番外編 それぞれの旅路
王都からの帰り道、四人はのんびりと街道を歩いていた。
「なあ、バルト、リディア。これから、二人はどうするんだ?」
シオンの問いに、バルトは伸びをしながら答えた。
「んー、しばらくは、また自由に旅でもしようかと思ってる」
「私は、ちょっとだけ、どこかに定住するのも憧れるかなあ」
リディアがふわりと呟くと、バルトが横で笑った。
「言ってること違うじゃねえか」
「だって、まだ決めてないんだもん」
顔を見合わせて笑う二人に、ミアもつられて笑ってしまう。
「とりあえず、村までは一緒に行くよ」
バルトの言葉に、シオンとミアは顔を見合わせて頷いた。
*
村に着いてから、二人はしばらく滞在した。
パン屋の手伝いをしたり、村の子どもたちに剣や魔法の話をせがまれたり。にぎやかな数日を過ごしたあと、二人はまた、風のように旅立っていった。
「また来るからな!」
「今度は、お土産持ってくるわね」
見送るミアとシオンに、二人は大きく手を振って、街道の向こうへ消えていった。
*
それから数年、バルトとリディアは、思い出したように村へ顔を出した。
ミアとシオンの間に赤ん坊が生まれたと知らせを送ったときには、二人揃って飛んできた。
「うわあ、かわいい……! 見て、バルト、この小さい手!」
リディアが赤ん坊を覗き込んで、目を輝かせる。
「ほんとだ、ちっちゃいな」
バルトも、柄にもなく優しい顔で、赤ん坊の頬をつついた。
そんな二人の左手に、ミアはふと目を留めた。
「――あれ? 二人とも、指輪してる?」
「ん? ああ、うん」
バルトが、少し照れくさそうに頭をかいた。
「実は、去年、結婚したんだ」
「そうだったのか」
シオンは驚いたように、けれど嬉しそうに目を細めた。
「ごめんないうの遅くなって、なんか照れくさくてさ」
苦笑するバルトの隣で、リディアがそっとお腹に手を添えた。
「それに……実は、旅は少しお休みしてるの」
「え?」
「妊娠したのよ、私」
ミアが驚いて目を丸くすると、リディアは幸せそうに微笑んだ。
*
それから、バルトとリディアは、しばらく村に留まることになった。
空き家になっていた古い小屋を借り、少しずつ手を入れて住み始める。
「なあリディア、いっそこの村に住んじゃおうか」
「あら、いいわね、それ」
冗談まじりに交わされたはずの言葉は、いつの間にか、本当に現実になっていった。
「まさか、二人がこの村に居着くとはね」
ミアが笑いながら言うと、バルトも肩をすくめる。
「俺も驚いてるよ。……でも、悪くないもんだな。誰かが待っててくれる場所があるのって」
その言葉に、ミアとシオンは、思わず顔を見合わせた。
十年間、待つことと、待たれることの意味を、誰よりも噛みしめてきた二人にとって、その一言は、何よりも深く響いた。
村の一角に、新しい家族が根を下ろす。
パン屋の隣に、小さな魔法道具店ができたのは、それから間もなくのことだった。




