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現代にダンジョンが出来たので好色に生きようと思います  作者: 木虎海人
第二章 普通の冒険者

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 水精霊メリア


 下水道ダンジョンへ入った翌日。


 午前中をスポーツジムで過ごした雨木は、一度帰宅し、次の予定へ向けて準備を進めていた。


 当初の予定では、今日も別のダンジョンへ入るつもりだった。

だが槍術レベル2カード、その取引相手との面会予定が入ったことでキャンセルしている。


 理由は、面会場所にダンジョンを指定されたからだ。


 特にダンジョン省は、連続して別のダンジョンへ入ることを制限している訳ではない。

だが、雨木は自分の判断でそうすることにした。


「……なんか、試されそうな予感がすんだよな。

……まぁ、別に違ったならそれでいいし。

警戒するに越したことはない」


 同じ冒険者だ。

だからといって、ダンジョンで顔を合わせる必要は特にない。


 だが相手は、顔合わせの場としてダンジョンを指定してきた。


 ならば、何か理由があると考えておくべきだろう。

雨木はそう判断していた。


「そんな訳で、もう少ししたら出掛ける。

悪いが、ついて来てもらうぞ?」


 そう雨木は声を掛けた。


 雨木の借りている部屋で、まるで寛ぐように自由気ままに振る舞う、二体の精霊へ。


 一体目は、緑色の蝶の姿をした風の微小精霊リフェリア。


 雨木が帰宅すると勝手に具現化し、部屋の中を好き勝手に飛び回っている。

そして毎日違う花を要求してくる始末だが、そんな生活にも雨木はすっかり慣れていた。


 そして、まだ慣れないのがもう一体。


 昨日、下水道ダンジョンで出会った青色のきらめき。

結局、五階層ボス部屋のポータルから先へは進めず、モンスターカードとなってついてきた。


 そしてこちらもリフェリアを真似るように、部屋の中で勝手に具現化している。


 その正体は、水の微小精霊。


 現在は、薄く青色の混じったアメーバ状のスライムの姿を取っていた。


 雨木はスライムと呼ぶのを嫌い、〝メリア〟と名付けている。


「リフェリア、で、メリア。

ちょっと姉妹っぽい感じだろ?


リフェリアとメリア。

名前の響きも近いし。


で、俺はアマギ、だ。

三人、仲良くやろうぜ」


 その言葉をどこまで理解したのかは分からない。


 だが、おそらくメリアは受け入れてくれた。

そして今は、テーブルの上を陣取るようにして、ゼリーやグミを食べている。


(……どう見ても、共喰いにしか見えねぇけどな。


まぁ……言わないけど。

気に入ったなら、それでいいし)


 実際には食べるというより、身体の一部を広げるようにして、ゼリーやグミを体内へ取り込んでいるようにしか、雨木には見えなかった。


 とはいえ、それでも相手は精霊だ。


 意思があり、会話が出来て、何より共に戦ってくれる存在でもある。


 自分の邪魔をしない限り、なるべく尊重して付き合おう。

雨木はそう考えていた。


 というのも、既に昨晩、一度やらかしている。


 下水道ダンジョン帰りの日課の焼肉で、虫型の魔物たちに精神を削られたこともあってか、雨木はすっかり悪酔いして帰宅していた。


 その時、リフェリアの花と同じように、自分にも何か用意して欲しいと訴えてきたメリアへ。


「リフェリアの花を挿してある花瓶の水じゃ駄目なん?」


 などと答えてしまい、二体の反感を買った。


 メリアからは顔へ盛大に花瓶の水をぶっ掛けられ。

リフェリアからは、後頭部へ輪ゴムでも弾くような威力の風魔法を、ペシペシと撃ち込まれた。


 慌ててスーパーへ走り、スライムが気に入りそうな品を探して買い集め、献上した。


 その中のグミやゼリーを気に入ったことで、どうにか許されたという経緯がある。


(ふふっ、まるでヒステリックな彼女の機嫌を取ってるみたいじゃねーか)


 自分のことながら、少し笑えてしまう。

雨木はそう思った。


 だがそれでも、性欲の対象としてしか女性を見ない男よりは、今の自分の方が遥かにマシだろう、とも思う。


 そしてそれは、もしかしたら昨日のダンジョンで、前に勤めていた会社のことを思い出したからかもしれない。


 そう考えると、雨木はまた少し笑えてしまった。


 退職して、まだそこまで時間が経った訳ではない。

だが雨木の中では、もう過去のことになりつつある。


 そのことに気付いたから、だろう。


「くくくっ、笑える。


別にそんな、センチメンタルになるタイプでもないと……自分じゃ思ってたんだけどな」


 そう呟き、雨木は腰掛けていた椅子から立ち上がる。


 身支度を整え、荷物を担いだ。


 指定されたダンジョンは、東京都を挟んだ向こう側にある。


 高速を使えば、そう時間は掛からない。

だが、何があるかは分からない。


 余裕を持って移動したい雨木は、少し早めに家を出るつもりでいた。


 そんな雨木の呟きを拾ったのか、リフェリアが近くへ寄ってくる。


(なーに?)


 そう言いたげに、雨木の周囲を舞うように旋回した。


「別に大したことじゃねーよ。


ちょっと昔の自分と。

そん時に大嫌いだった社長のバカ息子が、こっち見てた。……だけさ」


 そう言って玄関へ向かう雨木の後を、二体の精霊が当たり前のようについて来る。

いつの間にか、独りで部屋にいる方が少し不自然に感じるようになっていることに、雨木は気づいた。


※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを補助的に利用しています。


しばらくは週末(土日0時)更新を目標に進めていきます。

難しい週もあるかと思いますが、引き続きよろしくお願いいたします。


なお補足となりますが、冒険者はスキルカードを所持していても、ダンジョンの外では基本的にスキルを使用出来ません。


精霊に関しては、まぁ……。

もしかしたら具現化している場合のみ、多少は例外があるのかも知れません。


……ということで、今はひとまずお願いします。


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