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現代にダンジョンが出来たので好色に生きようと思います  作者: 木虎海人


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 倒木の向こうで


 盛大に背中を打ち付けた雨木は、しばらく悶えたあと、

何事もなかったかのように立ち上がった。


「……魔法は思いつきでやるもんじゃないな」


ドヤ顔で提案したウインドブーツ。

だが実際は、温めていた案でも何でもない。

話している最中に、ふと思いついただけの代物だ。


勢いで試し、結果は見事な自爆。

せっかく練習した受け身も、まともに取れない始末だ。


「ふむ……」


リフェリアと自分だけの空間に、微妙な空気が漂う。


どう話題を変えるかと考えた、その時。


土と木の匂いが、ふと鼻を掠めた。


 この感覚は知っていた。

リフェリアを手に入れてから覚えたものだ。


嗅覚強化のスキルカードが使()()()()感覚だ。


本来なら五感強化系スキルカードは、

スキルスロットに挿して使えば、割れるように頭が痛む。

そんな代物だ。

だがリフェリアを介せば、雨木に負担はない。


今、それが使われた。


ということは、何かがある。あった。

人間(雨木)には分からないくらいの距離の、どこかで何かが。

それが、このタイミングだ。

ということは、


「……木が倒れてた場所か?」


自分が倒した、とは言わない。

この階層に、木が倒れている場所がある。あくまでも、それだけの話だ。


肩に戻ったリフェリアが、小さく揺れ、『yes』と肯定する。


雨木は小さく息を吐いた。


「ふー……それは、見に行くべき、なんだよな?」


周囲を警戒しながら、折れた道を慎重に戻る。


次の角を曲がれば倒木が見える。

その手前で、ざわつく音が耳に届いた。


その音は、湿り気を帯びて聞こえた。

低く、断続的な軋み。

葉が揺れるような、ざわつき。

小さな振動が幾重にも重なって、小さく響く。


(喧騒……? いや、声じゃない。何かが集まって動いてる音だな)


だが雨木の聴覚は素のままだ。

スキルカードで強化されている訳ではない。

届くのは微かな音だけ。

何をしているのかまでは、分からない。

慎重に顔を出す。


倒木の周囲に、黒と茶色の小さな塊がうごめいていた。

雨木の膝ほどの大きさのそれらが、集団で群がっている。


「う……いや、名前を言うのも嫌だな。

あれだ、何かの排泄物。それが動いてるみたいでグロい……」


一瞬、そう思う。

しかし、すぐに違うと気づいた。


丸く、少し尖り、芽のような突起。

植物の種を擬人化したような存在だった。


それらが、倒木の枝にしがみついていた。


均等に群がっているのではない。

枝の側に集まって、引っ張っている。

引っ張ろうとしている。


どうやらあの倒木を動かしたいらしい。

道を作ろうとしているように、雨木には見えた。


「いや……無理だろ」


ざっと三十、いや四十体ほどはいる。

だが幹は直径一メートル近い巨木だ。

その太さは、そのまま上へ伸びる高さと枝ぶりの大きさを物語っている。


まさか抉り取れるとは思っていなかった。

倒れるところまで想像していなかった。

そんな木を、的に選んだのだ。


その事実を責めるように、リフェリアが目の前を行き来する。

胸の奥が、少しだけ重くなる。


「あれ、ダンジョンの修復能力ってやつか?

……だとしたら、ちょっと足りてないよな?」


問いかける。

だが、リフェリアは答えない。


もしこれが修復の一環なら、相当な時間がかかるだろう。

あるいはこのまま、修復されない可能性もある。


それはそれで、問題かも知れない。


倒木と、小さな種の群れを見つめながら、雨木は小さく息を吐いた。


「……手伝った方がいいよな?

とはいえ、いきなり人間が出てきたら驚くか。

逃げるならまだしも、襲ってこられても困る」


魔物なら倒す。

だが相手がダンジョンを直そうとしている存在なら、そこまではしたくなかった。


そう思う気持ちの方が、今回は勝った。


「リフェリア、(あいだ)を取り持てないか?

出来たらでいい」


仮に嫌でも、一緒には来てもらう。

だが、それは口にしない。


頼られたのが嬉しいのか、緑色の蝶はふわりと揺れた。


『しょうがないな』


とでも言いたげに、緑色の蝶は機嫌よく舞った。


雨木は小さく息を整え、角から姿を現した。

警戒させぬよう、わざと足音を立ててゆっくりと近づく。


それに気づいた種人間たちは、すぐさま警戒態勢を取った。


(あ、逃げられるな)


あと一歩でも踏み出せば、蜘蛛の子を散らすように霧散するだろう。

雨木はそう判断し、足を止めた。


『任せて』


その瞬間、リフェリアの意思が脳内に響く。


緑色の蝶は、ゆっくりと前へ飛んでいく。


それに呼応するように、種人間の群れがざわめいた。

やがて一体が、そっと前に出てくる。


リフェリアはその周囲を円を描くように舞う。


短い時間だったが、何かが交わされたのは分かった。


やがてリフェリアは、その一体を伴って雨木の前へ戻ってきた。


種人間は、じっと雨木を見上げる。


その瞳は、思っていたよりも澄んで見えた。


そして――口が開いた。


※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを利用して調整しています。

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