24 次の温泉は 6
何かに飛びつかれて倒れたあたしは,飛びついてきたものを反射的に抱きとめる。
しっぽがぶわっと膨らんだ。
・・っ温かい。やわらかい。うわっ顔をなめてる。にゃに???
ようやく眩んでいた目もはっきりしてきた。
あたしが抱きとめているのは,3歳くらいの,多分・・・小獣だった。
だ・・・だれぇ???
「ミャアコチャン。ボク,ヴァイス。」
「「は?」」
蜥蜴型獣人とハモっちゃったよ。
3歳くらいの裸の小獣。
髪の毛が白くてつんつん立ってる。あぁこれ,確かにヴァイスの髪の毛だ。
しっぽは?あった。でも,ヴァイスのしっぽには見えにゃい。
ヴァイスのしっぽは,こう・・・おしりから繋がってるって感じのう~ん。蜥蜴のしっぽみたいな付き方だったのに。今は,つるんと毛がない細長いしっぽだ。不思議。
まじまじ見ちゃう。
そうしたら, 蜥蜴型獣人が,
「私のしっぽに似ているね。ふうん。ドラッヘは人の形になると,しっぽは蜥蜴型になるのか。これはすごい発見だ。
いや,むしろ, 蜥蜴型獣人はドラッヘの子孫なのかもしれないではないか!!!」
すっごく興奮している。
むしろ, 蜥蜴型獣人のしっぽの情報にゃんか,いらにゃいんですけど。
「獣人型ニシテクレテ アリガトウ」
ヴァイス,なんて礼儀正しいの。えらいぞ。
「元の姿には戻れるのかね?」
蜥蜴型獣人がさらに興奮して聞いている。
うるさいにゃあ。でもヴァイスは律儀に
「ハイ」
って応えている。
「戻ってみてくれんかね。」
「イイデスヨ」
ぽんっ
音と一緒に光が出た。
今度の光はあんまり眩しくにゃい。
いつものヴァイスだぁ。
ほっとして抱きつく。
ヴァイス,すっごくうれしそう。玉は残念だったけど,ヴァイスのうれしそうな様子が見られたからいいか・・・
う・・・玉・・・あたしの・・・虹色の・・・玉・・・しっぽがたれちゃう。
「まだ魔法の勉強を始めて2日目だっていうのに,ミャアコちゃんはすごいな。」
蜥蜴型獣人がしみじみ言った。
「話が出来るようになるはずだったのが,姿まで獣人型に変えてしまうとは・・・」
あの玉は,ヴァイスとお話が出来るように食べさせたんだ。
それが獣人型ににゃるとは。へぇ。
その後,3人でまたいろいろ勉強をしたよ。
時々,先生に言われたとおりの言葉を言って魔法を発動させてみるけど,なかなか先生の思っているとおりには,なっていないらしく,いろいろ言われてしまう。
ヴァイスは何も言わずに氷を出したり,吹雪ってものを出したり,水を降らせたり出来るよ。
いい加減疲れてきた頃,やっと 蜥蜴型獣人が今日はおしまいにしようと言ってくれた。
ヴァイスはまた小獣の姿ににゃって,一緒にまちに向かっている。
裸足だし・・・ちょっと歩きづらそうだけど,どうやってるのかにゃあ・・・時々浮いてるよ。
蜥蜴型獣人は,ロートとズィルバーにこのことを伝えたり,他の人たちにもいろいろ伝えたりするために,一緒に宿屋へ歩いている。
因みに,ヴァイスはあたしのシャツを着ているよ。
よい子は,ちゃんといつも着替えを持って行動しています。えへん。
なんちゃって,ロートに,どうせ濡れるからって持ってけって言われただけにゃんだけどね。
靴は,あとでロートに買ってもらおうね。
夕焼けが今日もきれいだよ。
そういえば,も一つ不思議だと思ったことがあるんだにゃあ。
にゃんで魚型獣人のまちに,蜥蜴型獣人がいるのかにゃ。旅行者というわけでもにゃさそうだし。
宿屋に行くと,ちょうどロートとズィルバーも帰ってきていた。
ヴァイスを見て2人ともびっくり。
宿屋の奥さんも旦那さんも,もうびっくり。
・・・
蜥蜴型獣人とロートとズィルバーの3人で宿屋の食堂でぼそぼそ何か話しているから,退屈しちゃう。
「部屋に行っていい?」
って聞いてから,あたしとヴァイスだけが部屋に戻ったよ。
部屋では,二人でベッドの上にジャンプして大はしゃぎ。すてきな時間を過ごしたよ。あとでズィルバーにめちゃめちゃ怒られたけどさ。楽しいもんねぇ。
その後のご飯も楽しかったよ。
にゃぜか 蜥蜴型獣人も一緒にご飯を食べて,お酒も飲んでいたよ。
今夜は,ズィルバーにようやく言えたよ。
「お酒は20歳ににゃってから」
って。
ズィルバーも,この前飲んだとき,お酒はあんまり美味しくにゃいもんだって分かったらしく,おとなしくあたし達と一緒に,ホーニヒ入りの甘くて冷たいお茶を飲んでいたよ。
お茶を飲んでるズィルバーの,ふさふさの銀色のしっぽが,うれしそうに揺れていたよ。あぁ捕まえたい。ズィルバーのしっぽ。あたしのしっぽの次に大好き。あ。ごめんねヴァイス。ヴァイスのしっぽもかわいいよ。毛がないけど・・・
次の朝,朝ご飯を食べていると,議会の人たちがやってきた。
ヴァイスに会うことが目的らしい。
でも,ヴァイスはまだ生まれて2ヶ月くらいしかたってにゃいので,にゃにを聞かれても応えられにゃい。当たり前だよねぇ。
生まれたとこはあの温泉の中だし・・・誰がどこから持ってきたかも分かんにゃいし。親がそばにいたかどうかも分からにゃいし・・・
ともあれ,温泉探しは今日も続くそうだ。あたし達は,いつ頃から一緒に行くことににゃるのかな。
「まだ2日だろ。もう少しだな。」
読んでくださっている方,ありがとうございます。
ゆるゆるとお話は続きます。