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館護戦線  作者:
館護戦線
15/76

勝てないままで。

本格的に戦闘描写中心となります

黙ったままのハウルの胸の奥で何かがぎしっと軋む。


ハウル「なんでだよ……」


絞り出すような声。


ハウル「なんで、お前が……こんなこと……」


フォドル「館を狩る理由か?」


ゆっくり気だるそうにフォドルは立ち上がる。


フォドル「理由なんてない」


靴音と共に一歩近づく。


フォドル「気に入らんだけだ。お前らみたいな、幸せごっこが」


その言葉で、ハウルの中の何かがぷつっと切れた。


ハウル「……ごっこじゃねぇよ」


声が低くなり拳が震える。


ハウル「俺の家族は、あれは……!」


言い終わる前に視界がぶれた。フォドルの指がパチッと軽く鳴る。


その瞬間、正面から見えない衝撃が叩きつけられた。


ハウル「――ッ!?」


息が潰れる。


まるで巨大な岩を真正面からぶつけられたような重さだった。


肋骨が軋み、肺の空気が一瞬で抜ける。

体が宙に浮いた次の瞬間、背中から壁に激突した。


ハウル「……っ、ぁ……!」


息ができず喉が鳴るだけ。立とうとして足に力が入らず膝が崩れた。


自分の体重すら支えられない。床につく指が震える。たった一撃、それだけで立てない。


フォドルはゆっくり近づいてくる。まるで散歩でもしてるみたいな足取り。


フォドル「相変わらずだな、ハウル」


見下ろすように影が落ちる。


フォドル「弱いくせに、守ろうとする」


ハウル「……っ……」


フォドル「滑稽だ」


ハウルは歯を食いしばる。血の味が広がる。館のみんなの顔が浮かぶ。


ハウル「…ふざ、けんな……」


震える腕に力を込める。


ハウル「…弱いから、守るんだろ……」


フォドルの眉がほんのわずかに動く。ハウルはよろよろと立ち上がる。足が笑って視界が揺れる。それでも前を見る。


ハウル「兄でも…、司令官でも……」


血を吐きながら。それでも笑う。


ハウル「俺の家族に、手ぇ出すなら……ぶっ飛ばすぞ」


張り詰める空気の中、粉塵がまだ漂っている。砕けた壁の破片がぱらぱらと床に落ちる音だけがやけに大きい。


ハウルは片膝をついたまま荒い息を繰り返していた。肺がうまく動かない。胸が焼けるみたいに痛い。


それでも視線だけは落とさない。目の前の男から…フォドル・リーウェンから。


フォドル「まだ立つ気か」


感心でも嘲笑でもない。

ハウルは床に手をつき無理やり体を起こす。


情けないくらい体が震えている。でも館のみんなの顔が頭から離れない。


ハウル「……っざけんな……」


掠れた声。


ハウル「……あんな場所、壊させるかよ……」


ぐっと拳を握り能力を使う構え、今度こそ…

…その瞬間だった。フォドルの指が僅かに動いた時、視界が真横に吹き飛んだ。


ハウル「がっ……!?」


何が起きたかが分からない。見えない何かに横殴りにされた。


体が宙に浮いて床を転がる。骨が軋んで呼吸が途切れる。


ハウル「……っ、は……っ……」


起き上がる。立たなきゃ。もう一度…そう足に力を込めて立ち上がる。フォドルを見て踏み出した瞬間


――ドゴッ。今度は腹に来た。内臓が押し潰される感覚。胃液が逆流し、口から吐き出て そのまま床に叩きつけられる。


ハウル「……ぁ……」


声が出ないくらい痛いし息ができない。力が入らなくて立てない。


そんなハウルの元にフォドルはゆっくり歩いてくる。


フォドル「遅い」


淡々と。


フォドル「動作が大きい」


一歩。


フォドル「感情が出すぎてる」


また一歩。


フォドル「昔から、お前は戦いに向いていない」


腕が震えるがそれでも床を掴む。

立て…言い聞かせても血が垂れるだけ。


ハウル「……うるせぇよ……」


声が震えてる。悔しさで。怒りで。


ハウル「家族守るのに、向き不向きなんか関係あるか……」


フォドルの目がほんの少しだけ細くなる。


フォドル「……くだらん」


次の瞬間には天井から見えない重圧。

ハウルの体が床に叩き伏せられた。まるで巨大な手で押さえつけられたみたいに。


顔が床にめり込み、腕も足も…体のどこも動かない。全身が重い、重すぎる。


ハウル「……が……ぁ……」


今度は本当に立てない。力を入れても指先すら持ち上がらない。フォドルが近くに立ち、影が落ちる。


フォドル「理解したか?」


静かな声。


フォドル「お前は、俺に勝てない」


ハウル「……っ…ゲホッ……あ"…」


フォドル「昔も、今も」


淡々と事実を述べるだけ。それがいちばん残酷だった。


フォドル「兄には勝てないんだよ」


ハウルの歯がぎりっと鳴る。悔しくて、情けなくて……


守るって決意したくせに


館を出てここまで来たくせに


父親みたいな顔して


みんなを「家族だ」って言ったくせに。


肝心なところで負けて、床に伏せたまま立てない。


ハウル「……くそ……」


涙なのか血なのか分からないものが床に落ちる。フォドルはそれを一瞥して、興味を失ったみたいに視線を外した。


フォドル「失望した」


冷たい一言。


フォドル「少しはマシになったかと思ったが……結局、弱いままだ」


まるでもう敵ですらないみたいに背を向ける。ハウルの拳が床を叩くも体は動かない。


でも

それでも。


ハウル「……まだ…終わってねぇ……」


かすれた声がわずかに響く。フォドルはもう興味を失ったみたいに背を向けていた。コツコツと静かな足音。


目の前にいるのは敵のはずなのに。“戦う相手”ですらないみたいに扱う。ハウルの喉が震えて、声を出そうとしても

…出るのは荒い呼吸と、血の混じった胃液だけ


ふざけるな、それはないだろ。こっちは…全部守るために来たんだ。


ハウル「……待てよ……」


情けないくらい震えた声しか出ない。


それでも腕に力を込め、床に指を立てる。爪が割れて血が滲んでも無理やり体を起こす。


立て、立て…立て……!


ハウル「……まだ……終わって……ねぇ……!」


最後の力を振り絞る。拳を握り能力を込める。背中に向かって一歩踏み出す。


あと一発、一発入れば…時間が稼げれば館に戻れる。みんなを守れる。拳を振りかぶる。


ハウル「司令官_ッ!!」


その瞬間、フォドルの肩がほんのわずかに揺れた。


振り向きもしない。


ただ腕が横に流れる。ほこりを払うかのように。


……本当に虫をどかすみたいに


――ズドン。


ハウル「……え?」


腹。理解より先に衝撃。内側から全部潰されたみたいな重さ。肺の空気が一瞬で押し出される。声も出ない。時間が止まる。


ハウル「……っ……ぁ……」


膝が崩れ足の感覚が消える。


視界がぐらりと揺れた


フォドルはまた背を向けたまま、一度もハウルを見ていない。


それが何より残酷だった。


フォドル「邪魔だ」


それだけ。ほんとうにそれだけだった。


ドサッとハウルの体が床に落ちる。冷たい床、頬に伝う何か。


血か、汗か、涙か。


音も視界も遠くなる。もう分からない。


周りの音が遠くなる中で、自分の心臓の音だけやけにうるさい。


ドク、ドク、ドク。


…まずい、意識が…沈む……


だめだ、ここで倒れたら…館が、エイルが、レイズが…ルガが。


…みんな、守りてぇなって言ったのに。


ハウル「……っ……」


指が床を掴もうとして動かない。


力が入らないまま視界が暗くなる。視界の端から黒が滲んで蝕んでくる。


フォドルの足音が遠ざかる。


コツ、コツ、コツ……


止めなきゃ。行かせちゃだめだ…でも体が、動か………


視界が完全に暗転した。音も痛みもない。体の感覚すらもう分からない。


ただ深い水の底に沈んでいくみたいに。


ハウル・リーウェンの意識はそこで途切れた。


動かないまま、呼吸だけがかすかに続いている。


フォドルは足を止める。静寂が包む薄暗い部屋。


床に倒れ伏す弟へとゆっくり振り返る。

昔と変わらない大嫌いな顔、昔と同じ甘ったるい目。


守るだの家族だの。くだらない理想ばかり抱えていたあの頃のままだ。フォドルは無表情のまま近づく。


ガシッと乱暴にハウルの髪を掴み上げる。ぐったりと首が揺れる。完全に意識も抵抗もない。


フォドル「……使うか」


それだけ呟いて、暗い部屋に何かが起動するような微かな音が鳴った。


今回は兄弟の圧倒的格差回でしたね

文字数より空気がやばくなりました。

この兄弟関係、割と色々修正してます


「勝てない弟」の話、ですね

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