63 北の国で 7
・・・・・ズィルバー
俺は目の前の小山のようなカイサルピングウインをじっくり観察した。奴もこっちをじっくり見て観察しているようだぜ。魔物くせえ・・・こいつは魔獣だ。間違いねえ。
後ろでロートが詠唱をしている。結界がさらに強固になるのが感じられる。
向こうが先か・・・こっちからか・・・
俺とカイサルピングウインは動かない。
突然カイサルピングウインが嘴を開けた・・・と・・すげえ風と・・雪・吹雪?いや・・突き刺すような氷・・うわっぷ・・
俺は,遠慮なく得意の爆裂風をぶっ放す。一発二発・・・・
ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ・・・
騒がしいなカイサルピングウイン。
突然奴は後ろを向いた。なんだ?逃げる気か? しっぽ?がピコピコ滑稽に揺れる・・・笑わせて闘う気をなくさせる戦法か?
ぶおん・・
は?・・・・・凄い発射音と一緒に尻から黄色いとがった氷がこっちに向かって飛んできた。
ぐっ。当たりたくねえ!!! これにだけは!!!
俺は飛び上がって避けた。後ろで
「きゃ~!!!」
「うわっ」
「ヤダヨ~」
って聞こえるけど・・・仕方ねえよな。
続けて奴は二発目、三発目を発射する。だが,見えてねえな。ちょっとずつずれてるぜ。本当にこれが魔獣のすることなのか?まあいい。やりやすそうだ。
と思った俺は甘かった。
俺の爆裂風は,奴のうえを滑るんだ。
・・・奴は腹で雪の上を滑ってきた。後ろは滑らないはずなのに・・・なぜだ?
「ズィルバー,あいつは腹の方からは冷気が。背中からは炎が感じられるぞ。今までにない複合型みたいだ。」
「は。何だって?」
こいつ・・・最強ってのはそこか・・・どうすれば・・・とりあえず,腹の方が弱いはず。それにしても背中を向けられていてはなあ。
よし。
俺は素早く走り出した。奴の前に回るためだ。うまく向きを変えさせたい。そうしないと,ロートの結界に向かって攻撃することになってしまうからな。
俺の動きを知ったのか奴は俺の方に顔を向けた。嘴をぐわっと開ける。
氷・・つららだ。鋭くとがったものが何本も俺に向かってくる。やばい。と思ったとたん,氷がジュッと音を立てて消えた。
「ご・・ごめんにゃさい。」
ミャアコか!!
「邪魔するな!!」
怒鳴るけど内心はありがとうだぜ。
氷が溶けてもうもうと湯気が出る。みえん・・・やつはどこだ?
ぐちゃっ
・・・・・ヴァイス・・・おまえもか・・・
りゅうになったヴァイスがカイサルピングウインの上にいた。
あーあ。まただ・・・
カイサルピングウインの羽毛は高額で売れる。俺とロートは,ミャアコとヴァイスに始末させることにした。
俺のぶっ放した爆裂風が岩に当たって岩の間からお湯が出ていることにロートが気づいたためだ。怪我の功名って奴だな。
俺とロートは温泉にかかりっきりになるからな。
カイサルピングウインの始末はミャアコとヴァイスに。平等な仕事の分け方だな。
なに?
平等じゃないって?
「おい。羽毛を綺麗にして乾かして,袋に詰めとけよ。血抜きもして,肉と皮と骨と内臓も綺麗に分けておくんだぞ。」
ミャアコとヴァイスはしょっぱい顔をしていたな。しらん。人の戦いに勝手に入ってくるからだぞ。もう少し綺麗に仕留めたかったのにな。
え?
「ズィルバーがやったら,真っ黒こげになってたかもしれないから,羽毛が綺麗に採れそうでうれしいよ。ミャアコちゃんとヴァイス。後始末も頼むね。」
ロート・・・・
岩の下はちょっとした洞窟みたいになっていたぜ。
俺の爆裂風の星ではなさそうだ。
「ここで昔辺銀たちが過ごしていたのかもしれないね。」
・・・
俺はやけくそで爆裂風を使って温泉を掘り出したぜ。
おおっ
綺麗なエメラルドグリーンのお湯だぜ。初めて見るなあ。白く濁ったのとか,赤茶けてるのは透明のと同じくらい見たけどよ。この色はなあ。すげえ。
ロートもにこにこだ。
「硫黄の臭いがちょっときついですね。でも,こんなに綺麗なお湯が出るなんて。皆さん大喜びでしょうね。」
ここは直線でまちから大体1日くらいの距離だ。このくらいならいいだろう。もう少し離れたところかもしれないと思っていたからな。
掘り出した温泉にまず浸かろう。それから夕飯にして,明日またきちんと施設を作ろうとことになったのは,冬の早い日暮れが,昼飯抜きを忘れて働いていた俺たちに訪れた頃だった。




