壊される前の日常
開いてくれてありがとうございます!
館護戦線のつづきです
光の届かない部屋だった。暗く時計も目立つような家具もない。
あるのは古びた机と、無機質なランプの白い光だけ。
その下で数人が同じ方向を向いていた。誰も喋らない。
ただ命令を待っている。
司令官「……対象座標、確認」
低い声が部屋の奥から響く。壁に映し出された地図。
赤い印が人里離れた森の奥にひとつ。
司令官「リーウェン邸」
ヤグ「……あ?」
椅子の背にもたれていた男がだるそうに顔を上げる。
足を机に乗せたまま銃をいじっている。目つきだけが妙に鋭い。
ヤグ「館ひとつ潰すだけでわざわざ俺ら全員呼び出し?」
メアリー「大きいおうちなのです?」
ヤグ「だとしても、6人はねェだろ。」
メアリー「旅行みたいでワクワクなのです!」
ララメ「えー!ひっさしぶりか初めての大人数!?」
霣羅「……遠足か」
ヤグ「いや違ぇだろ」
ただその場に、2人だけ足りなかった。
それでも司令官は淡々と続けた。
司令官「目標は“完全制圧”。生存者は不要。建物や関係者はすべて排除しろ」
ヤグ「つまりは?」
司令官「_殲滅しろ」
沈黙の中でヤグだけが銃を回してふっと笑った。
ヤグ「…はっwやっと狩っぽいじゃねェか。退屈してたんだよな。最近」
メアリー「いっぱい壊していいのですー?」
司令官「好きにしろ」
ララメ「わーい!」
誰一人そこに人が住んでいるという発想や、奪っては駄目な命だという自覚がない。
ただの標的であり、任務であり、消していい場所。
壁の地図に映る赤い点が指す館は暖かくて、朝ごはんの匂いがして。笑い声が響いて。「おかえり」がある大きな館。
その事実をこの部屋の誰も知らない。
……いや、知る必要が無い。
司令官「任務開始は三日後だ」
ヤグ「了解」
散歩にでも行くみたいな軽い声。
銃を回す手を止めて腰のホルスターに戻し部屋を出る。
館側は気づくはずがない。
自分達を消そうと迫る影が存在する事を。
その頃館では…
コトコトと包丁の音や、ぱたぱたと走る足音。
どこかで誰かが笑っているような、いつも通りの朝の続き。
館の中庭で
洗濯物が風に揺れていて、白いシーツの間を、ニアとアマネが追いかけっこしていた。
ニア「まてまてー!」
アマネ「こっちだよー!」
ニア「アマネちゃんはやいー!」
アマネ「えへへー!ニアちゃんもおいで!」
ニア「待て〜!…うぁっ!?」
突然転びそうになったニアの腕を、アマネがぱっと掴む。乱暴さは無く、守るように
アマネ「だいじょうぶ?」
ニア「……うん!」
ぎゅっと自然に手を繋ぎ、そのまままた走り出す。
もうそれだけで、平和が完成してるみたいな光景だった。
そして少し離れた場所でソラが洗濯カゴを抱えて、ふふ、と笑う。
ソラ「ほんと、仲良しだなぁ……」
そこへ、ひょこっと後ろから顔が出る。
シロクラ「なにニヤニヤしてんのソラちゃん!」
ソラ「ひゃっ!?」
びっくりして肩が跳ねる。振り向くと、いつもの悪ガキ笑顔…シロクラ
ソラ「し、シロクラさん!脅かさないでくださいよ……」
シロクラ「いや普通に声かけただけじゃん」
ソラ「き、急に近いんですってば……!」
一歩下がるけど逃げない。ただ恥ずかしいだけ
シロクラは洗濯物をひょいっと摘んで干しながら、
シロクラ「平和だなー今日も」
ソラ「……ですね」
少しだけ、目を細める。
ソラ「こういう日が、ずっと続けばいいのにって思います」
シロクラ「ん、なに急にw」
ソラ「いやただの独り言です!」
慌てるソラ。
耳がうっすら赤い。
シロクラ「顔赤くね?」
ソラ「赤くないです!」
シロクラ「赤いって」
ソラ「チガイマス…//」
必死。
シロクラはけらけら笑う。
シロクラ「ソラちゃんってほんと分かりやすいよなー」
ぽんっと軽く頭を叩く。いつものノリ。いつもの距離…のはず
ソラの心臓:ドクンドクンドクン!!!
ソラ「……っ〜!///」
顔、真っ赤。
シロクラ「だ、大丈夫?熱でもあんの?」
ソラ「ダイジョウブデス」
全然大丈夫じゃない。その様子を洗濯物の向こうからニアとアマネがこっそり見ていた。
ニア「ソラさん、ゆでだこー!」
アマネ「ねー!」
ニア「すきなのかな?」
アマネ「きっとそうだよ!」
ソラ「(二人とも聞こえてる!?)」
その頃。館主組
ハウルが野菜を切っている。ざくざくと少しいい音。
エイルが紅茶の入ったカップを持ってきた。
エイル「少し休んだら?」
ハウル「んー、あとちょっと」
そう言いつつ、素直に腰を下ろす。
エイルが隣に座る。
自然な距離。
長年連れ添った夫婦の、当たり前の並び。
ハウル「今日も賑やかだな」
エイル「ええ」
館の方から、子どもたちの笑い声。
エイル「…楽しそうね、ほんとに」
ハウル「いいだろ?静かな家より、騒がしい方が俺の性に合ってる」
エイル「ふふ……貴方らしいわ」
少しだけ、エイルの表情が柔らぐ。
ハウルはその横顔を見て
ハウル「…守りたいな」
エイル「え?」
ハウル「この家も、みんなも…お前も」
自分で言ったくせに、照れくさそうに視線を逸らす。エイルは一瞬きょとんとして、それから小さく笑った。
エイル「今さらね」
そっと、肩を寄せる。
エイル「私もよ」
穏やかな沈黙。風が吹いて木が揺れる。
ただそれだけ、それだけなのに…胸があたたかくなる時間だった。
誰も知らない。
この笑顔も、声も、場所も。
すぐそこまで壊そうとする足音が近づいていることを
…でも今はただ……
今日も館は幸せだった。
昼前。
ハウルの大きな声が館に響いた。
ハウル「角灯ー!シュアー!悪い!買い出し頼めるかー?」
のそのそと長い影が廊下を曲がる。
天井すれすれの巨体。その後ろからぴょこぴょこ小さな影。
角灯「……ああ」
シュア「いく!」
即答。やる気満々。そしてエイルが紙袋とメモを手渡す。
エイル「パン屋さんと八百屋さんね。無理しないで」
角灯「…任せてくれ」
シュア「まかせて!」
背丈差約1メートル以上なのに、並ぶとなぜかしっくりくる二人。
街に出て、角灯はゆっくり歩幅をシュアに合わせて歩く
シュアはてちてち小走り。でも時々ちらっと角灯を見る。ちゃんと隣にいるか確認するみたいに。
シュア「角灯、今日あったかいね!」
角灯「そうだな!日向ぼっこ日和だ」
シュア「シュア、光すき〜!」
角灯「お前は植物だからな」
シュア「うん!お日様浴びると、夜でも元気になれるの!」
にこにこ。
角灯のランタンがほんのり明るくなる。
八百屋につくと、店主のおじさんが角灯を見て固まる。
店主「うおっ!?!?」
角灯、しゅん⤵︎ ︎
角灯「…すまない……」
すぐ謝る。驚かれるのは慣れてはいるけど完全にしょんぼりモード
シュアがすぐ前に出て
シュア「大丈夫だよ!角灯やさしいから!」
店主「……あ、ああ、そうなのか?」
シュア「うん!世界でいちばん優しいんだから!」
角灯「シュア……」
ランタン→ぼわっ!
店主「はは、そっかそっか!買い物だろ?お詫びかねて、安くしとくよ!」
結果、秒で仲良くなる。
シュアはちょっとドヤ〜!として
シュア「ほら!」
角灯「……ありがとう」
パン屋。
焼きたての匂い。
シュア「!!」
ぴたっ。
角灯「…どうした」
シュア「いいにおいー!」
食べれはしないけれどとっても喜ぶ。完全に植物というより小動物。
角灯「…好きか?」
シュア「うん!」
角灯「…一つ、帰りに買いたいものができた」
シュア「?」
こそっとメモにないものを追加した。
角灯「…パンのキーホルダー…内緒な」
シュア「え、いいの!?」
角灯「勿論さ!」
秘密共有みたいで嬉しそう。帰り道、紙袋を抱えたシュアが少しふらつく。
角灯「…重いか?」
シュア「だいじょう…わっ!」
ぐらっとよろけるシュアを、角灯は無言でひょいっと全部持つ。シュア含め。
シュア「……」
少し考えて。ちょこんと角灯の服を握る。
角灯「シュア?」
シュア「角灯、あったかくて」
当たり前みたいに言う。
シュア「一緒に居たり、近くに居てくれると…うれしいの」
角灯のランタンぼわっ。(3回目)
多分今日いちばん明るい光。
角灯「……そう、だな」
ゆっくり、ゆっくり歩く。大きな影と小さな影。
まるで親子みたい。でもきっとそれ以上…
少しして、館が見えてきた。
遠くからシロクラの叫び声。
シロクラ「うわ"ぁああああ!!!だから爆発は事故なんですってー!!」
レイズ「事故で済むかぁああ!!」
シュア「にぎやかだねw」
角灯「…ああ。俺らも帰ろう」
シュア「うん!」
二人は並んで、館の扉を開けた。
ハウル「お、帰ったかー!」
エイル「お疲れさま。重かったでしょう」
角灯「…問題ない」
シュア「パンいっぱい!」
レイズ「マジ!?神!!」
食堂。
テーブルにパンが並ぶ。
丸パン、くるみパン、あんパン、甘いやつ。湯気と匂いがふわぁっと広がる。
ニア「にぁ〜!」
アマネ「すごー!これたべたい!」
ソラ「ちゃんと手洗ってからだよー!」
ニア「はーい!」
アマネ「いってくるー!」
ぱたぱたと走っていくちっちゃい組。シロクラはもう席についてる。
ソラ「シロクラさんもです」
シロクラ「えー」
ソラ「えー、じゃないです」
じー。
シロクラ「……はいはい洗ってきますよー」
ソラの圧に負ける。
「いただきます!」
みんなの声が重なる。
ニア「ん……!」
アマネ「美味し〜!」
もぐもぐと幸せな空間。
シュアは買ってもらったキーホルダーを大切そうに見つめている。
食べられないけど、角灯の隣で静かに座っている。
シュア「角灯、これすき」
角灯「そうか」
シュア「ねぇ、また行けるかな!」
角灯「当たり前さ」
それだけで十分みたいな顔。
ソラはこっそりシロクラの皿に甘いパンを置く。
ソラ「これ、好きでしたよね?」
シロクラ「え、まじ?覚えてたの?」
ソラ「……はい」
シロクラ「サンキュー!」
無邪気に笑う。そしてソラの頭に手ぽんっ
ソラ、顔赤。湯気。瀕死。
アマネ(ひそひそ)「また赤いね」
ニア「ねー」
観察隊。
ハウルがその光景を見て、満足げに頷く。
ハウル「……平和だなぁ」
エイル「ええ」
ほんとに、ただの幸せな午後。
ふと、ルガの姿がないことに気づいた。
レイズ「あれ?……ルガは?俺の愛しの弟は!?」
一瞬、静かになる。
ソラ「さっきまでいた気が……」
ハウル「部屋か?」
エイル「返事なかったわね、」
レイズ「……ちょっと探してくる」
シロクラ「俺も行きます」
少し長くなったかもしれません
既に完成してるのをまとめるのは難しいですね、




