カナタ①
冒険者ネーム・カナタは、コボルトダンジョンのサークル臨時に参加していた。
八階層でレッサーコボルトの正面に立ち、攻撃を防ぐ。
そこを相方のティナ、そしてその友人のシアが続けて攻撃した。
だがその隙に、三人組の冒険者がなだれ込む。
レッサーコボルトを仕留めてしまった。
ティナとシアに甘い声で礼を言われ、悪い気はしない。
だがニヤニヤしながら横殴り組の三人が離れていく。
その後ろ姿を見ると、胸がざわついた。
(くそっ、いつもいつも横殴りしやがって)
三人組はそのまま、もう一人のチームメイト、スパリナが相手にしていたレッサーコボルトへと向かう。
カナタは何もできないまま、それを見送った。
これもまた、いつも通りだ。
(あー、むかつく。
レッサーコボルトなんか、やろうと思えばどうとでもなるのによ)
(チッ……けど、下手に前出ると、またティナがうるせぇしな)
そんな時はどうしても、前を行く先行組の姿をカナタは目で追ってしまう。
前線で、仲間と連携して戦う姿が素直に羨ましかった。
そうは思うが、先行組にカナタが入る隙間はない。
カナタにはティナという相方がいる。
彼女を放ってはおけない。
なら一緒に、先行組に入れてもらえばいい。
だがそれは絶対にできないことだ。
カナタは先行組の一角を担うチームの一人と、過去に殴り合いをしている。
それもカナタから手を出した。
殴ったことに後悔はない。
今もあの日のことを許していない。
だがそれ故に、自分と先行組の間には明確な線が引かれている。
前を行く先行組は、このサークル臨時の主力だ。
カナタはその後詰めにもなれない三番手以下のグループの、
その隅で今はただの壁役だ。
そこから抜け出せないでいることに焦っていた。
抜け出す手段は思いついた。
ティナが教えてくれた。
もう一人増やせばいい。
そうすれば自分は、魔物相手の壁役をしなくて済む。
魔物を押し付けても心が痛まない知り合いがいる。
アマギ。
同い年ということで、話しかけてやっていたあいつ。
体格がよく、魔物と向き合う根性だけはある奴だ。
最初は使える奴だと思った。
だがぶっきらぼうで、付き合いが悪いヤツでもあった。
煙草も吸わず、ギャンブルもしないという。
ノリも悪く、話してもなんの面白みもない男。
同じ冒険者でなければ、深く付き合わないだろうなとカナタは思っていた。
だから自分に流れが来たとき、すぐにどうでも良くなった。
すっかり忘れて、気にもかけなかった。
それがここに来て尾を引いている。
誘っても、誘っても、ろくな返事が来ない。
「おいっ! ジロジロ見てんじゃねーよ。なんか文句でもあんのかっ!」
先行組の一人が後ろを振り返り、見ていたカナタと目が合った。
その瞬間に文句をつけられた。
言われた言葉にカチンときて、咄嗟に怒鳴り返そうとする。
だがすぐに、傍にいたティナとシアに引っ張られた。
先行組と揉めても、彼女たちには何の得もない。
笑って誤魔化して、またおこぼれを拾う流れに戻ろうとする。
他の押し付け組の連中も同じだ。
先行組と、その後ろには大きな格差がある。
「ちっ、別に見てねーよ」
そう強がるのが、今のカナタの精一杯だ。
(くそっくそっ、くそがっ! 一対一なら、ぜってぇ負けねぇのにっ!)
怒鳴ってきた先行組の男は、カナタの後にこのサークル臨時へ来るようになった新人冒険者だ。
単独で来たそいつは、押し付け組の恰好の餌食だった。
ティナにそそのかされ、カナタが初めて魔物を押し付けた相手でもある。
カナタはそいつに魔物を押し付ければ、自分が壁役から抜け出せると思った。
そう自然に思うくらい、もうどっぷり漬かっている。
カナタは自分でそのことに気づいていない。
その新人冒険者は、押し付けられても、押し付けられても折れなかった。
文句も言った。
喧嘩腰で対応し、押し付け組と衝突した。
文句を言った新人を、押し付け組は集団で袋叩きにした。
・・・・・・カナタのときと同じように。
あの時と違うのは、カナタもそれに参加したこと。
ティナに促され、押し付けもして、一方的に殴って蹴った。
そいつはそれからしばらく来なかった。
だがそのうち、また顔を出すようになった。
押し付けられても、押し付けられても変わらない。
ストイックに戦い続けていた。
他のグループの女冒険者が甘い言葉をかけていたのも知っている。
だがそいつは相手にしなかった。
カナタはそんな場面を何度も見て、馬鹿だなと思っていた。
強い冒険者には、自然と女が寄って来るものだ。
それを相手にもしないなんて、据え膳も食えない情けない奴だと。
そんなサークル臨時が何度か続く。
カナタが最初に参加したサークル臨時で殴った男。
あいつがそいつを、自分のチームに誘うまで。
その日、立場が一瞬で入れ替わった。
カナタと、その新人の。
※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを利用して調整しています。




