コダマ
「ふーん、あんたらも精霊なのか。リフェリアと同じ」
「そうなのメ。タネたちはコダマと呼ばれる種の精霊なのメ」
雨木の前に出てきた種人間――改めコダマは、自分がこの群れのリーダーだと名乗った。
他の個体は言葉を話せないが、リーダーである彼だけは人語を扱えるらしい。
(うーん、精霊には見えねぇけどな……。
どう考えても色合いと形が悪い……。俺の手札には要らないな……)
内心でそんな失礼なことを考えつつも、顔には出さないように雨木は努めた。
そして倒木をどうにかしたいという彼らに、手伝いを申し出る。
もちろん、この木を倒したのが自分であることには触れない。
コダマたちは喜び、歓迎する。
雨木も作業に加わり、皆で倒木を動かそうとした。
だが――動かない。
「あー、枝葉が邪魔になってるんじゃね?
あれなら俺が、細い枝を落とそうか?」
ちょうどいいことに、最近装備に手斧を加えていた。
それを使えば、枝くらいは問題なく落とせるだろう。
広がった枝葉が減れば、多少は動かしやすくなるはずだ。
実のところ、その斧で幹すら抉り取れる。
だがそこは黙ったまま、コダマのリーダーに提案してみる。
「それは悪手なのメ。タネたちが持てなくなるメ」
コダマたちは人型で、手も足も生えている。
ならば枝を落として幹だけにし、それを転がせばいい。
雨木はそう考えた。
だが、雨木の膝ほどしかないコダマたちにとっては違う。
丸太状になった倒木が、自分たちに向かって転がってくる。
その状況の方が、よほど怖いらしい。
倒木の幹は直径一メートルほど。
雨木にとっては大した脅威ではない。
実際、倒れてはいるが他の冒険者でも乗り越えて進める程度の大きさだ。
しかしコダマにとっては違う。
自分の倍ほどの太さの木が転がってくる。
それは命に関わる危険だ。
大きさが違えば、見え方も変わる。
雨木はそこでようやく、その当たり前に気づいた。
「なるほど、それはすまんね。
だが、それだと俺に出来ることが無いな。
でもこれだけ木の生えている場所だし、過去にも倒木くらいあっただろ?
そんときはどうしてたんだ?」
「……」
コダマリーダーは答えない。
少し微妙な顔をした――ように、雨木には見えた。
「おっと、立ち入ったことを聞いちゃったか?
ならすまない。忘れてくれ。変に詮索するつもりはないんだ」
雨木のそばには、風精霊のリフェリアがいる。
微精霊という表記だったが、精霊であることに変わりはない。
自分の半身、とまではまだいかないが、頼りになる存在だと思っている。
冒険者になり、ダンジョンに入るようになってから。
一番実りのある出会いだった。
そんなリフェリアと同じ精霊のコダマを、雨木は害する気にはならなかった。
仮に精霊でなくても、言葉が通じて敵対しないなら、彼らの邪魔をするつもりもない。
放っておいた方が良いなら、そうしようと思っていた。
しかし――
「旅人よ。見ず知らずのタネたちに手伝いを申し出てくれた親切な其方には、聞いて欲しいのメ。出来れば手伝いをお願いしたいのメ」
「……そう? 聞いてもいいのか? なら、聞かせてもらうが。
そして手伝うと申し出た以上、出来ることならするよ」
なんだかマッチポンプみたいで嫌だったが、そもそもの原因は自分にあった。
頼られたなら、拒否する理由など雨木にはない。
……ただし、あくまでも出来ることならば、だが。
「旅人よ、教えよう。タネたちにはゴーレムがあったのメ」
「ゴーレム?」
「そう、ゴーレム。
旅人よりも大きく、強く、頑丈なタネたちの乗り物なのメ」
雨木は身長が百八十五センチある。それよりもゴーレムは大きいという。
それに植物の種のようなコダマが乗る、というならおそらくウッドゴーレムだなと雨木は当たりを付けた。
そんなものが複数あるなら、この倒木も動かせるかもしれない。
ならもっと早く言えよ、と雨木は思ってそこで、引っかかる。
「ん? あれ? あった、って言った?
今は無いってこと?」
「あるにはあるのメ。ただ、少し前から動かなくなったメ……」
「……あー、なるほど。
ある。けど、動かない。
なら故障か、燃料切れか?」
「それが分からないメ。
だがタネたちに伝わる言葉があるメ。
ゴーレムが止まる時、祠を巡るのメ。
でも、タネたちはここから動けないメ。
だから訪れる親切な旅人に頼む、という言葉なのメ」
「……随分と他力本願で都合の良い、言い伝えだことで」
雨木はそう言いながらも、断る気にはならなかった。
※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを利用して調整しています。
すいません。現在少し立て込んでいるため、しばらくは週末更新で書き貯めていきます。
というつもりだったんですが、来週はあまり時間が取れないだろう予定が立て込んでいる為、更新は出来ないと思います。
次の更新は再来週以降になってしまうと思いますが、引き続きよろしくお願いします。




