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現代にダンジョンが出来たので好色に生きようと思います  作者: 木虎海人
第二章 普通の冒険者

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 勝ち続けろ


 柔和な顔のまま向けられる視線が、妙に鋭かった。

雨木はその圧を受けながら考える。


 (……そんなこと言われたってな。

あの日は酒も入っていたし、少し弱気になっていただけだ。

別に、どうしてもやりたいって話でもねぇし)


 実際にやるとなれば、葬るのは見知らぬ冒険者たちだ。

先達としての敬意はある。だが、所詮は他人でもある。


 自分の葬式をする時が来たとしても、

その時の自分には、何も考えられないだろう。


――とはいえ、それをこの場でそのまま口にする気にもなれなかった。


 もし美濃原だけだったら。

軽口に乗せて伝えていたかもしれない。


 だがこの場には鷹見も鷲倉もいる。

気になる女性の前ではどうも格好付けたい、と考えるのが雨木楓真という男だ。


「改めて聞くと、スケールが大きすぎました。

話した時はまさか深淵十二紋が出て来るなんて。

そこまで深く考えていなかったもので、軽々しく提案してすみませんでした」


 改めて謝罪の言葉を口にし、卯月にも頭を下げる。


 この話はこれで終わり。

 雨木はそう思った。


 ――だが、卯月は終わらせなかった。


「まったく、勝手に終わりにするんじゃないよ。

聞いてた通りか。肝が太いねぇ、あんた。

初対面でマムシの美濃原に食って掛かった、というだけはある」


 卯月の言葉に、取り繕っていた雨木の表情が崩れた。

今となっては恥ずかしい過去が掘り起こされ、顔が顰まる。


「……それってもしかして、今後ずっとネタにされます?

割と、自分の中では黒歴史なんですけど」


「ふふふっ、やっと少し素が出て来たか。

でも、それは難しいかもね。


あの通り、極悪人の顔をしているだろう?

ヤクザも真っ青だ。

大概の奴は小さくなっちまう。


そんなことをする奴は、馬鹿か、もしくは……って、皆期待してしまうのさ」


「……馬鹿のほうですよ。きっと」


「それはこっちが判断する事さ。

だが…… あたしも、少しだけ期待しておくことにしようかね」


 なんとなく、真面目に対応していた自分が馬鹿らしくなって、雨木はつい軽く答えた。

 それに、意外な言葉が返って来る。

 その事に少し驚いて、つい美濃原を見た。


「……ここに来た卯月の目的は、お前の品定めだ。

こいつは葬式を、一緒に出来る冒険者を探している」


「別に深淵十二紋に拘る必要はないからね。

冒険者と、あたしら特殊空間管理省が共同で開催できればいい。

ありていに言えば、誰か冒険者が主催し、あたしらはそれに手を貸せばいいのさ。


……どうだい? やってみたいと思うかい?」


「いえ、全く。無理ですね。

人が集められないんですよ、俺じゃ。人望がないもんでね」


 雨木の返答に、会議室の空気が静まり返った。


 美濃原と卯月が、値踏みするような目で雨木を見ている。

その後ろに立つ鷲倉たちも、雨木の返答に驚いたように目を向けていた。

――鷹見だけを除いて。


 鷹見だけは、いつもと変わらない表情のままだ。

その姿を、雨木は視界の端で捉えていた。


「……ふふふ、即答かい。

本当に肝が太い。狼山にも気に入られただけのことはある」


 沈黙を破ったのは、卯月の小さな笑い声だった。


「……それも初耳なんですけど」


 知らないところでは、そんな話も進んでいたらしい。

卯月の言葉に、雨木は再び顔を顰めた。


 そこに、美濃原が小さく肩を竦める。


「別に聞かれなかったからな。


だが気にするな。今日のところは顔を見せに来ただけだ。

卯月も本気で、新人冒険者のお前にそんなことをさせる気はない」


 その言葉に、雨木はわずかに眉を上げた。

 なら何故、こんな場まで用意したのか。


 そんな疑問を抱く雨木に、卯月が柔らかく笑う。


「そういうこと。

やろうとするなら、長い話になる。だから早いとこ一度、顔を見ておこうと思ってね。


――もっとも、このあとの取引で。

あんたが槍のスキルカードを手に入れられたら、の話だ」


 柔和な口調とは裏腹に、その視線は鋭かった。

 品定め。美濃原の言葉が、ようやく腑に落ちる。


「誰に目を掛けられようと、芽の出ない冒険者に構っているほど、あたしは暇じゃない。

それは狼山もだろうさ。いいかい?

アマギ、勝ち続けな。日本はダンジョン後進国だと言われている。

あたしはそれが我慢ならない。それは美濃原も、他の最高幹部も同じだ」


 卯月の言葉を引き継ぐように、美濃原が口を開いた。


「……だから俺たちは、蹴落とし合うのでなく、競い合えている。

四天王などと、くだらん名前で呼ばれているがな。

根本的に深淵十二紋とは違う。

その為なら、協力し合えるのが特殊空間管理省という組織だ」


 美濃原の言葉に、雨木は思わず目を瞬かせた。


 元会社員の雨木には、すぐには信じられない話だった。

 内部での出世争い。

 派閥同士の足の引っ張り合い。

 そういうものこそが、組織の中で一番生々しく、醜い現実だと身をもって知っているからだ。


 それは雨木だけではない。

 後ろに控える随伴員たちも、美濃原の言葉には少なからず驚いているようだった。


(とは言っても、まるっきり嘘って感じでもないんだよな。

今日のこともそうだし、柔道場に狼山の岩ゴリラが現れたこともそうだ。

四天王同士に、交流があるのは確かっぽいし……


まぁ……考えても無駄か。

こういうときは、素直に聞くに限る)


「すいませんけど、何が言いたいのか。

いや、何をさせたいのかが分かんないです。

そろそろ遠回しなのは止めて、直球で放って欲しいですけど」


 その雨木の言葉に、再び静寂が訪れる。


 二人の最高幹部が目を細め、その空気に周囲が息を飲む。


 静寂を破ったのは、美濃原の「フッ」という小さな笑い声だった。


「何、大した提案じゃない。

どうだ? 会社を作らないか?」



※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを補助的に利用しています。


しばらくは週末(土日0時)更新を目標に進めていきます。

難しい週もあるかと思いますが、引き続きよろしくお願いいたします。

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