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フェルルと魔法少女たちの日々  作者: れんP


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第四話 守るための力、繋がる願い

これは、“魔法少女”の物語。



世界は一度、大きな戦いを越えた。

人々は平穏を取り戻し、日常は何事もなかったかのように続いている。


 


けれど、その裏側で。


 


世界には、誰にも知られない“ほころび”が生まれていた。


 


それは、いつから存在していたのかもわからない。

気づいたときには、そこにあった。


 


“エラー”——


 


そう呼ばれるそれは、形を持たず、理由もなく、人を襲う。

まるで世界そのものが、壊れ始めているかのように。


 


そして、その脅威に対抗できるのは——


 


異界から来た存在、“フェルル”と契約した少女たちだけ。


 


力を手にした少女たちは、“魔法少女”として戦う。


 


誰かを守るために。

日常を守るために。


 


あるいは——


 


自分自身のために。


まだ、誰も知らない。


これは、逃げることしかできなかった一人の少女が、

世界の“バグ”に向き合う物語。

夜の空気は、張り詰めていた。


 


歪んだ影——エラーは、なおも蠢いている。

先ほどの一撃で確かに削られたはずなのに、完全には消えていない。


 


むしろ、怒りのようにその形を膨らませていた。


 


「……下がって、ましろ」


 


低く、鋭い声。


 


月城(つきしろ)カナメが一歩前に出る。


 


その背中は、見慣れた姉のものなのに——

今はまるで別人のように見えた。


 


「お姉ちゃん……」


 


ましろは思わず呼びかける。


 


だがカナメは振り返らない。


 


ただ、目の前の敵だけを見据えていた。


 


 


エラーが動く。


 


黒いノイズの塊が、一気に膨張し、

空間を歪ませながらカナメへと襲いかかる。


 


 


「——遅い」


 


 


その一言と同時に、カナメの手が動いた。


 


 


ひらり、と。


 


 


指先から放たれたのは、一枚の御札。


 


 


白い紙片が、空中で光を帯びる。


 


 


「——封じる」


 


 


瞬間、御札が複数に分裂した。


 


 


宙を舞うそれらが、円を描くように広がり——


 


 


「結界、展開」


 


 


空間が、閉じる。


 


 


透明な壁のようなものが、エラーを囲い込んだ。


 


 


「……っ!?」


 


ましろが息を呑む。


 


目に見えないはずの“何か”が、確かにそこにある。


 


エラーは暴れる。


 


歪み、膨らみ、結界を破ろうとする。


 


だが——


 


びくともしない。


 


 


「そんなもの、通さない」


 


 


カナメの声は、静かだった。


 


だが、その中には揺るぎない確信がある。


 


 


再び、御札が舞う。


 


 


「——浄化」


 


 


結界の内側で、光が炸裂した。


 


 


白い閃光がエラーを包み込み、

その存在を内側から削り取っていく。


 


 


ノイズが、崩れる。


 


歪みが、消えていく。


 


 


やがて——


 


 


エラーは、完全に消滅した。


 


 


 


静寂。


 


 


何もなかったかのように、夜が戻る。


 


 


「……すごい……」


 


ましろの口から、思わず言葉がこぼれた。


 


さっきまで苦戦していた自分とは、まるで違う。


 


圧倒的な力の差。


 


 


カナメはゆっくりと振り返る。


 


 


その視線が、ましろを捉える。


 


 


「……ましろ」


 


 


その声は、いつもの姉のものだった。


 


 


「どうして、ここにいるの」


 


 


問いかけ。


 


 


ましろは、少しだけ戸惑いながら答える。


 


 


「……わ、私……魔法少女に、なって……」


 


 


カナメの瞳が、わずかに揺れる。


 


 


「……やっぱり」


 


 


小さく、呟く。


 


 


「チョーカーを見たとき、そうじゃないかって思ってた」


 


 


「お姉ちゃん……も……?」


 


 


その問いに、カナメは静かにうなずいた。


 


 


「うん。私も魔法少女」


 


 


はっきりとした言葉。


 


 


「結構前から、ね」


 


 


ましろの中で、何かが繋がる。


 


 


(お姉ちゃんが……ずっと……)


 


 


そのとき。


 


 


「……なるほどね」


 


 


フェルルが、ぽつりと呟いた。


 


 


その視線は、カナメへと向けられている。


 


 


「君の願いの意味が、わかったよ」


 


 


「……え?」


 


 


ましろが首をかしげる。


 


 


カナメは一瞬だけ目を閉じ、

そして、静かに口を開いた。


 


 


「私の願いは——」


 


 


一呼吸。


 


 


「妹を守る力が欲しい、だった」


 


 


 


その言葉は、まっすぐだった。


 


 


偽りのない、本心。


 


 


「ましろは昔から、こういうのに巻き込まれやすいから」


 


 


少しだけ、苦笑する。


 


 


「だから、せめて私だけでも守れるようにって」


 


 


ましろの胸が、ぎゅっと締めつけられる。


 


 


「お姉ちゃん……」


 


 


何も知らなかった。


 


 


知らないところで、ずっと守られていた。


 


 


 


「でも……」


 


 


ましろは、小さく拳を握る。


 


 


「私も……戦います」


 


 


その声は、震えていたけれど——


 


確かに、意志があった。


 


 


カナメは、その顔をじっと見つめる。


 


 


少しの沈黙。


 


 


そして——


 


 


「……そっか」


 


 


短く、そう言った。


 


 


否定はしなかった。


 


 


 


「なら、一人で戦うよりいい」


 


 


カナメが、ふっと表情を緩める。


 


 


「ねぇ、ましろ」


 


 


「はい……?」


 


 


「私、“ルミナスガーディアンズ”っていうチームに所属してるの」


 


 


「チーム……?」


 


 


「魔法少女の集まり。エラーを対処するための」


 


 


ましろは目を見開く。


 


 


(そんなのが……あるんだ……)


 


 


「よかったら、一緒に来ない?」


 


 


その言葉は、優しかった。


 


 


でも同時に、新しい世界への入り口でもあった。


 


 


ましろは、少しだけ考える。


 


 


怖さは、ある。


 


でも——


 


 


(逃げるだけじゃ、ダメだから)


 


 


顔を上げる。


 


 


「……行きます」


 


 


その答えに、カナメは小さくうなずいた。


 


 


「決まりだね」


 


 


フェルルも、どこか嬉しそうに笑う。


 


 


こうして——


 


 


月城ましろは、


 


さらに深く、“魔法少女の世界”へと踏み込むことになった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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