肩を掠め、肉が焼ける。
ララメ「っ……あつ……」
焦げた匂い。痛みで歯を食いしばる。でもララメは笑った。
ララメ「……いいね、!楽しい」
レイズ「……は?」
ララメ「久しぶりだもん、こんな全力出せるの!」
両手を広げる。バチバチバチバチッ!!!部屋中に雷が走る。床を這い、壁を跳ね、逃げ場が消える。
レイズ「ルガ!」
レイズは反射的に弟を抱き寄せる。自分の背中を盾に。
ドゴォォォン!! 電撃直撃。
レイズ「がっ、あ"……!!」
ルガ「……兄さん離れて」
レイズ「離せるかよバカ……!」
焼け焦げながらも離れない。その姿をメアリーがじっと見つめる。
メアリー「……変なのです」
ララメ「ん?」
メアリー「なんで庇うのです?効率悪いのです」
ララメ「だよねー」
ルガが、低く言う。
ルガ「……家族だから」
ララメ「んぇ?」
レイズ「守んのに理由いるかよ」
迷いゼロの即答。その言葉にララメの動きが一瞬だけ止まる。家族という単語がこの場所に似合わなすぎて。
メアリー「……私たちには、ないのです」
静かすぎる声。笑顔なのに少しだけ寂しそうだった。でも次の瞬間にはいつもの調子。
メアリー「だから壊すのです♪」
手を伸ばす。
ララメ「全力いくよ、メアリーちゃん!」
メアリー「了解なのです!」
レイズ、ルガも構える。
レイズ「……ルガ、やれるな」
ルガ「当然」
4人の視線がぶつかる。任務として殺す覚悟と、家族を守る覚悟。どっちも本気。
次の瞬間には床が爆ぜ、雷が走り、レーザーが光って腐食が広がる。
食堂が戦場に変わった。
拳と雷がぶつかる。衝撃で床が砕け破片が跳ね上がる。レイズの拳がララメの腹にめり込み同時にララメの電撃がレイズの腕を焼く。
ララメ「っ、ぁはは……いった……!」
レイズ「……チッ……!」
互いにボロボロで息も荒い。血と焦げ跡まみれ。それでもどっちもまだ倒れない。レイズが乱暴に口の血を拭って
レイズ「……なんで笑ってんだよ」
ララメ「んー?」
レイズ「こんな殺し合いで楽しそうにすんな」
ララメ「だって楽しいもん♪」
レイズ「……ッ」
その軽さが癪に障る。レイズは踏み込んで殴る。ララメは雷で弾き返す。
本気と本気だからこそレイズの中に湧いたどうしても理解できない違和感。
レイズ「……テメェ」
ララメ「ん?」
レイズ「テメェの家族はどうしたんだよ!」
一瞬。雷とララメの動きが止まる。
レイズ「守るもんねぇのかよ!守りてぇ奴いねぇのかよ!」
ララメはきょとんとして。そしてにぱっと笑った。
ララメ「そんなの捨てたよ♪」
レイズ「……は?」
あまりにも軽い。冗談みたいに。
ララメ「過去、語ろっか?」
レイズ「……」
ララメは雷を指先でぱちぱち弾きながら、楽しそうに話し始めた。
ララメ「まずね!まずね!私はほんっとに素敵な家庭だったの!」
殴り合いながら。蹴りをかわしながら。まるで雑談みたいに。
ララメ「この世のどの家族よりも幸せな自信あるね!お父さんにお母さんにお姉ちゃんに妹!完璧でしょ!」
レイズ「……」
ララメ「ある日ね〜キャンプ行ったの!朝からテント立ててさ〜姉妹と鬼ごっこしてさ〜超楽しくて!」
拳と拳がぶつかる。電撃が走る。
ララメ「でもさ!迷っちゃったんだよね!」
レイズの頬を雷が掠める。ララメはくるりと後ろに跳ぶ。
ララメ「どんどん奥行って〜歩いて〜そしたらね!」
目がきらきらしてる。戦場なのに思い出話してる子供みたいに。
ララメ「おっっきな建物見つけたの!すご〜い!ってなってさ!」
レイズ「……」
ララメ「で!こっそり人の後ろついてったの!怒られたけど!」
レイズ「当たり前だろ……」
ララメ「でもね!そこに居ていいって言われて!霣羅って人と出会って!」
雷が爆ぜる。
ララメ「ここ人外狩る場所だって聞いてさ〜!私も働く!!って言ったの!」
レイズ「……は?」
ララメ「駄々こねて!任務行って!能力強くて!認められて!そこで暮らすことになった!」
レイズの動きが鈍る。理解が追いつかない。
レイズ「……それで……家族は?」
ララメは少しだけ首を傾げて。本当になんでもないみたいに言った。
ララメ「帰ってないよ?」
レイズ「……」
ララメ「だってさ」
一瞬。笑顔がほんの少しだけ影る。
でもすぐ戻る。
ララメ「こっちの方が楽しそうだったから♪」
静寂。その言葉はあまりにも軽くて。レイズの胸に重く落ちた。
レイズ「……ふざけんな」
低い声。
レイズ「必死で守ってる奴もいんだよ……失いたくなくて戦ってる奴もいんだよ……」
怒りで握った拳が震える。
レイズ「捨てた、だと……?」
ララメ「んー?」
レイズ「家族を選ばなかった奴が……楽しそうに戦ってんじゃねぇよ……!!」
床を蹴る。爆発みたいな踏み込み。
レイズ「俺はなぁ!!失うのが怖ぇから戦ってんだよ!!!」
拳が振り下ろされる。ララメの視界いっぱいにレイズの拳。
ララメ「……」
ほんの一瞬だけ。ララメの笑顔が揺れた。
ララメ「……そっか」
静かに。
ララメ「じゃあさ」
指先に雷が集まる。眩しい光。
ララメ「どっちが強いか、証明しよ?」
レイズ「……上等だ」
雷と拳が、覚悟と陽気が、正面衝突する。
今回は4人の戦闘(レイズ+ララメちゃん強め)でした
いやー、明るいのに簡単に切り捨てるララメちゃんがほんと狩な感じ、
次はメアリーちゃん(の過去)とルガです




