満たされない者
ちょっと短めです。
場末のラブホテルから、男女が出てきたところだった。
そこで女が振り返る。
「ここでいい。じゃーね」
「あ、うん」
そう言って小走りで駆けていく女。
ティナを見送り、カナタはため息をついた。
時刻は午後九時。
冒険者ネーム・カナタは、繁華街の片隅に一人で取り残される。
(くそっ、これじゃ風俗と大して変わんねーじゃんかよ)
二人の関係は、週に一度。
カナタとしては、もっと長く、恋人らしく過ごしたいと思っている。
映画を見たり、遊園地に行ったり。
そして夜通し、愛し合うような時間を。
だがティナは、どこかへ出かけることを嫌がる。
近場で少し高めの食事をして、
そのまま適当なラブホテルに入る。
休憩時間だけを共に過ごし、終わればそこで解散。
それでいいと、ティナは言う。
カナタにとっては、まったく良くない話だった。
だが、それを口に出すことができない。
最初は、こんな関係ではなかった。
甘く、距離も近く、
ティナの方から積極的に尽くしてくれていた。
骨抜きにされた自覚はある。
だからこそ、またあの頃のように愛されたい。
今も、そう思っている。
他の女に目が行く。だが結局、ティナにも未練が残る。
だから、踏み出せない。
踏み出せない理由は分かっている。
関係が壊れたきっかけが、カナタの言葉だったからだ。
最初は、お泊まりが当たり前の関係だった。
だがある日、ことが済んだあとで、カナタは熱を帯びて語った。
自分たちのチームを、もっと上へ押し上げるために。
そのための方法を。
フォーメーションや立ち回り。
いずれは人数を増やし、深淵十二紋に名を連ねるようなグループへ――と。
「えー、会うたび三回も四回もしたがるのにー?
ティナやシアに、いまより頑張れって言うん?
カナタ酷くないー?
身体持たないんだけどー?」
「……」
ティナは、それを笑って流した。
それ以降――ティナは、あっさりとした関係を求めるようになり。
カナタは、そこから踏み出せなくなった。
カナタは高校卒業後、今に至るまでずっとフリーターだった。
もらえないと分かっている年金。
報われないブラック企業。
中身のない仕事。
安い給料で、それが上がる見込みもない。
底辺高校出身の自分では、どこに就職しても搾取されるだけだと思っていた。
稼げば稼ぐほど税金は上がり、上前ははねられる。
真面目に働いたところで、何かが積み上がる気がしない。
だったら、縛られない方がまだマシだ。
そう思って、フリーターを続けてきた。
国も社会も会社も、何かしてくれるわけじゃない。
期待したところで、裏切られるだけだと知っている。
だから最初から、何も望まず、楽しく過ごそうとしていた。
だが、それで良かったのは二十代前半までだ。
自分よりも若いフリーターや、学生バイトが増えるたびに、居場所は削られていく。
気づけば、自分だけがその場に取り残されている感覚。
結局、少し前まで引越し屋で働いていた。
それで食えていたのも、実家に寄生できていたからに過ぎないと分かっている。
どうにかしたい、そう思って冒険者になった。
なのに、また足踏み状態。
どうにかしなきゃいけないとは思う。
だが、どうにもできないでいた。
そんなもどかしさに苛立ち、家に帰る気にもなれず。
結局カナタは、パチンコ屋の灯りに吸い込まれていく。
※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを補助的に利用しています。




